【完】好き好き大好きの嘘

Bu-cha

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無事に送り届けた・・・。
和がいない中、初めて1人で結子を送り届けた・・・。



無事に送り届けた・・・。



そう思っていた・・・。



そう思っていたのに・・・。



翌朝、和と一緒に結子を迎えに行き・・・



大きな門から出てきた結子を見て、無事に送り届けることが出来なかったのだと分かった・・・。



それが分かり、胸が痛い程苦しくなってきた。



何故か、この胸が痛い程に苦しくなってきた。



目の前の結子にはなくなっていたからだと思う・・・。



結子の向こう側に、あの日の“ゆきのうえ商店街”も幼馴染み達も、なくなっていたからだと思う・・・。



でも・・・



“ゆきのうえ商店街”がなくなっていたことよりも、幼馴染み達がなくなっていたことよりも・・・



「増田君、和、おはよう。
毎日ごめんね?」



いつもは“毎日ごめんね”なんて言わないのに、今日はそう言ってきた。



言葉の通り、その顔には申し訳ない気持ちが現れていた。



よく思い返すと・・・



よく思い返すと、結子はいつも楽しそうだった。



いつもいつも、嬉しそうな顔で笑っていた。



そして、昨日は特に・・・。
昨日の帰り道は特に・・・。



俺と2人で帰れるから・・・。
初めて、俺と2人で帰れるから・・・。
俺の半歩後ろを歩く結子のそんな顔を見て、やっぱり結子は俺のことが好きなのかなと思った・・・。



だからこそ、ハッキリと伝えた・・・。



永家財閥の家の為だけに生まれてきた結子に。
永家財閥の家の為だけに育てられてきている結子に。



永家のことを聞く度にそれは何度も何度も出てきていた。
だから俺だってそんなのは以前から知っていた。



それなのに、俺はわざわざあんなことをハッキリと言った。
結子はちゃんと婚約者と結婚するつもりでいるのに。
そうやって生きてきてそうやって育てられてきているのに。



その胸に秘めるだけ、それだけのつもりであろう俺への気持ち。
その気持ちだけを持って、昨日は俺と2人で帰れるのを楽しみにしていたのだと思う。



それなのに、俺がわざわざあんなにハッキリと伝えてしまった。



“余計なこと聞いてごめんね。”



あの後、結子は何も喋らなかった。
だから俺も何も喋らなかった。
最後は気まずい雰囲気の中、2人で無言で結子の家まで・・・永家の“家”まで歩いた。



置き去りにしてしまったのだと分かった。



結子は俺への気持ちをあの帰り道の途中で置き去りにしてしまったのだと分かった。



だからもう、結子の向こう側には俺の“ゆきのうえ商店街”は見えなくなった。



結子の身体だけを無事に送り届けられたと思っていたけれど、永家の本家の長女として何も意思を持たないよう育てられている結子。
そんな結子がきっと大切にしていたであろう気持ちを、俺は置き去りにしてしまった。



その事実をこんな形で見ることになり、何故かこの胸が痛い程に苦しくなった。
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