天神様の御用人 ~心霊スポット連絡帳~

水鳴諒

文字の大きさ
16 / 55
―― 天神様の御用人 ~心霊スポット連絡帳~ ――

【016】ヒミツのお話

しおりを挟む
 そのまま天神様のもとへと向かうと、本日も四番目のブランコに天神様は座っていた。三人の姿を見た天神様が顔をあげる。そして細い目をさらに細めて笑う。

「よくつとめをはたしてくれているな」
「これでした!」

 スミレが毛糸で出来た小さな人形を差し出すと、ゆっくりと天神様がうなずく。まんぞくそうに天神様が毛糸の人形をなでたときだった。

「天神様、少し話がしたい」

 和成がふいにそう言った。おどろいてスミレが顔を向けると、真剣な表情をしている和成が目にはいる。だがしせんが合うと、和成が笑った。

「ちょっと雑談したいだけだから、お前は先に帰っていてくれ。龍樹、責任をもって送れよ」
「……送るのはもちろんかまいませんが、一体どんな?」
「俺と天神様だけのヒミツだ」

 和成の声がひびきおわると、天神様がうなずいた。

「いいだろう。龍樹、スミレ、先に帰るといい」

 その言葉に、龍樹とスミレは顔を見合わせる。スミレは和成の話が気になった。

「行こう」

 けれど龍樹がそう言ったので、大人しく帰ることに決める。

「お兄ちゃんも早く帰ってきてね」
「おう」

 こうしてスミレは龍樹とともに神社のとなりの公園を出た。
 歩きながらスミレが言う。

「次の心霊スポットも早く見つかるといいね」
「そうだな。ただ俺にできることは、お札の用意くらいだからな。もっとできることをさがしたい」
「龍樹くんがいなかったら、私だけじゃ無理だし、お兄ちゃんと二人でも無理だと思うよ。今日だって人形の場所を見つけてくれたじゃない」

 そんなやりとりをしながら大きな道路に出たときだった。

「あれ? スミレ!?」

 見ればそこには南と、春崎優香はるさきゆうかという二年生の先輩が立っていた。
 スミレが立ち止まると、南がかけよってくる。そして龍樹と南をこうごに見ると、にやっと笑った。ごかいされたと直感し、慌ててスミレは声を上げる。

「ち、ちがうから!」
「まだなにも言ってないんですけどー?」

 南はそう言ってから、スミレの耳元で小声を出す。

「今見たデートのことはヒミツにしておいてあげるから、あとでじっくり聞かせてもらうからね」

 スミレは言葉につまる。龍樹はとなりで立っているだけで、学校でいつも見るとおり、冷たい無表情だ。龍樹に助けを求めてもむだだろう。

「じゃあね」

 南はそう言ってから優香に振り返る。

「優香先ぱい、行こう!」

 その声にスミレも優香を見ると、優香はじっとスミレを見ていた。口元は笑っているのだが、どことなく目がこわい。スミレはにらまれているような気持ちになった。だが、すぐにまばたきをしたあとの優香の目は優しくかわる。

「ええ。またね、スミレさんも」

 こうして二人が歩いていくのを、スミレは見送る。
 優香というのは、学内でも評判の美人だ。優等生を絵にかいたように勉強も運動もできて、あとはいにも優しい。女子からも男子からもあこがれられている。龍樹が笑ったら、きっと近いものがあるだろう。

 優香は和成と同じクラスなので、少しだけスミレも知っていた。

「スミレ、もう大丈夫か? 行こう」
「うん」

 龍樹にうながされて、スミレはふたたび歩きはじめた。



 このようにして先に帰宅したスミレは、本日は両親が不在ふざいだったことを思い出した。

 たまには自分が料理をしようと、かに玉を作る準備をする。
 そうして待っていると、和成が帰ってきた。

「ただいま」
「お兄ちゃんおかえり」

 リビングに入ってきた和成に顔を向ける。すると和成がソファに座ったので、牛乳をコップにそそいで、スミレは持っていった。

「ん。悪いな」
「ううん。それよりお話ってなんだったの?」
「別に? 雑談だって言っただろ」

 和成はそう言うと、受け取った牛乳を飲みほした。うなずきながらそばのソファに座り、スミレは続けて問いかける。

「そういえば、ハサミはどうしたの?」
「ああ、俺とお前の名前が書いてあったやつか?」
「うん」
「――天神様に処分しょぶんしてもらったよ」

 もしかして雑談とはその話だったのだろうかと、スミレは考えた。

「今日の飯はどうする?」
「かに玉の用意をしてたの」
「おー。お前が作るのか。こがすなよ?」
「だ、大丈夫だよ!」

 たしかに和成の方が料理はうまいが、別にスミレも料理が苦手というわけではない。

 実際、この日完成したかに玉はとてもおいしかった。



しおりを挟む
感想 53

あなたにおすすめの小説

今、この瞬間を走りゆく

佐々森りろ
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞 奨励賞】  皆様読んでくださり、応援、投票ありがとうございました!  小学校五年生の涼暮ミナは、父の知り合いの詩人・松風洋さんの住む東北に夏休みを利用して東京からやってきた。同い年の洋さんの孫のキカと、その友達ハヅキとアオイと仲良くなる。洋さんが初めて書いた物語を読ませてもらったミナは、みんなでその小説の通りに街を巡り、その中でそれぞれが抱いている見えない未来への不安や、過去の悲しみ、現実の自分と向き合っていく。  「時あかり、青嵐が吹いたら、一気に走り出せ」  合言葉を言いながら、もう使われていない古い鉄橋の上を走り抜ける覚悟を決めるが──  ひと夏の冒険ファンタジー

未来スコープ  ―この学園、裏ありすぎなんですけど!? ―

米田悠由
児童書・童話
「やばっ!これ、やっぱ未来見れるんだ!」 平凡な女子高生・白石藍が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。 それは、未来を“見る”だけでなく、“触れたものの行く末を映す”装置だった。 好奇心旺盛な藍は、未来スコープを通して、学園に潜む都市伝説や不可解な出来事の真相に迫っていく。 旧校舎の謎、転校生・蓮の正体、そして学園の奥深くに潜む秘密。 見えた未来が、藍たちの運命を大きく揺るがしていく。 未来スコープが映し出すのは、甘く切ないだけではない未来。 誰かを信じる気持ち、誰かを疑う勇気、そして真実を暴く覚悟。 藍は「信じるとはどういうことか」を問われていく。 この物語は、好奇心と正義感、友情と疑念の狭間で揺れながら、自分の軸を見つけていく少女の記録です。 感情の揺らぎと、未来への探究心が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第3作。 読後、きっと「誰かを信じるとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。

その付喪神、鑑定します!

陽炎氷柱
児童書・童話
【第1回きずな児童書大賞、優秀賞受賞】 『彼女の”みる目”に間違いはない』 七瀬雪乃は、骨董品が大好きな女の子。でも、生まれたときから”物”に宿る付喪神の存在を見ることができたせいで、小学校ではいじめられていた。付喪神は大好きだけど、普通の友達も欲しい雪乃は遠い私立中学校に入ることに。 今度こそ普通に生活をしようと決めたのに、入学目前でトラブルに巻き込まれて”力”を使ってしまった。しかもよりによって助けた男の子たちが御曹司で学校の有名人! 普通の生活を送りたい雪乃はこれ以上関わりたくなかったのに、彼らに学校で呼び出されてしまう。 「俺たちが信頼できるのは君しかいない」って、私の”力”で大切な物を探すの!?

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

あやかし達の送り屋をやっています! 〜正反対な狐のあやかし双子との出会い〜

巴藍
児童書・童話
*第2回きずな児童書大賞にて、ファンタジー賞を受賞しました。 みんなには見えない不思議なナニカが見える、小学五年生の長月結花。 ナゾの黒い影に付きまとわれたり、毎日不思議なナニカに怖い思いをしながら過ごしていた。 ある日、結花のクラスにイケメン双子の転校生がやってくる。 イケメン双子の転校生には秘密があって、なんと二人は狐の『あやかし』……!? とあるハプニングから、二人の『送り屋』のお仕事を手伝うことになり、結花には特別な力があることも発覚する。 イケメン双子の烈央と星守と共に、結花は沢山のあやかしと関わることに。 凶暴化した怪異と戦ったり、神様と人間の繋がりを感じたり。 そんな不思議なナニカ──あやかしが見えることによって、仲違いをしてしまった友達との仲直りに奮闘したり。 一人の女の子が、イケメン双子や周りの友達と頑張るおはなしです。 *2024.8/30、完結しました!

水色オオカミのルク

月芝
児童書・童話
雷鳴とどろく、激しい雨がやんだ。 雲のあいだから光が差し込んでくる。 天から地上へとのびた光の筋が、まるで階段のよう。 するとその光の階段を、シュタシュタと風のような速さにて、駆け降りてくる何者かの姿が! それは冬の澄んだ青空のような色をしたオオカミの子どもでした。 天の国より地の国へと降り立った、水色オオカミのルク。 これは多くの出会いと別れ、ふしぎな冒険をくりかえし、成長して、やがて伝説となる一頭のオオカミの物語。

だからウサギは恋をした

東 里胡
児童書・童話
第2回きずな児童書大賞奨励賞受賞 鈴城学園中等部生徒会書記となった一年生の卯依(うい)は、元気印のツインテールが特徴の通称「うさぎちゃん」 入学式の日、生徒会長・相原 愁(あいはら しゅう)に恋をしてから毎日のように「好きです」とアタックしている彼女は「会長大好きうさぎちゃん」として全校生徒に認識されていた。 困惑し塩対応をする会長だったが、うさぎの悲しい過去を知る。 自分の過去と向き合うことになったうさぎを会長が後押ししてくれるが、こんがらがった恋模様が二人を遠ざけて――。 ※これは純度100パーセントなラブコメであり、決してふざけてはおりません!(多分)

処理中です...