【完】秋の夜長に見る恋の夢

Bu-cha

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あまりのショックで立ち止まってしまった・・・。
そんな私を武蔵は振り返ることなく、屋敷に向かって歩いていく・・・。



「じゃあ、何処で言えばいいの・・・?」



小さく小さく聞いた声に、武蔵は振り返ることはなかった・・・。



部屋にも入れてくれない・・・。
私の部屋にも入ることはない・・・。



朝もお母さんのご飯を食べたらすぐに会社に行ってしまうし、夜だって夜食を食べている間しか話せない。



夜食を食べたら食器を洗ってすぐに部屋に入ってしまって・・・。



何度か部屋に入って話したいと言ったのに毎回断られてしまって・・・。



あの屋敷の外では・・・



外では・・・



もしかしたら、ただの“小町”でいられるのかもと、そう思って・・・。



“加賀社長の一人娘”ではなく、ただの“小町”として・・・。



ただの“小町”として・・・



言ったのに・・・。



すぐそこにある大きな大きな屋敷から、チリン─...と悲しい音が響いた・・・。



悲しいだけの音が、響いた・・・。



伸ばそうとしていた右手は動くことはなかった。



武蔵に向けて伸ばそうとしていた右手は、動くことはなくて・・・。



あるのにないような右手だった・・・。



右手はないらしい・・・。



私に右手はなかったらしい・・・。



きっと、誕生日の日の夜、武蔵の部屋の扉を押さえた時になくなってしまっていた・・・。



あの時に、私の右手はなくなってしまった・・・。
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