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私の言葉に一夜は目に激しさを込めた。
これまでで1番の激しさを込めた。
「そんなに結子さんのことが大切なんですか?」
「そんな単純な感情では言い表せない。
生まれた時からずっと私の隣にいた。
ドレスを着て可愛くて歩きにくい靴を履いて、可愛い髪型でいつも私の隣にいた。
私が守らないと、結子を。」
激しすぎる目で私を見詰める一夜に私は笑い掛ける。
「私はスニーカーを履いて結子を守らないと。
結子は永家の本家の長女。
だからいつだってドレスを着ているの。
あの子はそうやって生まれてきてしまった。
永家の“家”に、ドレスを着て生まれてきてしまった。」
「翔子さんはスニーカーでいいんですか?」
「スニーカーがいいの。
スニーカーじゃなければ翔ることなんて出来ないでしょ?」
「彼氏さんは・・・彼氏さんの前でだけはドレスを着れているんですか?
スニーカーの翔子さんにドレスを着せてくれるような彼氏さんなんですか?」
そんなおかしなことを聞いてくる一夜に私は大笑いをしてしまった。
「全然そんな彼氏じゃないよ!!
めちゃくちゃ仲の良い友達の延長みたいな彼氏だし、結子の為に生まれてきて育てられた私のこともよく理解してくれてる。
だから私にドレスを着せようなんて考えもしてないよ!!」
私がそう言って笑い続けると、一夜も優しい顔で笑い、それから窓の外をまた眺めた。
「俺、翔子さんの営業成績を早く抜かしますから。
それで“KONDO”から契約書に印鑑を押させますよ、俺が。」
一夜の優しい顔、その横顔から見える目は激しかった。
「だからその時だけは、翔子さんの心にドレスを着せてあげてください。
俺の隣に座っているだけで何もしなくていいので。
翔子さんが何もしなくてもいいくらいに俺は力をつけるので。
その時だけでも、心にだけでも、翔子さんにもドレスを着せてあげてください。」
そんなことを誰かに言われたこともないので、ビックリした。
ビックリしすぎたからか、胸が凄く苦しい。
凄く凄く、苦しい。
「翔ましょう、翔子さん。
俺はどんな場所でも歩けますし時代の先を泳ぐことも出来ます。
両親からそうやって育てられてきたので、それが出来ます。
翔ることなんて俺は朝飯前なので、翔子さんが翔る所を俺も一緒に翔ていけますから。」
一夜の優しい横顔を見詰めていると、窓ガラスに映った一夜の顔が見えた。
一夜は外を眺めていなかった・・・。
窓ガラス越しに私のことを見ていた。
窓ガラス越しに目が合った私に一夜が優しい顔をして笑った。
「仕事では俺が必ず翔子さんと翔るので、プライベートでは彼氏さんにワガママを言ってみてください。
ドレスを着たくなった時、彼氏さんにワガママを言ってみてください。
好きな女の子からワガママを言われて嬉しくない男なんて、この世界に存在しないはずなので。」
そう言って窓ガラス越しに笑う一夜の向こう側には夜の世界が広がっていた。
綺麗な綺麗な、夜の世界が広がっていた・・・。
これまでで1番の激しさを込めた。
「そんなに結子さんのことが大切なんですか?」
「そんな単純な感情では言い表せない。
生まれた時からずっと私の隣にいた。
ドレスを着て可愛くて歩きにくい靴を履いて、可愛い髪型でいつも私の隣にいた。
私が守らないと、結子を。」
激しすぎる目で私を見詰める一夜に私は笑い掛ける。
「私はスニーカーを履いて結子を守らないと。
結子は永家の本家の長女。
だからいつだってドレスを着ているの。
あの子はそうやって生まれてきてしまった。
永家の“家”に、ドレスを着て生まれてきてしまった。」
「翔子さんはスニーカーでいいんですか?」
「スニーカーがいいの。
スニーカーじゃなければ翔ることなんて出来ないでしょ?」
「彼氏さんは・・・彼氏さんの前でだけはドレスを着れているんですか?
スニーカーの翔子さんにドレスを着せてくれるような彼氏さんなんですか?」
そんなおかしなことを聞いてくる一夜に私は大笑いをしてしまった。
「全然そんな彼氏じゃないよ!!
めちゃくちゃ仲の良い友達の延長みたいな彼氏だし、結子の為に生まれてきて育てられた私のこともよく理解してくれてる。
だから私にドレスを着せようなんて考えもしてないよ!!」
私がそう言って笑い続けると、一夜も優しい顔で笑い、それから窓の外をまた眺めた。
「俺、翔子さんの営業成績を早く抜かしますから。
それで“KONDO”から契約書に印鑑を押させますよ、俺が。」
一夜の優しい顔、その横顔から見える目は激しかった。
「だからその時だけは、翔子さんの心にドレスを着せてあげてください。
俺の隣に座っているだけで何もしなくていいので。
翔子さんが何もしなくてもいいくらいに俺は力をつけるので。
その時だけでも、心にだけでも、翔子さんにもドレスを着せてあげてください。」
そんなことを誰かに言われたこともないので、ビックリした。
ビックリしすぎたからか、胸が凄く苦しい。
凄く凄く、苦しい。
「翔ましょう、翔子さん。
俺はどんな場所でも歩けますし時代の先を泳ぐことも出来ます。
両親からそうやって育てられてきたので、それが出来ます。
翔ることなんて俺は朝飯前なので、翔子さんが翔る所を俺も一緒に翔ていけますから。」
一夜の優しい横顔を見詰めていると、窓ガラスに映った一夜の顔が見えた。
一夜は外を眺めていなかった・・・。
窓ガラス越しに私のことを見ていた。
窓ガラス越しに目が合った私に一夜が優しい顔をして笑った。
「仕事では俺が必ず翔子さんと翔るので、プライベートでは彼氏さんにワガママを言ってみてください。
ドレスを着たくなった時、彼氏さんにワガママを言ってみてください。
好きな女の子からワガママを言われて嬉しくない男なんて、この世界に存在しないはずなので。」
そう言って窓ガラス越しに笑う一夜の向こう側には夜の世界が広がっていた。
綺麗な綺麗な、夜の世界が広がっていた・・・。
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