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そう思いながら、俺は右手を胸の前で握った。
強く、強く、握った・・・。
「薬を、入れておきました。」
視界が霞んできた俺に女がそう言ってきた・・・。
「病気とかじゃねーから・・・。」
「それでも、よく効く薬です。」
女がそう言いながら、俺にアイスコーヒーのグラスを近付けてきた。
そして、上目遣いで瞬きをしながら俺を見て・・・
俺を見て・・・
「どうして珈琲を飲んだことがないんですか?」
そう聞いてきたので、俺は答えた。
「姉貴が・・・肌荒れをするから、コーヒーは家に置いてない・・・。
姉貴が飲めないから、うちでは誰もコーヒーを飲まない・・・。
姉貴1人で我慢させるような奴に、俺達は育てられてないから・・・。」
「素敵なご家族ですね。
素敵な・・・素敵な、お姉さんなんでしょうね。
お姉さんのことが、大好きなんですね?」
女がそんなことを言ってきた。
そんなことを、言ってきた・・・。
「その胸の苦しみが消える薬を入れておきました。
アイスコーヒーに、入れておきました。
少しでも飲んでください。
きっと、その胸の苦しみは消えますから・・・。」
女にそう言われ、俺は仕方なくアイスコーヒーを一口飲んだ。
そして、呟く。
「・・・にが。」
そんな俺に、女はアワアワとしだした。
「雷さんがガムシロップもミルクも入れないから、持ってくるの忘れちゃいました!!」
急にそんな感じになり、それには笑ってしまった。
笑いながら、小さく頷く・・・。
そんな俺に女は優しい顔で笑った。
そして・・・
「“お姉さん”は、美味しかったですか?」
そんなことを言い出した女に、俺は驚いた。
そしたら、天野さんが吹き出して・・・。
「この前ライブ配信をした“可愛くて美味しいまり姉”の動画を、瞳にも事前に見せてた。
お前がモザイクなしで出たからな。
瞳にお前の顔を事前に見て貰う為に見せてた。」
天野さんがそう言ってきた。
2月にあった理子の動画、そこでライブ配信をした。
その動画に俺も出演をして、そこで頷いた・・・。
俺は、頷いた・・・。
真理姉の旦那の言葉に、頷いた・・・。
“男にとっても、可愛くて美味しいは正義に決まってるだろ。”
その言葉に、俺は頷いていた・・・。
そのことを思い出していると、女は上目遣いで瞬きをしながら俺を見てきた。
そして、口を開いた。
また、口を開いた・・・。
その前に、俺は口を開いた。
これ以上何かを言われる前に、自分から口を開いた。
「“姉貴”の涙も鼻水も、泣きたくなるくらいにめちゃくちゃ美味しかった。」
そう、口を開いた。
そして、天野さんを見ながら今度は口を大きく開いた。
大きく開いてみせた。
「あの人は、俺の姉貴になる予定だった。
お互いの親が再婚をして、姉貴になるはずだった。
姉貴の父親である良樹が死ぬから、その前に姉貴をうちの家族に入れるはずだった。」
そう、口を開いた・・・。
誰にも言わないと約束をしていた・・・。
母ちゃんと、約束をしていた・・・。
この約束を破ったのは2回目だった・・・。
2回目だった・・・。
そう思いながらも、握り締めた右手の向こうにある胸は少しだけ楽になった・・・。
少しだけ、楽になった・・・。
強く、強く、握った・・・。
「薬を、入れておきました。」
視界が霞んできた俺に女がそう言ってきた・・・。
「病気とかじゃねーから・・・。」
「それでも、よく効く薬です。」
女がそう言いながら、俺にアイスコーヒーのグラスを近付けてきた。
そして、上目遣いで瞬きをしながら俺を見て・・・
俺を見て・・・
「どうして珈琲を飲んだことがないんですか?」
そう聞いてきたので、俺は答えた。
「姉貴が・・・肌荒れをするから、コーヒーは家に置いてない・・・。
姉貴が飲めないから、うちでは誰もコーヒーを飲まない・・・。
姉貴1人で我慢させるような奴に、俺達は育てられてないから・・・。」
「素敵なご家族ですね。
素敵な・・・素敵な、お姉さんなんでしょうね。
お姉さんのことが、大好きなんですね?」
女がそんなことを言ってきた。
そんなことを、言ってきた・・・。
「その胸の苦しみが消える薬を入れておきました。
アイスコーヒーに、入れておきました。
少しでも飲んでください。
きっと、その胸の苦しみは消えますから・・・。」
女にそう言われ、俺は仕方なくアイスコーヒーを一口飲んだ。
そして、呟く。
「・・・にが。」
そんな俺に、女はアワアワとしだした。
「雷さんがガムシロップもミルクも入れないから、持ってくるの忘れちゃいました!!」
急にそんな感じになり、それには笑ってしまった。
笑いながら、小さく頷く・・・。
そんな俺に女は優しい顔で笑った。
そして・・・
「“お姉さん”は、美味しかったですか?」
そんなことを言い出した女に、俺は驚いた。
そしたら、天野さんが吹き出して・・・。
「この前ライブ配信をした“可愛くて美味しいまり姉”の動画を、瞳にも事前に見せてた。
お前がモザイクなしで出たからな。
瞳にお前の顔を事前に見て貰う為に見せてた。」
天野さんがそう言ってきた。
2月にあった理子の動画、そこでライブ配信をした。
その動画に俺も出演をして、そこで頷いた・・・。
俺は、頷いた・・・。
真理姉の旦那の言葉に、頷いた・・・。
“男にとっても、可愛くて美味しいは正義に決まってるだろ。”
その言葉に、俺は頷いていた・・・。
そのことを思い出していると、女は上目遣いで瞬きをしながら俺を見てきた。
そして、口を開いた。
また、口を開いた・・・。
その前に、俺は口を開いた。
これ以上何かを言われる前に、自分から口を開いた。
「“姉貴”の涙も鼻水も、泣きたくなるくらいにめちゃくちゃ美味しかった。」
そう、口を開いた。
そして、天野さんを見ながら今度は口を大きく開いた。
大きく開いてみせた。
「あの人は、俺の姉貴になる予定だった。
お互いの親が再婚をして、姉貴になるはずだった。
姉貴の父親である良樹が死ぬから、その前に姉貴をうちの家族に入れるはずだった。」
そう、口を開いた・・・。
誰にも言わないと約束をしていた・・・。
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この約束を破ったのは2回目だった・・・。
2回目だった・・・。
そう思いながらも、握り締めた右手の向こうにある胸は少しだけ楽になった・・・。
少しだけ、楽になった・・・。
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