非オタな僕が勇者に転生したら、オタな彼女が賢者に転生してサポート万全だった。

ケイオチャ

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第一章 異世界を知る

何も知らない勇者と戸惑う賢者 〜初めての村と薬師のウワサの真偽〜

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 村の入り口まで来て、二人は立ち止まる。
 木の門には、スパーダビラジュと書かれている。
「ここが、レンのいる村だな。
 町と違って、落ち着いてて静かだな。」
 ユウは興味津々に村の様子を見ながら、
 感想を言う。
「そうね、とりあえず行きましょう。
 レンに会えたら、案内お願いできるかも。」
 ルカは村に早く入りたくて催促する。
                  ~スパーダビラジュ~
 店は最低限あり、高さは二階建てまでの建物が
 立ち並んでいる。
「レンーどこだー!?来たよー。」
 村を歩きながら、大声を上げるユウ。
 村の人々は、怪しんで見ている。
「ちょっと、そんな大声あげないで…
 めっちゃ怪しまれてる。」
 小声で止めるルカ。
「おっ、そうだな。ごめん…誰かに聞いてくる。
 すみません、レン・アポテカって人は
 どこにいますか?探してて。」
 さすがにまずいと思い、気まずい顔しつつ、
 男の村人に声をかけた。
「怪しいやつ、教えるわけがないだろう。
 何を企んでいるか知らないが、渡さないぞ。」
 睨んだ顔をして、教えてもらえない。
 他の人たちにも聞くが、同じような反応だった。
 子供たちは怖がって逃げる。
「全然教えてもらえない…。」
 しゅんとするユウ。
「それは…そうよね。」
 かける言葉が見当たらず、戸惑うルカ。
「おっ?なんでこんなに静かなんだ?」
 薬草取りから戻ったレンは状況に困惑する。
「レンさん、ダメです。出てきては。」
 村の娘が、レンを引っ張って隠れようとする。
「えっ?!ちょっとやめてくれ。」
 抵抗するレン。
「あっ!レンだー、やっと見つけたー!」
 すごい勢いで走って、飛び込むユウ。
「えっ、こっちに向かってきてる?!」
 思わず手を放し避ける村の娘。
「ちょっ!待て待てぶつか…(ドン!)
 わぁ痛えだろ!ユウ!急に飛び込むな。」
 うまく体勢を立て直せずにぶつかり、怒るレン。
「ちょっと…ごめんなさいレンくん。
 誤解があって、村の人たちに怪しまれて
 しまったの。解いて欲しい。」
 ユウを引き剥がしつつ、レンに事情を話すルカ。
「あぁ、それでこんなに静かだったのか。
 じゃあ村長の所に行って、伝えてもらうのが
 一番良いな。ついてこい。」
 体勢を立て直してパンパンと白衣についた砂埃を
 落とすと、村長の家に向かうレン。
「待ってください、レンさん。説明をして。
 どういう関係なのですか。」
 レンを隠れさせようとしていた村の娘が
 落ち着いたのか質問をする。
「村長に説明するから一緒に来るか?」
 歩きながら答えるレン。
「はい、分かりました。」
 少し納得のいかない顔をしつつ、
 了承する村の娘。
「ここが、村長の家だ…村長、用があってきた。
 紹介したい人がいるんだ。」
 トントンと扉を叩くと中から、鍵を開ける音が
 して、お年寄りが出てきて、
「ほう、レンではないか。中に入ると良い。
 ん、こやつらは怪しいものたちではないか。
 キアラもいるのか、説明を聞きにきたのか。」
 レンとキアラに対しては笑顔だったが、
 ユウとルカには睨みを聞かせて、警戒している。
「失礼します…(気まずい)。」
 ユウとルカは肩身が狭いと思いつつ、部屋に
 入る。
「村長、ユウは親友で、ルカはユウの仲間なんだ。
 大声出してたのは、俺に会いたくて…
 必死だったからで…悪い者たちではないから
 許して欲しい。」
 俺に会いたくて・・・の部分をなぜか恥ずかし
 そうにしつつ、説明をするレン。
「はい、僕はレンに会いたくて仕方なかったん
 です。すみませんでした。」
 全力で謝るユウ。
 (ユウはなんでこんなこっぱ恥ずかしいことを
 堂々と言えるんだ…嬉しいが。)
 レンは心の中でも恥ずかしがりつつ喜ぶ。
「私も仲間として大声で呼ぶ前に止められず
 ごめんなさい、配慮ができていませんでした。」
 (序盤からやらかしたわ、村について気になることは、たくさんあるのにー。でも怪しまれる
 ことを止められなかった責任はあるわ。)
 申し訳ない気持ちでいっぱいなルカ。
「ほう、そういうことじゃったか。
 何も聞かずに、怪しんでしまったわしらにも
 悪い所がある。すまない。
 わしが説明して誤解を解こう、レンも手伝って
 くれるか。」
「はい、村長。」
 村長は納得してくれ、村の人たちも誤解が
 解けて、歓迎してくれた。
 一通り済んだ後、村長の家に戻った。
「そうだ、自己紹介してなかったのう。
 わしは村長のエンツォ・スパーダじゃ。
 村長かエンツォ村長とよく呼ばれとる。
 キアラも自己紹介するのじゃ。」
 村長は一緒に来ていた村の娘を手招く。
「はい、おじいちゃん。
 私はキアラ・スパーダです。エンツォ村長の孫
 です。」
 キアラは笑顔で挨拶し、すぐに無表情になる。
 (嫌われてるのか。僕たち。)
「僕の名前はユウ・ブレイブです。
 勇者としてこの世界を救う使命を持ってます。」
 キアラの様子が気になりつつ、
 元気いっぱいに自己紹介をするユウ。
 (嫌われているわ。私たち。)
「私の名前はルカ・ピースです。
 賢者として勇者をサポートする役割を
 しています。」
 同じくキアラのことが気になりつつ、笑顔で
 自己紹介するルカ。
「勇者と賢者じゃと、もしや伝承の…いやしかし。」
 職業にひっかかる部分があるのか、考え込んでしまった。
「嘘ついてませんか。」
 ありえないという顔をするキアラ。
「ユウが嘘つくわけないだろ。超正直者なんだからよ。ルカもそういうの嫌いだしな。」
 キアラの言葉に怒って反論する。
「ごめんなさい、レンさん。でももう勇者様と
 賢者様はこの世界に存在しているから、
 二人目がいるとはおもえないのです。」
 疑問な顔をして言うキアラ。
「他にも勇者と賢者が!いるの?!」
          いるのか?!」
 レンとルカは驚き、戸惑いが隠せなかった。
「へぇー他にもいるんだね。知らなかったよ。」
 異世界知識のないユウは感心している。
「はい、代々勇者様と賢者様をやられている
 方々がいるのです。会ったことは一度だけですが、勇者様が女性で、賢者様が男性と性別は逆
 でしたが…伝承とはなんですか?
 おじいちゃん、おじいちゃん?」
 解説をした後、村長に伝承について聞こうと
 村長の方を向くキアラ。
 スピー、スピーと寝ている村長。
「おじいちゃん!」
 大声をあげるキアラ。
「ぽっ!なんじゃ大声を出して。寝ていたよう
 じゃの、伝承について話そう。」
 特に気にしてない村長。
「お願いします。はぁ、いつもマイペースだね。」
 少し愚痴をもらすキアラ。
「『この村に災い起こる時、異界から舞い降りし
 二人の新たな勇気ある者と知のある者現る
 だろう。そして伝説の剣は勇気ある者が手にし、
 災いをうちやぶり、平穏がおとずれよう。』と 
 いった感じじゃな。」
 伝承の部分は別人のようなはっきりした口調で
 語り、その後はふ抜けて元の村長に戻る。
「僕とルカが見事に当てはまってます。
 でも、災いってどんなことが起きるんですか?」
 ユウは考えながら、質問する。
「それは分からん。じゃが剣の場所なら知っとる。
 近くに洞窟があってなぁ、そこの祠の近くに
 あるんじゃ。」
「おお~、行ってみたいです。」
 キラキラな目をするユウ。
「私も行ってみたいです。」
 剣が見たくて仕方ないルカ。
「それは好きにいくのじゃ。キアラ、案内を
 たのんじゃぞ。今日は遅い。近くの宿に泊まる
 のじゃ。」
「私があそこに案内を…分かりました。
 宿は家を出て、目の前にあります。」
 呑気な村長と不満そうなキアラ。
「俺が送るぜ。ありがとうございます村長。
 キアラもありがとな。行くぞ、ユウ、ルカ。」
 二人を連れて、礼を言い、家をでるレン。
 二人も礼をして、家をでた。
「いえ、レンさん。」
 笑顔になるキアラ。
 宿の前まできた三人。
「レン、キアラさんと仲良いだな。
 新しい友達できてよかったな。」
 素直に喜び、笑顔で話すユウ。
「あぁ、異世界転生した時に最初に出会ったのが、
 キアラだったからな。色々教えてもらった。」
 少し昔を思い出して、浸るレン。
「そう、だからキアラはレンへの思い入れが
 他の村人たちよりも強いわけね。
 あっそうだわ。レンくんになんでも病気にあう
 薬を作れるって噂がたってるの。本当のこと?」
 思い出したように聞くルカ。 
「噂?ほぼ本当だな、材料さえあれば薬はいくら
 でも作れるし、新たなレシピも生み出せる。
 だが、自分の知識の範囲が狭いからなんでも
 は難しいな。」
 初耳の顔しつつ、冷静に答えるレン。
「すごいな、レン。僕も頑張ってスキルを
 強くするぞー。」
 レンの能力を聞いて、やる気が出るユウ。
「おっ…おう。」
 照れるレン。
「そろそろ、いきましょ。
 明日、剣を探しに行くんだから。」
 剣を手にする本人よりも明らかに楽しみに
 しているルカ。
「はーい、また明日なレン、おやすみ。」
 笑顔で宿に入るユウ。
「また明日、ユウ。」
 同じく笑顔で見送るレン。
 明日に備えて、三人は早めに眠りにつくの
 だった。





















































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