178 / 202
11
11-13
しおりを挟む
翌日、10月1日
会社のデスクに着き、始業時間を迎えた。
それからすぐに全ての銀行口座の通帳を準備し、羽鳥さんに伝える。
「月初の記帳回りに行ってきます。」
「うん、お願いね。
1人で回るには銀行も多いよね。」
羽鳥さんがそう言って、他の新卒の同期に声を掛けてくれようと口を開いたのを見て、私は先に声を出した。
「全然大丈夫ですから!!」
思ったよりも大きな声になっていて自分でも驚いていると、羽鳥さんは面白そうな顔で私の方を向いてきた。
「福富さんは元気な子だからね。」
「佐伯さんって、どこか悪いんですか?」
「うん、社長からはそう聞いてる。
具合が悪そうな時は迷わず救急車を呼ぶようにって。
社長の幼馴染みの知り合いの娘さんらしいんだよね。」
「めっちゃ遠い知り合いじゃないですか。」
「そう聞くとそうなんだけど、社長の幼馴染みの家族くらいの子らしくて。
入社してからずっと元気に福富さんと喧嘩してるからそんなに気にしてなかったけど・・・」
羽鳥さんが少しだけ悩んだ顔になり、でもすぐに私のことを見て小声になった。
「松戸先生が病院に連れていってくれたみたいだけど、あの2人って個人的な知り合いじゃないからね?
松戸先生って佐伯さんのお母さんの顧問もやってるらしくて、それ繋がりなだけだからね?
私がこんなフォローをするのも変だけど、福富さんも松戸先生のこと好きなんだよね?
佐伯さんとの話がチラッと聞こえてくる限りだと。」
私が先生に聞けなかった話を羽鳥さんが教えてくれ、更にはそんなことまで言ってきた。
それには小さく笑いながら答える。
「私が好きな人は違う人です。
あんな気取った人じゃない人です。」
そう答えながら、出社していない佐伯さんのデスクを眺める。
「彼女なんていないような、付き合ったこともなさそうな、そんな人が好きなんですよね。」
昨日の夜、先生は私の実家に来ることはなかった。
今日の朝も来ることはなかった。
先生は“行けない”というメッセージを送ってきたけれど、それに何て返していいのか分からなかった。
今この瞬間にも佐伯さんと一緒にいるのかなとか、2人して私のことをバカにしているのかなとか、2人して“何か”をしているのかなとか、そんなことばかり考えてしまい昨日は一睡も出来なかった。
「銀行回り行ってきます!!」
そんな考えを振り切るように歩き出した。
“朝人”を待ち続けようと決めた時から虚しくて無謀な恋になることは分かっていたから。
ちゃんと、覚悟はしていたから。
でも・・・
「よりによって、同じワンピースとか・・・!!」
エレベーターの中で1人になってから叫んだ。
私ではなく佐伯さんを選んだのだと、そう思わずにはいられないような展開だったから。
会社のデスクに着き、始業時間を迎えた。
それからすぐに全ての銀行口座の通帳を準備し、羽鳥さんに伝える。
「月初の記帳回りに行ってきます。」
「うん、お願いね。
1人で回るには銀行も多いよね。」
羽鳥さんがそう言って、他の新卒の同期に声を掛けてくれようと口を開いたのを見て、私は先に声を出した。
「全然大丈夫ですから!!」
思ったよりも大きな声になっていて自分でも驚いていると、羽鳥さんは面白そうな顔で私の方を向いてきた。
「福富さんは元気な子だからね。」
「佐伯さんって、どこか悪いんですか?」
「うん、社長からはそう聞いてる。
具合が悪そうな時は迷わず救急車を呼ぶようにって。
社長の幼馴染みの知り合いの娘さんらしいんだよね。」
「めっちゃ遠い知り合いじゃないですか。」
「そう聞くとそうなんだけど、社長の幼馴染みの家族くらいの子らしくて。
入社してからずっと元気に福富さんと喧嘩してるからそんなに気にしてなかったけど・・・」
羽鳥さんが少しだけ悩んだ顔になり、でもすぐに私のことを見て小声になった。
「松戸先生が病院に連れていってくれたみたいだけど、あの2人って個人的な知り合いじゃないからね?
松戸先生って佐伯さんのお母さんの顧問もやってるらしくて、それ繋がりなだけだからね?
私がこんなフォローをするのも変だけど、福富さんも松戸先生のこと好きなんだよね?
佐伯さんとの話がチラッと聞こえてくる限りだと。」
私が先生に聞けなかった話を羽鳥さんが教えてくれ、更にはそんなことまで言ってきた。
それには小さく笑いながら答える。
「私が好きな人は違う人です。
あんな気取った人じゃない人です。」
そう答えながら、出社していない佐伯さんのデスクを眺める。
「彼女なんていないような、付き合ったこともなさそうな、そんな人が好きなんですよね。」
昨日の夜、先生は私の実家に来ることはなかった。
今日の朝も来ることはなかった。
先生は“行けない”というメッセージを送ってきたけれど、それに何て返していいのか分からなかった。
今この瞬間にも佐伯さんと一緒にいるのかなとか、2人して私のことをバカにしているのかなとか、2人して“何か”をしているのかなとか、そんなことばかり考えてしまい昨日は一睡も出来なかった。
「銀行回り行ってきます!!」
そんな考えを振り切るように歩き出した。
“朝人”を待ち続けようと決めた時から虚しくて無謀な恋になることは分かっていたから。
ちゃんと、覚悟はしていたから。
でも・・・
「よりによって、同じワンピースとか・・・!!」
エレベーターの中で1人になってから叫んだ。
私ではなく佐伯さんを選んだのだと、そう思わずにはいられないような展開だったから。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
なお、スピンオフもございます。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる