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物陰から出てきた男は太めの身体を持つ大きな男。
でも、鎧も剣も持たない姿で両手を自分の胸の前に広げ、私に止まるよう訴えている動作のようにも見える。
私は勿論それを無視し、この場から逃げようと駆け出した。
そしたら・・・
「食べ物・・・っ食べ物、これ、持っていけ・・・!!」
私の背中にそんな言葉を掛けてきた。
それには驚き振り返ると、男は焦った顔で私が置いた袋を指差している。
「言葉は分かるか?
俺はお前を捕まえたりはしない。
月明かりがない晩、俺はお前の為にこの食べ物を準備しているくらいだからな。」
「食べ物を・・・私の為に・・・?」
「やっぱり喋れるのか・・・!!
奴隷を管理している“鼠番”の奴らは、“鼠の地”にいる奴隷は喋ることも出来ないと言っている。
だからこの国ではそれが通説になっているが、俺は信じなかった・・・!!
俺の息子は少しだけだけど喋れるようになった時期が引き渡し期限だったし、それに他の奴らも・・・!!」
「大昔、王宮から来る人間達に1人につき芋を2つにして欲しいとみんなで願ったら鞭打ちになり、多くのアントもアンナも死んだ。
それからは王宮の人間には何も喋ってはいけないことになった。」
物凄く驚いた顔をしながらも首を縦に何度も振っている男に続ける。
「この国は数年前から、平民だけではなく貴族や王族も紺色の髪の子どもしか生まれなくなったからね。
だから子ども達はみんな奴隷として国に引き渡してる。」
「そんなことまで知っているのか・・・!?
王宮内で知ったのか!?」
「王宮に忍び込んでもそこまでの話は聞けなかった。
でも、数日前にある人間から教えて貰った。」
「そうか・・・。
俺の息子は知っているか?
年は今頃お前とそんなに変わらないくらいで・・・。
俺は貴族でも王族でもないただの料理番長だから、引き渡した息子を家に奴隷として引き戻すことは出来なかった。
王都管轄の“鼠の地”に送られたということだけは知らされたが・・・。」
男は言葉を切った後に苦しそうに口を開いた。
「奴隷となる子どもには名前を付けてはいけないことになっている。
だが俺と妻はオルセオと呼んでいて、息子も自分の名前をつたない口調ではあったが言えていた。
オルセオという名前に聞き覚えは?」
「私達に名前はない。
あるのは番号だけ。
それは王宮の人間がアンナ達に子どもを渡す時、番号を声に出し確認しているもの。
アンナ達がその番号を覚え、その子ども達に自分の番号を覚えさせている。」
私の番号は私の生みの親、死んでしまったアントの番号がアンナの方から付けられた。
大昔から、自分の番号だけは覚えているよう言い伝えられている教えだった。
私の言葉に男はまた何度も頷いた。
そして・・・
「芋1つしか食べることが出来ないという奴隷になった息子にいつか食べさせてやりたいという望みを掛け、いつもここに食べ物を準備していた・・・。
最初は腹を空かせた王宮の中の誰かが食べているのだと思っていた。
でも・・・食べ物がなくなるのは決まって月の明かりがない晩。
奴隷なのだと分かった・・・だから月の明かりがない晩はいつもここでお前を待っていた・・・。
奴隷は喋れないと言われているからどうやって息子のことを聞こうかと悩みながら・・・。」
男が声を震わせながら続ける。
「俺の息子の番号は8256144847。
知っているか・・・?
まだ・・・まだ生きているのだろうか・・・。」
.
でも、鎧も剣も持たない姿で両手を自分の胸の前に広げ、私に止まるよう訴えている動作のようにも見える。
私は勿論それを無視し、この場から逃げようと駆け出した。
そしたら・・・
「食べ物・・・っ食べ物、これ、持っていけ・・・!!」
私の背中にそんな言葉を掛けてきた。
それには驚き振り返ると、男は焦った顔で私が置いた袋を指差している。
「言葉は分かるか?
俺はお前を捕まえたりはしない。
月明かりがない晩、俺はお前の為にこの食べ物を準備しているくらいだからな。」
「食べ物を・・・私の為に・・・?」
「やっぱり喋れるのか・・・!!
奴隷を管理している“鼠番”の奴らは、“鼠の地”にいる奴隷は喋ることも出来ないと言っている。
だからこの国ではそれが通説になっているが、俺は信じなかった・・・!!
俺の息子は少しだけだけど喋れるようになった時期が引き渡し期限だったし、それに他の奴らも・・・!!」
「大昔、王宮から来る人間達に1人につき芋を2つにして欲しいとみんなで願ったら鞭打ちになり、多くのアントもアンナも死んだ。
それからは王宮の人間には何も喋ってはいけないことになった。」
物凄く驚いた顔をしながらも首を縦に何度も振っている男に続ける。
「この国は数年前から、平民だけではなく貴族や王族も紺色の髪の子どもしか生まれなくなったからね。
だから子ども達はみんな奴隷として国に引き渡してる。」
「そんなことまで知っているのか・・・!?
王宮内で知ったのか!?」
「王宮に忍び込んでもそこまでの話は聞けなかった。
でも、数日前にある人間から教えて貰った。」
「そうか・・・。
俺の息子は知っているか?
年は今頃お前とそんなに変わらないくらいで・・・。
俺は貴族でも王族でもないただの料理番長だから、引き渡した息子を家に奴隷として引き戻すことは出来なかった。
王都管轄の“鼠の地”に送られたということだけは知らされたが・・・。」
男は言葉を切った後に苦しそうに口を開いた。
「奴隷となる子どもには名前を付けてはいけないことになっている。
だが俺と妻はオルセオと呼んでいて、息子も自分の名前をつたない口調ではあったが言えていた。
オルセオという名前に聞き覚えは?」
「私達に名前はない。
あるのは番号だけ。
それは王宮の人間がアンナ達に子どもを渡す時、番号を声に出し確認しているもの。
アンナ達がその番号を覚え、その子ども達に自分の番号を覚えさせている。」
私の番号は私の生みの親、死んでしまったアントの番号がアンナの方から付けられた。
大昔から、自分の番号だけは覚えているよう言い伝えられている教えだった。
私の言葉に男はまた何度も頷いた。
そして・・・
「芋1つしか食べることが出来ないという奴隷になった息子にいつか食べさせてやりたいという望みを掛け、いつもここに食べ物を準備していた・・・。
最初は腹を空かせた王宮の中の誰かが食べているのだと思っていた。
でも・・・食べ物がなくなるのは決まって月の明かりがない晩。
奴隷なのだと分かった・・・だから月の明かりがない晩はいつもここでお前を待っていた・・・。
奴隷は喋れないと言われているからどうやって息子のことを聞こうかと悩みながら・・・。」
男が声を震わせながら続ける。
「俺の息子の番号は8256144847。
知っているか・・・?
まだ・・・まだ生きているのだろうか・・・。」
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