【完】好き好き大好きの嘘

Bu-cha

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「え!??食べるの!!!?」



全ての料理をお皿にテキトーだけど戻した時、テーブルに着いた的場和雄はその料理を食べ始めた。



「食べるだろ、ばあちゃんが作ってくれた料理だしな。
今日は俺が来るからこんなに肉を用意してくれてるし、量もお前らだけの時より多いんじゃねーの?」



「それはそうだけど、でも1回落ちた食べ物だし・・・。」



「3秒ルール!!!
俺には3秒しか経ってないから余裕で食べられる!!!」



「3秒ルールって?」



「1回落ちた物を食べる時の言い訳のルールだな!!
俺は公立の小学校に通ってるから、みんな3秒ルールで1回落ちた物も普通に食ってるんだよ!!」



的場和雄がそんなルールを言って、私はその意味不明なルールには驚いていると・・・



結子が笑った。



小さくだけど、クスクスと笑い出した。



このクソジジイの家に来て、結子が初めて笑った。



そして・・・



的場和雄と一緒になって、1回落ちた料理を食べ始めた。



「ばあちゃんの料理って俺の母さんの料理と同じ味がするんだよな。
でもこの肉・・・うっっっま!!!!
肉自体が絶対に高いやつだぞこれ!!!
うちでは出てこない高級な肉!!!!」



そう言った的場和雄に結子がまたクスクスと笑う。
そんな結子の姿を見て、私も結子の隣に座ってグチャグチャになったおばあちゃんの料理を食べていく。
1回落ちた料理だけどいつものように美味しかった。



無言でいるクソジジイの姿を見ることはしなかったけれど、的場和雄は終始結子をクスクスと笑わせていた。



そして、おばあちゃんの料理は全てなくなった。
私と結子2人の時は食べきれたことがないのに初めて食べきれた。



結子もそれには驚き、ペロリと食べてしまった的場和雄にまたクスクスと笑っていた。



それに私は悔しい気持ちにもなった。



生まれて初めてここまで悔しい気持ちになった。



私には出来なかったから。
おばあちゃんが作ってくれた料理を食べきることも、結子をクソジジイの前でも笑わせることも、私1人では出来なかったから。



「俺は1人であれを片付けられなかった!!
一緒に片付けてくれてありがとな!!
お前達と交流するOKが出たから、これからよろしくな!!」



私と結子が迎えの車に乗り込むと的場和雄はそう言って、“俺は電車で帰る!”と・・・。
結構近所に住んでいるのにこの車には乗らずに電車で帰っていった。



そんな的場和雄の姿を私と結子は見えなくなるまで眺めていた。



初めて会った従兄の姿を・・・。



和の姿を、眺めていた・・・。



「イトコ同士って結婚出来るんだっけ?」



結子のそんな言葉には焦って、でも半分は冗談だと顔を見て分かったので2人で笑った。



あのクソジジイと別れた後、初めてこんなに笑った。
初めてこんなに結子が笑っているところを見た。



私には出来なかった。



男とか女とか、そんなことではなくて。



私1人では出来ないこともあるのだと、この日初めて知った。
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