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―― 天神様の御用人 ~心霊スポット連絡帳~ ――
【016】ヒミツのお話
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そのまま天神様のもとへと向かうと、本日も四番目のブランコに天神様は座っていた。三人の姿を見た天神様が顔をあげる。そして細い目をさらに細めて笑う。
「よくつとめをはたしてくれているな」
「これでした!」
スミレが毛糸で出来た小さな人形を差し出すと、ゆっくりと天神様がうなずく。まんぞくそうに天神様が毛糸の人形をなでたときだった。
「天神様、少し話がしたい」
和成がふいにそう言った。おどろいてスミレが顔を向けると、真剣な表情をしている和成が目にはいる。だがしせんが合うと、和成が笑った。
「ちょっと雑談したいだけだから、お前は先に帰っていてくれ。龍樹、責任をもって送れよ」
「……送るのはもちろんかまいませんが、一体どんな?」
「俺と天神様だけのヒミツだ」
和成の声がひびきおわると、天神様がうなずいた。
「いいだろう。龍樹、スミレ、先に帰るといい」
その言葉に、龍樹とスミレは顔を見合わせる。スミレは和成の話が気になった。
「行こう」
けれど龍樹がそう言ったので、大人しく帰ることに決める。
「お兄ちゃんも早く帰ってきてね」
「おう」
こうしてスミレは龍樹とともに神社のとなりの公園を出た。
歩きながらスミレが言う。
「次の心霊スポットも早く見つかるといいね」
「そうだな。ただ俺にできることは、お札の用意くらいだからな。もっとできることをさがしたい」
「龍樹くんがいなかったら、私だけじゃ無理だし、お兄ちゃんと二人でも無理だと思うよ。今日だって人形の場所を見つけてくれたじゃない」
そんなやりとりをしながら大きな道路に出たときだった。
「あれ? スミレ!?」
見ればそこには南と、春崎優香という二年生の先輩が立っていた。
スミレが立ち止まると、南がかけよってくる。そして龍樹と南をこうごに見ると、にやっと笑った。ごかいされたと直感し、慌ててスミレは声を上げる。
「ち、ちがうから!」
「まだなにも言ってないんですけどー?」
南はそう言ってから、スミレの耳元で小声を出す。
「今見たデートのことはヒミツにしておいてあげるから、あとでじっくり聞かせてもらうからね」
スミレは言葉につまる。龍樹はとなりで立っているだけで、学校でいつも見るとおり、冷たい無表情だ。龍樹に助けを求めてもむだだろう。
「じゃあね」
南はそう言ってから優香に振り返る。
「優香先ぱい、行こう!」
その声にスミレも優香を見ると、優香はじっとスミレを見ていた。口元は笑っているのだが、どことなく目がこわい。スミレはにらまれているような気持ちになった。だが、すぐにまばたきをしたあとの優香の目は優しくかわる。
「ええ。またね、スミレさんも」
こうして二人が歩いていくのを、スミレは見送る。
優香というのは、学内でも評判の美人だ。優等生を絵にかいたように勉強も運動もできて、あとはいにも優しい。女子からも男子からもあこがれられている。龍樹が笑ったら、きっと近いものがあるだろう。
優香は和成と同じクラスなので、少しだけスミレも知っていた。
「スミレ、もう大丈夫か? 行こう」
「うん」
龍樹にうながされて、スミレはふたたび歩きはじめた。
このようにして先に帰宅したスミレは、本日は両親が不在だったことを思い出した。
たまには自分が料理をしようと、かに玉を作る準備をする。
そうして待っていると、和成が帰ってきた。
「ただいま」
「お兄ちゃんおかえり」
リビングに入ってきた和成に顔を向ける。すると和成がソファに座ったので、牛乳をコップにそそいで、スミレは持っていった。
「ん。悪いな」
「ううん。それよりお話ってなんだったの?」
「別に? 雑談だって言っただろ」
和成はそう言うと、受け取った牛乳を飲みほした。うなずきながらそばのソファに座り、スミレは続けて問いかける。
「そういえば、ハサミはどうしたの?」
「ああ、俺とお前の名前が書いてあったやつか?」
「うん」
「――天神様に処分してもらったよ」
もしかして雑談とはその話だったのだろうかと、スミレは考えた。
「今日の飯はどうする?」
「かに玉の用意をしてたの」
「おー。お前が作るのか。こがすなよ?」
「だ、大丈夫だよ!」
たしかに和成の方が料理はうまいが、別にスミレも料理が苦手というわけではない。
実際、この日完成したかに玉はとてもおいしかった。
「よくつとめをはたしてくれているな」
「これでした!」
スミレが毛糸で出来た小さな人形を差し出すと、ゆっくりと天神様がうなずく。まんぞくそうに天神様が毛糸の人形をなでたときだった。
「天神様、少し話がしたい」
和成がふいにそう言った。おどろいてスミレが顔を向けると、真剣な表情をしている和成が目にはいる。だがしせんが合うと、和成が笑った。
「ちょっと雑談したいだけだから、お前は先に帰っていてくれ。龍樹、責任をもって送れよ」
「……送るのはもちろんかまいませんが、一体どんな?」
「俺と天神様だけのヒミツだ」
和成の声がひびきおわると、天神様がうなずいた。
「いいだろう。龍樹、スミレ、先に帰るといい」
その言葉に、龍樹とスミレは顔を見合わせる。スミレは和成の話が気になった。
「行こう」
けれど龍樹がそう言ったので、大人しく帰ることに決める。
「お兄ちゃんも早く帰ってきてね」
「おう」
こうしてスミレは龍樹とともに神社のとなりの公園を出た。
歩きながらスミレが言う。
「次の心霊スポットも早く見つかるといいね」
「そうだな。ただ俺にできることは、お札の用意くらいだからな。もっとできることをさがしたい」
「龍樹くんがいなかったら、私だけじゃ無理だし、お兄ちゃんと二人でも無理だと思うよ。今日だって人形の場所を見つけてくれたじゃない」
そんなやりとりをしながら大きな道路に出たときだった。
「あれ? スミレ!?」
見ればそこには南と、春崎優香という二年生の先輩が立っていた。
スミレが立ち止まると、南がかけよってくる。そして龍樹と南をこうごに見ると、にやっと笑った。ごかいされたと直感し、慌ててスミレは声を上げる。
「ち、ちがうから!」
「まだなにも言ってないんですけどー?」
南はそう言ってから、スミレの耳元で小声を出す。
「今見たデートのことはヒミツにしておいてあげるから、あとでじっくり聞かせてもらうからね」
スミレは言葉につまる。龍樹はとなりで立っているだけで、学校でいつも見るとおり、冷たい無表情だ。龍樹に助けを求めてもむだだろう。
「じゃあね」
南はそう言ってから優香に振り返る。
「優香先ぱい、行こう!」
その声にスミレも優香を見ると、優香はじっとスミレを見ていた。口元は笑っているのだが、どことなく目がこわい。スミレはにらまれているような気持ちになった。だが、すぐにまばたきをしたあとの優香の目は優しくかわる。
「ええ。またね、スミレさんも」
こうして二人が歩いていくのを、スミレは見送る。
優香というのは、学内でも評判の美人だ。優等生を絵にかいたように勉強も運動もできて、あとはいにも優しい。女子からも男子からもあこがれられている。龍樹が笑ったら、きっと近いものがあるだろう。
優香は和成と同じクラスなので、少しだけスミレも知っていた。
「スミレ、もう大丈夫か? 行こう」
「うん」
龍樹にうながされて、スミレはふたたび歩きはじめた。
このようにして先に帰宅したスミレは、本日は両親が不在だったことを思い出した。
たまには自分が料理をしようと、かに玉を作る準備をする。
そうして待っていると、和成が帰ってきた。
「ただいま」
「お兄ちゃんおかえり」
リビングに入ってきた和成に顔を向ける。すると和成がソファに座ったので、牛乳をコップにそそいで、スミレは持っていった。
「ん。悪いな」
「ううん。それよりお話ってなんだったの?」
「別に? 雑談だって言っただろ」
和成はそう言うと、受け取った牛乳を飲みほした。うなずきながらそばのソファに座り、スミレは続けて問いかける。
「そういえば、ハサミはどうしたの?」
「ああ、俺とお前の名前が書いてあったやつか?」
「うん」
「――天神様に処分してもらったよ」
もしかして雑談とはその話だったのだろうかと、スミレは考えた。
「今日の飯はどうする?」
「かに玉の用意をしてたの」
「おー。お前が作るのか。こがすなよ?」
「だ、大丈夫だよ!」
たしかに和成の方が料理はうまいが、別にスミレも料理が苦手というわけではない。
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