unseen hero 〜魔法が使えない異能者と魔術師の戦いに目の見えない魔術師が戦いに終止符を打つ話。

雷出午吉

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第一章 運命

第三話 ヒーローは遅れてやってくる

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「ぐあああああ。何だよ、もう。誰だよ!僕の手を切り落としたのは!!」
怒りで満ちた感情が感じられる口振りだ。
私は目の前の少年に声をかける。
「ふぅ、間一髪だね。君、大丈夫?」
少年は「え?」と、この状況を認識できていないようだった。
「あ、ありが、とう?」
そんな疑問形且つ義務的な感謝貰っても嬉しくない。
そう突っ込んでやりたかったが、そんな気持ちを押し殺して目の前の男に話しかける。
「最近はケイパブルの異能者の質も上がってきているんだって?元々三分の一位の勢力が負けていたソーサーズが、三分の二以上も負ける事態に陥るわけだ。」
「・・・」
何だ、その目は。
そう思わせるような少年の目つきに、思わずハテナが頭を浮遊する。
いけない。
また少年の方に目が行ってしまった。
私は目の前の男の方に視線を戻して言葉を続ける。
「さてと、あんたがこの騒動のトップであってるよね?」
「うん、そうだよ。」
「一人二人でここまで出来るとは凄いね。かなり腕をのかな?」
「そう言ってもらえて光栄だね。しっかし、残念。僕には沢山の部下たちが居るんだ。」
その言葉の直後、目の前に何十人という数のケイパブルの集団が現れたのだ。
ここまでいるとは。
流石に計算外だ。
まぁ、私には関係ない。
弱い奴らが群れたところで同じだ。
「まぁ、これで君たちの勝機は潰えたね。」
男は笑いを隠せないのか、少し口角を上げて言う。
私は気にせずにその男に確認をする。
「ねぇ、確認だけどさ。」
「何?」
「ここに居る人達全員ケイパブルの連中だよね。」
「そうだけど、何か問題でも?」
「そっか、ならいいや。」
「?」
男は不思議そうな顔をしていた。
私は一瞬だけかなりの魔力を溜め込み、言葉を吐く。
「なら、死んで。」

       ※※※

「ふぅ~。こんなものかなっ。」
「一体全体、何が起こっている?」
一瞬。
その一瞬が勝敗を分けた。
あれほどいたケイパブルの連中を瞬殺したのだ。
俺は、唖然としていた。
目の前の女性と思わしき人は、運動後のストレッチの如く背伸びをしていた。
「まったくもって、人騒がせな連中だね。」
「あんた。今さっき、何したんだ?」
「まぁ、ちょっとだけ上級魔法を使わせて貰っただけだよ。そんなことはどうでもいいから。君、怪我大丈夫?病院に行く事をお勧めしておくよ。私は治癒魔法も覚えているけど、治癒は現代の科学技術に任せた方が良いからね。」
それだけを俺に言って、女性は立ち去ろうとする。
その瞬間。
「ちょっと待ってくれ!!」
「ん~?どうしたの?君?」
思わず声に出してしまった。
「俺を、あんたの仲間に入れてくれ!!」
女性は呆れた様子で、「何馬鹿な事言ってるんだい?君はソーサーズの連中だろう。」
しかし、俺はそれを否定する。
「俺は、ソーサーズに入っていない。」
女性は目を丸くする。
「え、ええ!」
俺がソーサーズの連中だと勘違いしたのだろう。
「少年。それなのに、ケイパブルに喧嘩売ったの?」
「おれは、譲れないものがあるんだよ!」
その言葉を発した瞬間、俺は視界が徐々にぼやけてきた。
嗚呼。
俺、気を失うんだな。
そう悟った俺は、その女性にぶつけたい事をぶつけた。
「俺を、あんたの、仲間に、してくれ。」
そうして、俺は体力の限界を迎えた。
俺は、気を失う前に目の前の女性が俺をおぶっていた様な気がした。
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