【完】好き好き大好きの嘘

Bu-cha

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「私は翔子。」としか言えなかった私に、妙子は大きく頷いた後に「道場行ってきます!」とまた軽快な音を響かせて家を出ていった。



そんな妙子にオバサンは片手で頭を抱えた。



オバサンには申し訳ないけど、私は大笑いした。
大笑いして大笑いして、涙が流れるくらいに大笑いをした。



オバサンは困った顔のまま私に笑い掛けてくるので、その顔も全てが面白くて大笑いを続けてしまった。



「和がどうやって育ってきたのか知りたかったから来てみたのに、和よりもずっと凄いのが見て分かる子がいて・・・っ」



「あの子は何が起きたのか、旦那と私のそういう要素だけを詰め込んだ破天荒な子になっちゃって。
同級生の男の子達をぶっ飛ばしまくってて毎日学校から呼び出しよ。」



「男の子達を・・・?
でも、白帯だよね?空手?柔道?」



「空手道場には通ってるけど、空手は習ってないみたい。
空手は喧嘩をする為の手段ではないから先生は教えてないって和雄が言ってた。
だからあの子がしてるのは空手技でも何でもなくただの喧嘩。」



それにはまた大笑いしてしまい、オバサンはまた困ったまま笑い続ける。



「旦那はお菓子会社の社長だからか、子ども達は市販のお菓子も手作りお菓子もジュースも口にすることはなくなった。
とっくに食べ飽きたみたいで、今はとにかく肉!肉!肉!!!って毎日2人で大騒ぎ。」



「公立の学校に通ってると和とか妙子みたいな子になるのかな?
私も結子も私立の幼稚園と小学校だから、和みたいな子はいなくて。
私にはない強さ、それと結子にはない優しさを持ってる子だと思った。」



「そうね、和雄はそんな子。
でもあれは血ね、私も旦那も特にそうなるように育ててない。
むしろそう育てられなかったからこそ、和は自らの力でああなったのかもしれない。
的場の血だけじゃない、あの子には永家の血だって流れてる。
普通じゃない、普通の“正義”ではいられない血が。」



「正義?」



「あの子は正義の塊のような子。
でも、正義だけでこの世界を生きていけるほどこの世界は簡単には出来ていない。
和雄もそれは分かっている。
だから、もう1人いる。
そのもう1人と出会えた。」



「もう1人?」



「“和”と呼ばれるあの子を“和雄”にしてくれるような女の子とは別に、その女の子と出会えていたお陰で和雄は気付けた。
失った物は大きいだろうけど、その代わりに大きな大きな物を手に入れることが出来たもう1人と。」



オバサンが、私のお父さんやお母さんが見せるような力強い目をした時、玄関が開く音が聞こえた。
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