【完】秋の夜長に見る恋の夢

Bu-cha

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結月のお父さんから、相川薬品の現代表取締役からそう言われると・・・確かに普通ではないことに思えてくる。
相川薬品も古くからある会社。
それも、加賀製薬と同じように代々親族で受け継がれてきた会社。



「加賀もね、苦労してたよ、とんでもなく。」



結月のお父さんが心底楽しそうな顔をして笑っている。



「当時は時代ということもあって期限が25歳までで。
とんでもなく苦労してたよね、あれは。
今でも苦労してるんだろうけど、当時のあれには本当に面白くて。」



「面白い、ですか?」



「あれは面白いよね、あそこまでだと面白くて。」



結月のお父さんが笑いながら私の顔を見詰めてきた。



「加賀から聞いたけど、婚約者が決まったんだって?
誰とは教えてくれなかったし僕も聞かなかったけど。」



「はい・・・。」



「期限、30歳までなんだってね?
時代もあるだろうけど、それにしても30歳は面白いよね。」



「時代というより、父はそれくらい時間がないと無理な相手だと思ったのかもしれません・・・。」



「それもあるだろうけど、それだけでもないと思うけどね。
だって、あの加賀だし。」



私にはよく分からないお父さんを結月のお父さんは知っているのだとは思う。
お父さんの友達だし、武蔵のお父さんからも“相川”の話を聞いたことがあるくらいで。



「僕のツテでアルバイトが出来る所を見付けておくよ。」



結月のお父さんがそう言って、優しい笑顔で私に笑いかけてくれた。
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