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スーツにネクタイを絞めた姿で、俺は“その時”を待った。



ビジネスホテルの椅子に座り、“その時”を待った・・・。



待ち続けた・・・。



眠り続ける“桃子”の姿を眺めながら・・・



待ち続けた・・・。



待ち続けた・・・。



そして、来た・・・。



カーテンを閉めなかった部屋の中、5月の朝陽が差し込んだ中で、“その時”は来た・・・。



俺は頭を回す・・・。



この両目で何も見逃すことなく見て、頭を回す・・・。



対応してみせる・・・。



“桃子”の動きを見逃すことなく、臨機応変に対応してみせる・・・。



勉強したから・・・。



俺は天野さんから勉強させて貰ったから・・・。



生み出してみせる・・・。



ゼロやマイナスどころか、グチャグチャに破壊してしまう段階のこの絶対絶命の中で、生み出してみせる・・・。



また、生み出してみせる・・・。



“桃子”の人生を、生み出してみせる・・・。



そう思いながら、両目を見開いた・・・。



しっかりと、見開いた・・・。



スーツを着た“桃子”が起き上がった姿を、頭を回しながら集中して見た・・・。
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