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翌日、夜
今日も月が出ていない夜、昨日とは違う道を使い王宮の中に忍び込む。
鎧を身に纏い剣を腰に下げている人間は何人かいるけれど、死角になる所が多くあり、しかもそこから忍び込める場所が近くにある。
最初の頃は罠であることも覚悟をして中に入った。
でも、夜の闇に紛れれば見付かることはなかった。
今日も食べ物が沢山置いてある場所へと“鼠”のように駆けていく。
初めて王宮に忍び込んだのは7歳の頃。
そして食べ物が置いてある場所を見付けたのは1年後の8歳。
最初の頃はほんの少しだけ盗んでいたけれど、今では・・・
今日も大きな袋に大量の食べ物を入れていく。
いつからかこの台の上に置かれる食べ物の量が増えていった。
今では袋に入りきらない程の食べ物が積まれている。
いつか私が盗んでいることが見付かる日が来るのだと覚悟をしている。
でも、私を捕まえようとしてくる日はいつまで経っても訪れない。
だから今日も“鼠の地”のみんなを生かす為、王宮の中で食べ物を盗んでいく。
この台の上全てではないけれど、盗めるだけ盗んでいく。
“鼠の地”のみんなが私を生かしてくれたから、今度は私の番。
今度は私がみんなのことを生かす。
生きて、生き延びて、“鼠の地”の向こう側で生きて欲しいと思う。
そして、魔獣に怯え、たまに来る王宮の人間に怯え、1日1つの芋だけを食べ、“死者の国”へ行くことだけの為に生きるのではなく、今この瞬間を強く豊かに生きることを望んで欲しいと思う。
それが私の欲望。
私の“◯”の刻印。
クレアンがこの胸に刻んでくれた、私の“欲望”の刻印。
今日も大きな袋に大量の食べ物を詰め終わり、クレアンが刻んでくれた“◯”の刻印がある胸の真ん中を押さえた。
押さえた、その時・・・
カタ────────────.....
と、物音が聞こえた。
それには焦りながら腰に差していた剣棒を手に取った。
私はアントほどではないけれど、他のアンナよりはこれを使える。
あの鎧と剣には通用しないことは分かるけれど、私は“鼠の地”の中でも1番すばしっこく駆けることが出来る足もある。
そう思ってはいるけれど、寒い空気の中で全身から汗が吹き出てくる。
この胸から悲鳴が上がってくる。
その悲鳴を聞きながらも夜の闇の中で気配と音を探る。
私達は魔獣を駆除する“鼠”。
様々な大きさの“鼠”の魔獣を駆除している。
女は子どもや作物を守る為に行動する役割を担っているけれど、私は“鼠”の魔獣の駆除も出来るアンナでもある。
みんなから生かされたこの胸の鳴き声を絶やさないよう、私自身も精一杯生き延びようとしているから。
剣棒を構えたまま、ここから1番近い道から逃げようと少しずつ動き、盗もうとしていた大量の食べ物を入れた大きな袋は諦め地面にゆっくりと置いた。
そして逃げようとした瞬間・・・
「待て・・・っ」
低い声が飛び出てきて物陰から男が飛び出してきた。
それを把握しながら思い浮かべたのは、昨日私の胸の真ん中に刻まれた“◯”の刻印で・・・。
この“欲望”を叶えたいという強い強い思いで・・・。
“叶えたかった”という過去の言い方ではなく、“叶えたい”と・・・
“やっぱり叶えたい”という強い強い欲望で・・・。
私の胸の真ん中に“欲望”を刻んでくれたクレアンの姿が思い浮かんだ・・・。
強く強く、思い浮かんだ・・・。
《クレアン・・・。》
.
今日も月が出ていない夜、昨日とは違う道を使い王宮の中に忍び込む。
鎧を身に纏い剣を腰に下げている人間は何人かいるけれど、死角になる所が多くあり、しかもそこから忍び込める場所が近くにある。
最初の頃は罠であることも覚悟をして中に入った。
でも、夜の闇に紛れれば見付かることはなかった。
今日も食べ物が沢山置いてある場所へと“鼠”のように駆けていく。
初めて王宮に忍び込んだのは7歳の頃。
そして食べ物が置いてある場所を見付けたのは1年後の8歳。
最初の頃はほんの少しだけ盗んでいたけれど、今では・・・
今日も大きな袋に大量の食べ物を入れていく。
いつからかこの台の上に置かれる食べ物の量が増えていった。
今では袋に入りきらない程の食べ物が積まれている。
いつか私が盗んでいることが見付かる日が来るのだと覚悟をしている。
でも、私を捕まえようとしてくる日はいつまで経っても訪れない。
だから今日も“鼠の地”のみんなを生かす為、王宮の中で食べ物を盗んでいく。
この台の上全てではないけれど、盗めるだけ盗んでいく。
“鼠の地”のみんなが私を生かしてくれたから、今度は私の番。
今度は私がみんなのことを生かす。
生きて、生き延びて、“鼠の地”の向こう側で生きて欲しいと思う。
そして、魔獣に怯え、たまに来る王宮の人間に怯え、1日1つの芋だけを食べ、“死者の国”へ行くことだけの為に生きるのではなく、今この瞬間を強く豊かに生きることを望んで欲しいと思う。
それが私の欲望。
私の“◯”の刻印。
クレアンがこの胸に刻んでくれた、私の“欲望”の刻印。
今日も大きな袋に大量の食べ物を詰め終わり、クレアンが刻んでくれた“◯”の刻印がある胸の真ん中を押さえた。
押さえた、その時・・・
カタ────────────.....
と、物音が聞こえた。
それには焦りながら腰に差していた剣棒を手に取った。
私はアントほどではないけれど、他のアンナよりはこれを使える。
あの鎧と剣には通用しないことは分かるけれど、私は“鼠の地”の中でも1番すばしっこく駆けることが出来る足もある。
そう思ってはいるけれど、寒い空気の中で全身から汗が吹き出てくる。
この胸から悲鳴が上がってくる。
その悲鳴を聞きながらも夜の闇の中で気配と音を探る。
私達は魔獣を駆除する“鼠”。
様々な大きさの“鼠”の魔獣を駆除している。
女は子どもや作物を守る為に行動する役割を担っているけれど、私は“鼠”の魔獣の駆除も出来るアンナでもある。
みんなから生かされたこの胸の鳴き声を絶やさないよう、私自身も精一杯生き延びようとしているから。
剣棒を構えたまま、ここから1番近い道から逃げようと少しずつ動き、盗もうとしていた大量の食べ物を入れた大きな袋は諦め地面にゆっくりと置いた。
そして逃げようとした瞬間・・・
「待て・・・っ」
低い声が飛び出てきて物陰から男が飛び出してきた。
それを把握しながら思い浮かべたのは、昨日私の胸の真ん中に刻まれた“◯”の刻印で・・・。
この“欲望”を叶えたいという強い強い思いで・・・。
“叶えたかった”という過去の言い方ではなく、“叶えたい”と・・・
“やっぱり叶えたい”という強い強い欲望で・・・。
私の胸の真ん中に“欲望”を刻んでくれたクレアンの姿が思い浮かんだ・・・。
強く強く、思い浮かんだ・・・。
《クレアン・・・。》
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