異世界転生に憧れてたら向こうから来ちゃった件

明紅

文字の大きさ
17 / 21

第十六話

しおりを挟む
キャンプ当日。
宿題は、なんとか昨夜全部終わらせることができた。
エリーの宿題については、やはり難しい様でなんとか3分の1くらいまで終わらせたようだ。

とりあえず、今日の昼飯は各自弁当持参という事なのでキャンプ場で作る必要はない。
後の食材は昨日買っておいた。
今夜はバーベキューをする予定だ。
後は何か適当に買っといた。

買い出しした食材なんかを蒼ネエの車に積み込んで、いざ出発しようと車に乗り込んだ。

「ちゅーかさ…なんでその格好な訳?」
「いや…動きやすい格好でって言ったじゃないか…野営だし…。」
エリーは、こっちの世界に来た時の格好で車に乗っていた。
「その格好で皆の前に出るつもりか?それにちいさいのじゃなくて、デッカい杖まで持って来てるし…。」
「ダメなのか?」
「いや…まさか魔導士だとバレる事は無いだろうけど…完全に厨二扱いされるぞ…。」
「あの…この前から聞きたかったんだが…厨二とはなんなのだ?」
キャンプ場に向かう車の中で、厨二病について話してやった。

「な…な…私は…断じて妄想癖など無いぞ!」
「解ってるよ。解ってるけど、お前の素性を知らないヤツには厨二にしか見えないって言ってるんだ。」
「………てもこの服の方が動きやすいんだが…やはりだめか?」
「いや、無理にとは言わないけど…。」
結局そのままの格好でキャンプ場に到着した。

俺たちが着いてすぐ、佐波井の母親が残りの皆を連れて到着。
帰りはまた迎えに来てくれるそうだ。

「エリーちゃん可愛いぃ~!」
佐波井がエリーに纏わりはじめた。
「なになに?なんのコス?」
「コス?」
ほらツッこまれた。
「ほっといてやれよ、好きでやってんだから(笑)」
「やっぱりヨーロッパって日本のアニメとか流行ってるの?」
「???」
ヤバイ…フォローしないと…。
「流行ってるらしいぞ。それもきっと何かのキャラなんだろ。」
「そっかぁエリーちゃんはそーゆーの好きなんだねぇ。」
夏休み明けには、オタクキャラで定着してそうだな。

「クレアも好きだよね?」
「ん?あぁアニメは好きだよ。最近は深夜アニメが粒ぞろいだ!」
クレアってそーだったんだ。
特撮とかも好きなのかな?
後で話してみよう。

「保田も隠れオタだよね?」
「別に隠してるわけじゃないけど…まぁ俺もそっち寄りだな。」
なんだ皆、結構そーゆーの好きなんだな。
この歳でアニメとか特撮にハマってるのって俺くらいかと思ってた。

そんな話しで盛り上がってると蒼ネエが声を掛けてきた。
「えっと…とりあえず紹介してくらないかな?私だけ皆の事、知らないし…。」
「あぁそうだな、えーっと…。」
とりあえず青ネエを紹介して、皆もそれぞれ自己紹介をしていった。


§


キャンプ道具は成瀬と佐波井があらかた持っていた。
テントにバーベキューセットにその他諸々結構本格的なヤツまで持って来てるし…。
この二人って、さっき聞いたけど幼稚園からの幼馴染なんだそうだ。
家も近所らしい。

昼食の後、男3人はテントを張り…いや…変な意味じゃ無いぞ(汗)
女4人は夕食の下準備をする事になった。

テントはスゴく簡単に張れる様になっていて、あっという間に2張り出来上がった。
夕食の下準備も早々に終わった様で、材料なんかを日陰になったテント脇に持ってきた。
リクライニング式の折りたたみ椅子も人数分あったので、テントの前に適当に並べてた。

「あんた達、晩御飯までまだ時間あるから鍾乳洞にでも行ってきたら?私はここで留守番してるから。」
蒼ネエはリクライニング式の折りたたみ椅子の一つを陣取り、クーラーボックスからビールを出して飲みはじめてた。

「飲みたいだけやん。」
「いいじゃ無い。今日はもう運転しないんだから。それに、折角平尾台に来てるんだから、鍾乳洞くらい入ってこなきゃでしょ。」
「蒼葉さんは行かなくていいんですか?」
佐波井が申し訳なさそうに聞いた。
「いーのいーの、どうせ留守番もいるでしょう?それに私は疲れるのイヤだもん。」
「じゃ遠慮なく。」

よく考えたら蒼ネエを外せば丁度3組のペアになる訳だな。
自然と俺とエリー、成瀬と佐波井の幼馴染ペア、保田と八尋のペアになっていた。
それはそうと…。
「エリー…結局その格好のままなんだな。」
「いーじゃないか。似合ってるんだから。ねぇエリーちゃーん。」
成瀬はエリーに会えたのが嬉しいのか、それともキャンプで浮かれてるのか、妙にテンションが高い。

八尋と保田はなんとかってアニメの話しで盛り上がってる。
学校では一緒に居るところなんて見た事ないけど、この2人なかなかお似合いなんじゃないのかな?

キャンプ場のある平尾台。
山口県の秋吉台は有名だけど、同じカルスト台地なのにマイナーなんだよな。
ここにも当然、鍾乳洞が幾つかある。
キャンプ場から1キロくらい下った所に千仏鍾乳洞ってのがあって、鍾乳洞の途中からは地下水に浸りながら進めてアドベンチャー感満載なのだ。

鍾乳洞に入ると真夏とは思えない程の冷気が纏わり付いてくる。
「さ…寒いな…。」

奥へ進めば進む程、どんどん寒くなっていく。
そして途中から地下水の小川の中を進むんだけど…足が冷たいのなんのって…。
「サ…サトル…そんなに早く進まないでくれ…。あ…足場が悪くて…あっ…。」
入り口の係員に『これは預かっとくね。』と杖を奪われたエリーは最初のうちはブツブツと文句を言いながらついて来てたんだけど、途中から楽しくなって来たのか、変なテンションではしゃいでいた。
まぁ皆んな凄く楽しそうになってるしてるのは話し声で解る。
「わっちょ…!」
突然エリーが騒いだかと思った瞬間…。
バシャーン

俺を巻き込んでコケた…。
「うわぁ~!!冷てぇ~!!」
「す…す…すまない(汗)」
「何してくれてんだバカヤロー!」
「ごめん…本当にごめん。」
「ぅう…寒い…。もう出るぞ。」
4人に爆笑されながら、慌てて外に出た。


§


鍾乳洞の中を流れる水の冷たさはハンパなかった。
空気の冷たさなんて比べものにならない。
まるで氷水でも浴びせられた様に冷たい。
ずぶ濡れの状態で鍾乳洞から出て来た俺とエリーを見て、入り口のオッチャンがタオルを投げてくれた。
「早よ陽の当たる所に行っといで。」
「すいません。タオル後で返します。」
「えーよ、持っていきな。」
「あざーっす。」

「サトル大丈夫か?」
「早く戻って着替えないと風邪ひくぞ。」
成瀬と保田が半笑いで言ってくる。

「速水さんも早く着替えないと。」
「エリーちゃん、テントまで走ろうか?よーいドン!」
八尋は心配そうにエリーに声を掛けてるのに、佐波井は突然競争を持ちかけて走り出した。
でもここ…鍾乳洞の入り口辺りはとんでもない角度の坂になっている。
それも普通に歩くのも大変な角度だ。
それをやり過ごしても、キャンプ場まではずっと上り坂。
こんな坂走って登るなんで無理だ。
俺は早々に諦めて日向を選びながら歩いた。
意外にもエリーは佐波井について行っている。
ちょっと離れて保田も坂道を駆け上がっていた…流石スポーツ万能男だ。
走って行った3人を見送って、俺たちもゆっくりと徒歩でキャンプ場へ向かった。

「成瀬はさ、佐波井と付き合ってはないのか?」
「いやいや、ただの幼馴染だから。」
「ホントかなぁ?向こうはそう思って無いかもよ?」
俺の問いに八尋クレアも乗ってきた。

「そう言う八尋ちゃんも保田と良い雰囲気だったじゃん。」
「え?いや…ま…まともに話したの今日が初めてなんだけど…。」

まぁこのメンバー…いままでなんの接点もなかったもんな。
俺は成瀬と友達。
その成瀬は佐波井と幼馴染。
佐波井とクレアは友達同士…じゃなんで保田?
あいつだけ特に繋がりがないけど…まぁ佐波井が多分繋がってるんだろうな。
でもなんとなく、保田と八尋をくっつけるつもりでメンバー選んだのかな?って気がする。
多分クレアが保田のコト気になってんだろうな。
さっきの反応がそれを物語ってる。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。 唯一の武器は、腰につけた工具袋—— …って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!? 戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。 土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!? 「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」 今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY! 建築×育児×チート×ギャル “腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる! 腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

処理中です...