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「ただいま・・・。」



家に帰ると、我が家は真っ暗だった。
理子は隣の部屋にいるかもしれないけど、敢えて声を掛けなかった。
少し、気を抜いていたかったから・・・。



そう思いながらリビングのダイニングテーブルでボーッとしていると、見えた・・・。



ダイニングテーブルの上の花瓶が・・・。



まだ咲いている3本の花を綺麗に生けている花瓶が・・・。



私が長峰と宝田の結婚式でキャッチをしてしまったブーケの花・・・。



「理子が、やってくれてたんだな・・・。」



最初に花瓶に生けただけで、その後私は何もしていない・・・。
何もしていない・・・。



私は、何も“母親”らしいことは出来ていない・・・。



働いていたけれど・・・。



理子や真理には比較的手を掛けられたけれど・・・。



男の子である光一や豊のことは渡に任せていたところがあった・・・。



凄く、あった・・・。



それに・・・



それに、光一には・・・



光一には、甘えてしまっていた・・・。



私は、光一には甘えてしまっていた・・・。



「これからでも、“お母さん”の顔になれるかな・・・。
光一にとっても、“お母さん”の顔になれるかな・・・。」



そう呟きながら、花瓶に生けられている3本の花を長い時間眺めていた・・・。
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