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3人が楽しそうに笑いながら“いち”を見る。



「一君に召還されたのは2回目だね。」



「2回目なのかよ!?」



「うん、1回目は仁が二葉ちゃんのおじさんの会社に入るって決めた時。」



友達3人が、真剣な顔で俺を見る。



「一君は、予測していた。
今日という日が、いつか来ることを。」



「・・・マジかよ。恐ろしい兄貴だな。」



「俺は半信半疑ではあったけど、葛西はそれで急遽進路変更をしたよ。」



俺は不思議に思い、葛西を見る。



「俺は父さんの会社に入らず、弁護士になった。
会計士、社労士、この2人以外にあと弁護士がいればいいかなと思って。」



「俺達の親はそっち系の仕事だから、親の会社に入るために大学在学中に資格を取っていたから。
葛西は、一君の予想で急遽方向転換した。
なのに・・・よくなったよね、流石だよ。」



3人が楽しそうに笑っているのを見て、俺はなんだか泣きそうになった。



「仁、作ろう。二葉ちゃんの会社を。」



葛西が俺に言う・・・。



「俺は何が出来るか・・・。」



小さく呟いた俺に、“いち”が珍しく笑った。



「“コンマス”になればいい。
第二の指揮者に、君がなればいい。」



「第二の指揮者・・・。」



「君の指揮者は二葉だから。」



「知ってたのか・・・。」



「君のことならよく分かるよ。」



“いち”が笑った後、3人を見渡した。



「“トップ、パートリーダー”はいる。
会計士、社労士、弁護士。」



また真剣な顔で、“いち”が俺を見る。



「二葉の会社、作ろう。」



そう言う“いち”は、“楽譜”だと思った。



ピアノも弾けない、指揮者にもなれなかった俺・・・。
でも、もしかしたらオーケストラのステージに立てるのかもしれない。



4人を見て・・・



俺は、涙が止まらなかった・・・。
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