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ついこの前までウジウジウジウジしていた面倒臭いババアが、今は可愛い女の子に見える顔で桃子が続ける。



「家族になりたい。
私は光一と理子と、ちゃんと家族になりたい。
血の繋がりも戸籍上も関係はないけど、それでも光一と理子を育てる“お母さん”になりたい。」



「・・・姉貴でもいいだろ、別に。」



フッと、理子が指差していた写真を思い出す。
そして、あの時にいつも母親が言っていた言葉も思い出してしまった。



“血が繋がっていなければ結婚出来るから!
光一、桃子を嫁に連れてきな!!”



5歳の俺に母親はそんなバカげたことを言っていて・・・。



それを今、桃子を見ていたら思い出してしまった・・・。



そんな、死んだ奴の言葉を思い出してしまった・・・。



良樹と入籍する前に死んだ母親のことを・・・。



そのせいで、桃子が戸籍上の姉貴になれなかった・・・。



そのせいで、桃子は死ぬ程苦しんだ・・・。



苦しんできた・・・。



家族はいない・・・。



桃子には家族はいない・・・。



死んだから・・・。



親だけじゃなくて・・・。



あり得ないことに、親族が死にまくったから・・・。



桃子が生まれた瞬間に、バタバタと死にまくった・・・。



たった1人の遠縁のクソババアを除いて、全員が死にまくった・・・。



「死神・・・。」



俺がそのことを考えていると、桃子がそう呟き・・・泣きそうな顔で笑った。



「私・・・死神だけど、いいかな・・・?
光一と理子の“お母さん”になっても、いいかな・・・?」



そう言って真っ直ぐと俺を見詰める可愛い顔をした桃子の隣に、虚ろな目ではない目をした理子が立っている。



そんな2人を見てから、桃子を見た。



そして、頷いた・・・。



小さくだけど、頷いた・・・。
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