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「妙子って、本当に良い子だよね。」



妙子が帰った後、母ちゃんが笑いながら俺に言ってきた。



「だな、空手辞めなきゃよかったのに。」



俺はそう言いながら、妙子から受け取った紙袋に入った煎餅を見下ろす。
そして、それを母ちゃんに戻した。



「母ちゃん、食えよ。
最近痩せすぎだろ。
ガリガリになって俺をビビらせるなよ。」



そう言った俺に母ちゃんは困ったように笑いながら紙袋を受け取った。



「最近、会社で食べる時間なくて。
お腹減った~!!
真理のご飯、今日何だろう!?」



「牛丼。」



「やった~!!」



母ちゃんが喜びながら、リビングに隣接している畳の部屋に入った。
ここが母ちゃんの部屋。



3LDKの社宅の部屋。
俺と理子に1室ずつ与えられ、リビングに隣接しているこの部屋が、母ちゃんの部屋だった。



そこに入り、母ちゃんがタンスから部屋着を取り出して洗面所に入っていく。
今日も、入っていく。
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