【完】拳に愛を込めて(カットページ掲載済2023.4.30、詳細は内容欄に記載)

Bu-cha

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そして、11月。



俺の“指揮者”である社長から頼まれたとはいえ、全く乗り気ではなかった。
葛西さんの言うとおり俺はコミュ障なんだと思う。



社長の会社では全社員が“持っている”人達だから良い人ばかりで。
凄く、良い人ばかりで。



加賀製薬の会社に入り数分・・・
副社長室で小町さんからヒヤリングをして数分・・・。



その数分だけど・・・
すれ違った社員達はそこまで持っていない人達だった。



年配の人達は“持っている”人達だったけど、若い社員になるにつれぼんやりとしか見えないような社員で。



「矢田さんの会社、離職者が0って本当ですか?」



秘書の相川さんが人事部の部屋に案内してくれる途中でそう聞いてきた。



この人の心には・・・武器がある。
それも色んな種類の武器が。
その武器に桜の花びらが舞っている。
小町さんの心にある大きな大きな桜の木から舞っている花びらなのだと思う・・・。



それが・・・



「相川さんの奥さん、もしかして名前に“月”が入ってたりしますか?
心に“月”が浮かんでいます。」



そう、バックには月が浮かんでいた。
相川さんの結婚指輪を確認してからそう言ってみると、相川さんが少しだけ驚いた動きになった。
でも、少しだけ。



「離職者が0という噂は本当らしいですね。」



そう言って笑う相川さんが俺を少しだけ長めに見てきて・・・



「矢田さん、面倒なら普通の派遣社員としておきましょう。」



相川さんがそんなことを急に言い出した。



「女、特に苦手そうですよね。
さっきからすれ違う女性社員が矢田さんを見ているのを面倒そうにしていたので。」



「そうですね・・・。」



「普通の派遣社員にしておきましょう。
それで少しは面倒じゃなくなるとは思うので。」



「お願いします。」



そんなやり取りをしながら人事部の部屋の扉を相川さんが開けてくれた。
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