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第六話
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薄暗い部室の中、スマホの画面だけが煌々と光っていた。
ゲートまで来たところで『やっぱり私はココに残るよ!』と言うエリーを残し俺たちは、3人だけで戻ってきた。
ミヨには、とりあえず、時間がある時に連絡してくれってメッセージ入れといたからその内連絡あるだろう。
「保田、 そのパソコン任せていいか?お前そーゆーの得意だろ?」
「え? サトルは見ないのか?」
「いや、俺パソコン苦手だし…。」
「どっかにコンセントあったよな?」
成瀬はアダプターを片手に部室の隅を彷徨いていた。
「お、あったあった。」
程なくコンセントを見つけた様で、早速電源を繋いだ様だった。
成瀬はそのまま部室の電気を点けようスイッチに手を伸ばしていた。
「待て!点けるな!」
「え?なんで電気つけないんだ?」
「だってもう夜だぞ。突然部室に電気ぎ点いたら怪しまれるだろ?」
「確かに。」
成瀬は自分の腕時計を覗き込んでいる。
「あれ?まだ19時前?」
「だから言っただろ。向こうとは時間の流れが違うんだって。向こうでの1日がこっちの50分弱なんだから。」
そんな話をしていると、保田が突然『よしっしゃー!』と叫んだ。
「このパソコンの持ち主、セキュリティもなにも無いな。パスワードがゼロ4つってどんだけだよ(笑)生体認証とかじゃなくて良かったぁ。」
どうやらノートパソコンの起動に成功したみたいだ。
「でもなんだろ?こんなOS見たことないなぁ。Linuxベースかな?」
保田はブツブツ言いながらノートパソコンを操作している。
「なんか分かりそうか?」
「ちょっと待ってな…あ、ほらココ時計が出てるだろ?で、ココ、ほら日付。」
そこに映し出されていた日付は2030年9月10日。
あの本の発行日からひと月ちょっとか…。
「え?これも2030年って…。」
「うん、12年後だな。で、保田くん。この中に例のモノは有ったのかな?」
成瀬が横から割り込んできて変な口調で保田に語りかけてきた。
「旦那ぁ、それは今からですぜ。少々お待ちを。」
保田はそう言うと、どんどんフォルダを開いていった。
いったい何を探してるんだ?と首を傾げていると…。
「どうしたのかな?サトルくん?まさかとは思うが、何を探しているなか分からないとは言わないですよねぇ?」
「え?」
「またまたぁ。他人のパソコンの中と言えば色々あるでしょ?ひっそり溜め込んだあんな画像やこんな動画。」
「え?マジかよ。悪趣味過ぎるだろ?他人のパソコンだぞ。」
「いやいや持って帰ろうって言い出したのは君じゃないですか?それが目的だったんでしょ?」
成瀬がニヤニヤしながらネチネチと絡みついてくる。
保田は黙々とファイルの検索を続けている様だが、一向にその手のモノは見つからないみたいた。
成瀬が言う様に確かにその手の画像なんかが保存されている可能性は高い。
「アレ?マジで無いなぁ、ゴミ箱の中もキレイに消されてるし…。真面目かっ!」
残念そうに保田が嘆いている。
「それは置いといて、何か見つかったか?」
「うーん。コレ見てみ。」
保田が見せてきたのはファイルの一覧だった。
その一覧には、ファイル名とファイルの容量、そして日付と時間…。
そう、その日付が問題だった。
そこに表示されていたのは、殆どが2030年と書かれていた。
やっぱり12年も先の未来の日付だ。
「あ、見ーっけ。」
保田が嬉々として一つのファイルをダブルクリックして開いた。
画面上に黒いウインドウが現れ、動画の再生が始まった。
そこに映し出されたのは、見たこともない景色だった。
最初に映っていたのはあの部屋ではなく、何処か別の部屋だった。
そして周りの雑音や、外の音は聞こえるが、この動画を撮っている人物は声を発していない様だ。
カメラは部屋から出て一瞬画面がハレーションを起こし真っ白になった。
白くボヤけた画像がゆっくりと色を取り戻していくと、そこには見たことのない造形の建物が立ち並んだ街並みが映し出された。
なんだろうコレ?CGかなんかかな?映画にしちゃ雑だし…。
保田と成瀬を見ると、この後の展開を期待してか目がマジだ。
しかし、映像はすぐに 切り替わり、森が映し出された。
『何してるの?』
カメラが向いていない方角から女の子の声が聞こえてきた。
その声に二人は身体を乗り出して動画に見入ったが、カメラに一瞬人影が映ったかと思うと、無情にも動画はそこで終了した。
「えーーー。そこで終わりぃ?」
保田の悲痛な叫びが、静かな部室に響いた。
「何を期待してたんだよ…。」
「だって女の子の姿も見えないし、この後の展開が…。」
保田のこんな残念そうな顔は初めて見た気がする。
成瀬に至っては、リアクションすら出来ないみたいだ。
「ん?」
動画を閉じた保田が何かに気がついた。
「コレって…。」
動画のファイルに付いている日付を指差して振り向いた。
え?このファイルだけ2018年9月29日って…。次の土曜日?
「次の土曜日って…結局これ撮ったのどこの誰なんだよ?」
保田は憤慨しながらも、このパソコンの持ち主の手掛かりを探そうとしている。
「それが分かれば、直接訪ねて行けるんだけどなぁ。あ、メールとかどうだ?」
「お!サトルそれだ!」
保田は素早くメールを確認し始めた。
見つけたメールソフトに残っていたのは、大量のスパムメールとメールマガジンの数々。
しかし、保田は迷うことなく、送信済みトレイを開きにいった。
中にはほんの10通程度の送信履歴が残っていた。
そのひとつひとつを開いて確認していった結果。
「うんコレだな、多分このパソコンの持ち主だと思うけど、 送信メールの下の方に…ほらHAJIME.Yって書いてあるだろ?」
確かにどのメールにも書いてある。
コレが持ち主の名前か?
「じゃぁハジメって名前のヤツなんだな。でも苗字のYってのが分かんないよな?」
「うん、Yで始まる苗字で長崎出身…。見つかりっこないよな…。」
「なんで長崎?」
「ほら、あの部屋にあったろ?長崎のフリーペーパー。」
「あ、確かに…。じゃ長崎は確定って事か?」
「もっと調べる必要はあるけどな。ところでミヨさんからまだ連絡無いのか?」
「うん、まだ既読も付いてない。」
「忙しいのかな?」
「どーせ漫画とかOVA観てて気づいてないんだろ。まぁそのうち掛かってくるだろうし、とりあえず今日はもう帰らないか?日も暮れちゃったし。」
「そーだな。明日の放課後また行くんだろ?ほら成瀬帰るぞ。」
部室を出ると、外はすっかり夜になっていた。
ゲートまで来たところで『やっぱり私はココに残るよ!』と言うエリーを残し俺たちは、3人だけで戻ってきた。
ミヨには、とりあえず、時間がある時に連絡してくれってメッセージ入れといたからその内連絡あるだろう。
「保田、 そのパソコン任せていいか?お前そーゆーの得意だろ?」
「え? サトルは見ないのか?」
「いや、俺パソコン苦手だし…。」
「どっかにコンセントあったよな?」
成瀬はアダプターを片手に部室の隅を彷徨いていた。
「お、あったあった。」
程なくコンセントを見つけた様で、早速電源を繋いだ様だった。
成瀬はそのまま部室の電気を点けようスイッチに手を伸ばしていた。
「待て!点けるな!」
「え?なんで電気つけないんだ?」
「だってもう夜だぞ。突然部室に電気ぎ点いたら怪しまれるだろ?」
「確かに。」
成瀬は自分の腕時計を覗き込んでいる。
「あれ?まだ19時前?」
「だから言っただろ。向こうとは時間の流れが違うんだって。向こうでの1日がこっちの50分弱なんだから。」
そんな話をしていると、保田が突然『よしっしゃー!』と叫んだ。
「このパソコンの持ち主、セキュリティもなにも無いな。パスワードがゼロ4つってどんだけだよ(笑)生体認証とかじゃなくて良かったぁ。」
どうやらノートパソコンの起動に成功したみたいだ。
「でもなんだろ?こんなOS見たことないなぁ。Linuxベースかな?」
保田はブツブツ言いながらノートパソコンを操作している。
「なんか分かりそうか?」
「ちょっと待ってな…あ、ほらココ時計が出てるだろ?で、ココ、ほら日付。」
そこに映し出されていた日付は2030年9月10日。
あの本の発行日からひと月ちょっとか…。
「え?これも2030年って…。」
「うん、12年後だな。で、保田くん。この中に例のモノは有ったのかな?」
成瀬が横から割り込んできて変な口調で保田に語りかけてきた。
「旦那ぁ、それは今からですぜ。少々お待ちを。」
保田はそう言うと、どんどんフォルダを開いていった。
いったい何を探してるんだ?と首を傾げていると…。
「どうしたのかな?サトルくん?まさかとは思うが、何を探しているなか分からないとは言わないですよねぇ?」
「え?」
「またまたぁ。他人のパソコンの中と言えば色々あるでしょ?ひっそり溜め込んだあんな画像やこんな動画。」
「え?マジかよ。悪趣味過ぎるだろ?他人のパソコンだぞ。」
「いやいや持って帰ろうって言い出したのは君じゃないですか?それが目的だったんでしょ?」
成瀬がニヤニヤしながらネチネチと絡みついてくる。
保田は黙々とファイルの検索を続けている様だが、一向にその手のモノは見つからないみたいた。
成瀬が言う様に確かにその手の画像なんかが保存されている可能性は高い。
「アレ?マジで無いなぁ、ゴミ箱の中もキレイに消されてるし…。真面目かっ!」
残念そうに保田が嘆いている。
「それは置いといて、何か見つかったか?」
「うーん。コレ見てみ。」
保田が見せてきたのはファイルの一覧だった。
その一覧には、ファイル名とファイルの容量、そして日付と時間…。
そう、その日付が問題だった。
そこに表示されていたのは、殆どが2030年と書かれていた。
やっぱり12年も先の未来の日付だ。
「あ、見ーっけ。」
保田が嬉々として一つのファイルをダブルクリックして開いた。
画面上に黒いウインドウが現れ、動画の再生が始まった。
そこに映し出されたのは、見たこともない景色だった。
最初に映っていたのはあの部屋ではなく、何処か別の部屋だった。
そして周りの雑音や、外の音は聞こえるが、この動画を撮っている人物は声を発していない様だ。
カメラは部屋から出て一瞬画面がハレーションを起こし真っ白になった。
白くボヤけた画像がゆっくりと色を取り戻していくと、そこには見たことのない造形の建物が立ち並んだ街並みが映し出された。
なんだろうコレ?CGかなんかかな?映画にしちゃ雑だし…。
保田と成瀬を見ると、この後の展開を期待してか目がマジだ。
しかし、映像はすぐに 切り替わり、森が映し出された。
『何してるの?』
カメラが向いていない方角から女の子の声が聞こえてきた。
その声に二人は身体を乗り出して動画に見入ったが、カメラに一瞬人影が映ったかと思うと、無情にも動画はそこで終了した。
「えーーー。そこで終わりぃ?」
保田の悲痛な叫びが、静かな部室に響いた。
「何を期待してたんだよ…。」
「だって女の子の姿も見えないし、この後の展開が…。」
保田のこんな残念そうな顔は初めて見た気がする。
成瀬に至っては、リアクションすら出来ないみたいだ。
「ん?」
動画を閉じた保田が何かに気がついた。
「コレって…。」
動画のファイルに付いている日付を指差して振り向いた。
え?このファイルだけ2018年9月29日って…。次の土曜日?
「次の土曜日って…結局これ撮ったのどこの誰なんだよ?」
保田は憤慨しながらも、このパソコンの持ち主の手掛かりを探そうとしている。
「それが分かれば、直接訪ねて行けるんだけどなぁ。あ、メールとかどうだ?」
「お!サトルそれだ!」
保田は素早くメールを確認し始めた。
見つけたメールソフトに残っていたのは、大量のスパムメールとメールマガジンの数々。
しかし、保田は迷うことなく、送信済みトレイを開きにいった。
中にはほんの10通程度の送信履歴が残っていた。
そのひとつひとつを開いて確認していった結果。
「うんコレだな、多分このパソコンの持ち主だと思うけど、 送信メールの下の方に…ほらHAJIME.Yって書いてあるだろ?」
確かにどのメールにも書いてある。
コレが持ち主の名前か?
「じゃぁハジメって名前のヤツなんだな。でも苗字のYってのが分かんないよな?」
「うん、Yで始まる苗字で長崎出身…。見つかりっこないよな…。」
「なんで長崎?」
「ほら、あの部屋にあったろ?長崎のフリーペーパー。」
「あ、確かに…。じゃ長崎は確定って事か?」
「もっと調べる必要はあるけどな。ところでミヨさんからまだ連絡無いのか?」
「うん、まだ既読も付いてない。」
「忙しいのかな?」
「どーせ漫画とかOVA観てて気づいてないんだろ。まぁそのうち掛かってくるだろうし、とりあえず今日はもう帰らないか?日も暮れちゃったし。」
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