異世界転生に憧れてたら向こうから来ちゃった件2.5

明紅

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第二話

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疑り深い二人にアプリを起動してもらうのに凄く時間が掛かった。
でも最後はエリーの「なんだ2人とも怖いのか?」って言葉がしゃくに触ったのか、2人揃って起動する事に応じた。

「いいか?保田、せーので開くぞ。」
「お、おう。」
「「せーのっ!」」
カシャッ

「わっ…写真撮られた。」
「俺も…。」
2人とも俺の時と同じく画面には『認証成功』と表示されていた。

「安心しろ、架空請求とか来ないから(笑)」
「笑い事じゃないだろ!写真撮られるとか聞いてないぞ。」
思わず成瀬に殴られるんじゃ無いかと思うくらいの勢いで怒鳴られた。

「すまん…写真撮られるって言うの忘れてた…。」
怒ってる成瀬とは対照的に保田は早速アプリをいじりはじめていた。

「お!友達登録が来てる…あ、成瀬とサトルとミヨ…コレって神様だよな?」
え?俺、友達申請なんかしてないぞ。
まさか、勝手に登録されるのか?

「えっと、アプリの説明したいんだけど…いいかな?」


§


「すげー、この魔力探知機に反応してる緑色の点ってエリーちゃんなのか?」
「あぁ私だ。」
「ん?もう一つあるぞ…でもだいぶ離れてるな…。」
説明を終えると、あれだけ疑ってたのに成瀬は早速アプリをいじりまくっている。
「あぁ、それは後で話そうと思ってたんだけど…ユウキって友達だ。」
「エリーちゃんみたいに、異世界から来たヤツか?」
「いや、色々と訳ありでさ…。今度、ちゃんと紹介するから。」
「ひとつ確認していいか?この状況を知ってるのって一体何人居るんだ?」
ほら、保田の冷静な質問がきた。
ここは、誤魔化しようがないよな、正直に答えよう。

「ココに居る4人と、蒼ネエ、そしてそのユウキを入れて6人だ。」
「蒼葉さんも、そのユウキって人も全部事情を知ってるって事だよな?」
「あぁ…。」
「くそっ…じゃぁやっぱりさっきのはミヨって神様に揶揄からかわれてたって事だよな…。」
「いや、ただ揶揄った訳じゃ無いと思うけど…。」
「後で文句言っとこ。」
「保田、やめといた方がいいぞ、アレでも一応神様だ、何されるかわかったもんじゃ無い。」
ここは全力で止めておかないと、保田のヤツ、本当に文句の電話を入れてしまいそうだ。

「そう言えば、エリーちゃんはスマホ持ってないのか?」
アプリをいじりながら成瀬が聞いてきた。
「それは持ってないが、コレならあるぞ。」
そう言って鞄から魔導具タブレットを取り出した。

「なっ…なんだそれ…。」
聞いた側の成瀬は、その造形を見て面食らっていた。
「それって…タブレットだよな?」
「あぁ、前にサトルにも説明したけど、どうもこっちの世界の人間が私の住んでいた世界に持ち込んだみたいだ。それを魔導具に改造したという訳だ。」
「なんでもアリかよ…。」
成瀬はエリーからタブレットを受け取って装飾を眺めていた。

「でもさ、俺たちが迷い込んだ場所…まぁ森の中だったけど、とても科学文明が発展してる世界には見えなかったんだけどなぁ。」
「科学とか言うモノの代わりに魔法が発展したんだと思う。」
保田の質問にエリーが応えながらロッカーを気にする素振りを見せた。

「あ、もう17時前か…エリー折角だから4人で向こうに行って見ないか?」
俺の提案に成瀬と保田は「またアレを抜けるのか?」と言う顔をしていた。

「アルヴィスにも会いたいしな。」
「アルヴィス?」
また知らない名前が出てきて成瀬が聞き返した。

「ドラゴンの子供だ。」
エリーのドラゴンと言うワードに反応して、2人の眼の色が変わったのが
「サトル…ドラゴンってあのドラゴンだよな?」
「まぁ、いわゆるドラゴンだけど。」
「よし!行こう!」
保田のヤツ、急に張り切ってどうしたんだ?

「この二人を連れて行っても大丈夫なのか?」
「いいんじゃないか?ミヨも承知の上で二人にアプリを入れたんだろうし。」
「ホントに大丈夫なんだろうな?」
成瀬はまた、不安げな表情を浮かべていた。

「まぁ、あっちの世界を一日二日見て回っても良いかもな。じゃぁ早速行きますか。」
俺はそう言ってロッカーの扉を開いた。
ゲートの向こうは祠の内側だから、祠の内側の扉しか見えない。
昼なのか夜なのか、晴れなのか雨なのかすらわらかない。
でも向こうに行ったらすぐに扉を開けて外に出ないと、次に入って来たヤツに飛び蹴りを食らわされるのは間違いないな。

「じゃ俺が先に行くぞ。成瀬と保田が次に来てくれ、エリーは最後な。ちゃんとロッカーの内側にロックを掛けとけよ。あと、部室の入り口の施錠も忘れるなよ。」
そう言い残して、ゲートに飛び込んだ。

ゲート通過時のあのなんとも言えない感覚は、何度やっても慣れないな。

祠の扉を開けて、外に出た。
しばらくすると成瀬が祠から飛び出してきた。
やっぱりフラフラしてるな。
続いて保田も同じ様に飛び出してきた。
コイツは意外にもフラついていない。

そして、ちょっと時間を置いてエリーが出てきた。
全員が出てくるまでに20分くらい掛かったかな?

「じゃシエラの家まで飛ぼうか?」
エリーがタブレットを取り出して転送アプリを開こうとしいるのを横目に見ていると遠くから何か黒いモノが飛んでくるのが見えた。

なんだアレは?
「エリー、ちょっと待て、何か飛んでくる。」
その黒い物体は、グングン近づいて来てその姿が明らかになってきた。

「すげー!ドラゴンだー!」
保田が興奮して叫んだ。
「アルヴィス?」
額に付けられた装飾は間違いなくアルヴィスだ。
でもその姿は、確かにアルヴィスなんだけど…その大きさは、前にムートリアで見たドラゴンよりも数段大きくみえる。

「アルヴィス!元気だったか?」
エリーが駆け寄って、差し出された首に抱きついた。
アルヴィスも嬉しそうに甘えているのがわかる。

「とりあえずシエラの所に行かないか?」
アルヴィスと抱擁しているエリーに声を掛けた。
「そうだな…でもどうしよう?流石にアルヴィスも一緒に転送するのは無理があるし…。そうだ、サトル!コレ使って3人でシエラの所に行ってくれ。私はアルヴィスと行く。」
そう言って、エリーはタブレットを差し出してきた。

「いや…コレでって…俺、魔力とか無いぞ…。」
「心配ない。その為の魔導具だ。魔力が無くても使える様になってる。行きたい場所を選択するだけだ。」
「転送ってなんだよ?」
やっぱり成瀬も気になるよなぁ…。
「まぁ、説明するより実際に体験した方が早い。保田もコッチに来いよ。」
アルヴィスに興味津々な保田にも声を掛けたが、なにやらエリーと話をしている様子だった。

「椎葉!俺、エリーちゃんと一緒にドラゴンに乗って行くわ。」
「え?本気か?」
「あぁ、ほら首の後ろに馬具みたいなの付いてるし、乗れるっぽいし。」
「エリー大丈夫なのか?」
ひとまずアルヴィスの所まで歩み寄ってエリーに確認してみた。

「うん。乗れる様に鞍を付けておいてもらったしな。まぁ二人乗りなんだけど…。」
「そうじゃなくて、振り落とされたりしないのか?」
「何を言ってる!アルヴィスがそんな事する訳ないじゃないか!」
いや…そーじゃなくて…しかしアルヴィスの事になると必死だな…。

「じゃシエラの所で落ち合おう。先に飛んでくれ。アルヴィスの飛ぶ姿を見てみたい。」
「わかった。じゃシエラの所で。」

エリーと保田は伏せをした状態のアルヴィスの首の付け根によじ登って鞍に着いた。

エリーが軽くアルヴィスの首筋を叩くと、ゆっくりと首を持ち上げ、そのまま上体を反らしながら立ち上がった。

首の付け根の位置と言っても、下から見上げるとかなり高い場所だと言うことがわかる。
ざっと5~6メールはあるだろう。
前にムートリアで見たドラゴンの屍とそんなに変わらない大きさみ見える。

その雄姿に見とれていると、アルヴィスは大きな翼をゆっくりと最大限に広げて、首を天空に向けた。
次の瞬間、アルヴィスは助走する事もなく、大きな翼を一度だけ羽ばたかせて、周囲に物凄い爆風と保田の絶叫を残して飛び去った。
その姿はみるみるうちに小さくなって、遠い空へと消えて行く。

「よし、俺たちも行くか。」
アルヴィスの飛翔を目の当たりにして、呆気にとられている成瀬に声を掛けて、俺は転送ボタンを押した。
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