【完】お兄ちゃんは私を甘く戴く

Bu-cha

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「お母さんのことが?なんで?」



理子が聞くと、真理姉の弟は理子の方を見てきた。



「追い求めたから・・・。」



「追い求めたって?何を?」



「お母さんを・・・。」



真理姉の弟がそう言って、小さくだけど笑う。



「自分が納得するまで・・・追い求めたから・・・。
お母さんを、追い求めたから・・・。」



そう言いながら、また茶色いノートを見下ろして・・・



「だから、今は・・・たまにお母さんを、求めるだけ・・・。
死んだお母さんのことを・・・追いかけたから・・・今は、たまに求めるだけ・・・。」



その言葉に、理子は驚く・・・。



「お母さん、死んじゃったのに追いかけられたの・・・?
お兄ちゃんは死んだら終わりって言ってたのに・・・。」



理子が聞くと、真理姉の弟は大きく頷いた。



「みんなの中に・・・お母さんは、まだ生きてるから・・・。
まだ、追いかけられる・・・。
色んな人に、お母さんのこと・・・聞いたから・・・追いかけられた・・・。
だから、僕のお母さんは・・・ここに、いる。
このノートの中に、いる・・・。」



「そうなんだ・・・。
理子のお母さんもみんなの中でまだ生きてるのかな・・・。」



理子がそう聞くと、真理姉の弟は困った顔で笑う。



「鮫島君の中では・・・生きてないのかもしれないけど・・・。
でも、他の人の中では・・・まだ、生きてるかも・・・。」



真理姉の弟のその言葉に、理子は初めて“お母さん”への望みがあるのだと感じた。
初めて、そんなことを感じられた。



いつも真理姉の言葉を無視している真理姉の弟。
そんな真理姉の弟が、理子には真理姉みたいに一生懸命話そうとしてくれていて、素直に嬉しいとも思った。



真理姉の弟に笑い掛けながら、言う。



「理子、まだ字がそんなに書けないから。
字が書けるようになったら理子もお母さんを追い求めに行く。」



そう言った理子に、真理姉の弟は小さく頷いた。



「今日、ここで一緒に寝ていい?」



「それは・・・ダメ・・・。」



そう言って理子はベッドから追い出されてしまったけど、真理姉の弟も真理姉と同じように優しくて温かい人なのはなんとなく分かった。
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