【完】拳に愛を込めて(カットページ掲載済2023.4.30、詳細は内容欄に記載)

Bu-cha

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「矢田さんって、人事部長代理の人だったんですか?」



帰り道、電車の中で矢田さんに聞くと矢田さんは苦笑いをしながら頷いた。



「うん、まあ。
あんな名刺渡す機会ないと思ってたけど、まさか年下の男の子達への対抗心で渡すことになるとはね。
的場さんのことになると全然精神が整えられないんだけど。」



「名刺出した時の闘争心凄かったですよね。
顔は爽やかに笑ってるのに闘争心はヤバくて怖かったんですけど。」



「一応、営業スマイル。」



「仕事以外でも営業スマイルとか出来るんですね。」



「普段はしないよ、そんな疲れること。」



「ですよね、人事の仕事以外で見たことありませんでした。」



「でも、うちの会社に登録してる派遣さんが普段あんな扱い受けてないといいけどな。
会社によっては食堂使ったらいけないとか言われるとは聞いたことがあるから。
あの男子達、俺のこと“派遣さん”呼びだしね。」



私も心の中ではこの人のことを“派遣さん”呼びしていたのでそれには苦笑い。
“矢田”という名字だったことも知らなかったし、昔の呼び方で呼ぶのは心の中でも抵抗があったから。



「まあ、あの男子達は的場さんのことで気に入らないからわざとだろうけどね。」



そんなことを言って、苦笑いしている私の顔を見てきた。
私の口元・・・欠けている前歯を見てきた。



そして・・・



笑いを堪えたような顔になり・・・



「今日まだ時間ある?
“社長”のパーティーの歯医者さんが、日曜日だけど対応してくれるって。」



と、そんな嬉しすぎることを言ってきた。
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