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動かされてしまっている私の顔を見詰めながら、この人が私の小さな小さな握り拳を強く握ってきた。



それに、動かされてしまう・・・。



動きたくないのに、動かされてしまう・・・。



こんなにガンガン攻めてこられたら、それをかわしていくのに動かなければいけないから・・・。



この人からの拳(こぶし)を受けかわしていく中で、嫌でも感じてしまう。



五感で、感じてしまう・・・。



この人の拳(こぶし)に込められている私への愛を、感じてしまう・・・。



「こんなに小さなペットボトルでは収まりきらなかったらどうするんですか・・・?
キャップを閉めた後、涌き出てきた愛をどうすればいいんですか・・・?」



聞いた私に、この人が優しい笑顔で笑った。



「そしたら、俺がペットボトルのキャップを外して飲むから。
一気に飲むから。
そこにまた俺への愛を溜めてよ。
だから・・・」



言葉を切ったこの人が、私の小さな小さな握り拳にした右手を少し震え始めた手で握り・・・



ゆっくりと、近付いてきた・・・。



そして、私を“愛している”瞳で見詰め・・・



「俺の方のペットボトル、一旦空っぽにしてもらえるかな・・・?
凄い勢いで溢れ出しててヤバイ・・・。」



そう言って・・・



そんなことを言って・・・



私の顔に・・・



どんどん、顔を近付けてきた・・・。



ゆっくりだけど、どんどん近付いてきて・・・



近付いてきて・・・



入った・・・。



綺麗に入った・・・。



真っ直ぐと、私の唇に、入った・・・。



取られてしまった・・・。



取られてしまった・・・。



私の少ない女が取られてしまった・・・。



そう思ったけど・・・



少ない女は取られることなく留まっている・・・。



キャップをしたから・・・。



慌てて、キャップをしたから・・・。



だから、私の少ない女はこのペットボトルの中で留まっている・・・。



だからか、少ないはずの女である私でも、この人とのキスが嬉しいと思ってしまっているのかもしれない・・・。



少しだけ触れる優しいキス・・・。



生まれて初めてしたキスは、悩んでしまうくらい、嬉しいと思ってしまった・・・。



よけることもかわすことも防ぐことも出来たのに、それくらいゆっくりな動きだったのに・・・



身動きが取れないくらいに、喜んでしまっていた・・・。
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