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「もしも~し。」



「宗・・・。」




すぐに電話に出ると、電話の向こうの神崎社長がすぐに俺の名前を呼んだ。





「どうやって、隠してたの?」




「隠すって?」




「あんな子、今までどうやって隠してきたの・・・?」




神崎社長の言葉に、俺はすぐにピンっときた。




「夏生?夏生に会ったの?何で?」




自分でもビックリするくらい、低い声が出た。




「何でって、あのジム紹介したの、まず私だからね?」



「そっ・・・か・・・。そうだったか・・・。
あ~・・・社長には会わせなくなったな~・・・。」



神崎社長が珍しく大笑いしている。



「確かに、あんな子なかなかいないわね。
モデルかと思ったけど見たことないし、よっぽど売り方下手な事務所にいるのかと思って。」



「何で夏生だって分かったの?名前聞いたの?」



「最初は、見た目も雰囲気もある子だなってくらいで声掛けて、名刺渡したの。
そしたら、その名刺見て“shu-”の事務所だって。
私、こんな子が宗の近くにいたら、色々面倒になると思って警戒したのよ。
夏生さん一筋な所が、今後の売り出し方でもあるから。」



そんな売り出し方は全く聞いていない上に、神崎社長はまた大笑いを始める。



「あんな凄い子、いつぶりに見たかな?
宗の目にも似てるけど、もっと凄いのね。
まだ無名だった宗をスカウトした時も、「俺、男だけど。それでもいいの?」って言われた時もゾクゾクしたけど、それ以上だったわ。」



今日の神崎社長はペラペラとよく喋り、こんなに喋る所は初めてで。



「ただ、名前を言っただけ。
あの子、私にただ名前を言っただけ。
それだけで、その瞬間だけで・・・あの目、何?どうやって身に付けたの?」



神崎社長に聞かれ、少しだけ考える・・・。



「闘ってきたから・・・かな。
本当は弱くて、繊細だけど、それでも自分より強い相手と闘わなきゃいけなくて。
どんなにピンチの時も、皆を引っ張らなきゃいけないから。」



何回も応援に行った、試合中の夏生を思い出す。



「夏生は、強い相手と闘う時の方が、凄いんだよね。
ピンチの時の方が、いつもより、もっと強くなる。」



「そう・・・そうなの・・・。」



これを言う時は、絶対に不適な笑顔で笑っている時。
俺をスカウトし、「俺、男だけど。それでもいいの?」って言った時もそうだった。




「夏生さん、“KONDO”に就職するんでしょ?」



「うん、そんなことまで聞いたんだ?」



「今、夏生さんそこにいる?
あそこの副社長とは知り合いだし、諦めて待とうと思ったけど・・・
どうしても、忘れられない・・・あの目。」



「うん、そうだよね。俺も・・・。」



「夏生さんに代わってくれる?
もう一回、ちゃんと話したい。」



「あ~・・・ちょっと色々あってさ、俺、今実家で。
そのことでさ、神崎社長にお願いがあって・・・」
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