まちがいさがし〜愛されているのは誰？〜

1章 〜異世界編〜

変われないもの

　走り出した先の女性は慈悲深い笑みを浮かべていて、
　よりいっそう、愛しさがこみ上げてくる。
　なぜだかとても懐かしく感じた。

　あぁ、やっと会えた。
　私が会いたくて会いたくてたまらなかった人。
　この想いをあの人に「うわっ」…
　
　おもいっきり、服を引っ張られた。
　ドラゴンが私を無理やり引き止めたのだ。
　気分が急に落ち着いた。

　何すんだ、という目をドラゴンに向ける。
　何故か呆れた目を向けられた。

　…げせぬ。

　「お前なぁ、急に走り出したら驚くだろう。一応、我はあの精霊の守護者なのだから危険からは遠ざけないといけないしな。あやつはそんなのがいなくても全然大丈夫だがな。ははっ、」
　　ドラゴンが乾いた笑みを浮かべた。
　
　何を言ってるんだ、あの儚い系美人がそんなわけないだろう。
　そう、いまだ微笑んでいる女性を見てドラゴンにそう言った。

　「いや、あいつすごい破壊神だぞ。
　　見た目だけだよ儚いのは、 中身は「何言おうとしてんねん」…すみません。」

　なんか、すごい野太い声が聞こえた。
　…気のせいだ、ぅん空耳だよね…

「いや、空耳じゃないぞ。」
　いや、なんで喋ってないのに、とそう言おうとしたら、

「いや、顔にまんま出てるぞ。」
　
　また、読まれた…

　う、異世界に来てから気が緩んだのかな

「はぁ、何してるのよ。」

　美女が喋った。

　「蓮香、こっちにきなさい。」
　
　あぁ、
　　　　…涙が頰をつたう。

　名前を、呼ばれた。私の、名前を…
　やっと呼んでくれた。
　あの日から消えてしまった私が、

　再び、…


　涙が止まらない。

　…生きても、いいのだと言われた気がする。
　あなたが生きていてよかったと、

　
　
　…存在を認められた気がする。
　あなたはあなただけなのだと、

　嗚咽がまじる。

　ぐすっ、

　　　うぁ、
　
　　　　

　　　　　　「ゔっわぁーーーーーー」
　
　安堵と歓喜を含む悲痛な叫びが洞窟の中にこだました。

　
　少女は崩れ落ちた。

　美女のしょうがないなぁ、という優しい、優しい微笑みをみて。

　私を、本当に見てくれる人だと心から感じたから…

　そんな人はもう二度現れないのだと知っていたから、

　両親も婚約者ですら、みない、私を…

　本当の私はとっくに消えたと思っていたから、…



　本当は、少し期待していた。

　ステータスに本当の私のことが書いてあったから。

　それでもやっぱり、今まで縛りつけていた鎖は簡単には解けてくれなくて、

　自分から言うなんてことはできなくて、

　それが大きな罪な気がして



　あぁ、許されたのか私は…

　そう思うと、同時に嫌悪感が自分に向けられた気がした。

　本当に、それでいいのかと、

瞬間、涙も止まり

　「ごめん、なさい、…
ごめん
　　なさい、なさい、ごめんなさい ごめんなさい　ごめんなさい　ごめんなさいごめんなさい　　ごめんなさい　ごめんなさい　ごめんなさい ごめんなさい　ごめんなさい　ごめんなさい　ごめんなさい　　ごめんなさい　ごめんなさいっ！」


　　

　謝罪の言葉が口からあふれ出す。
　
　止まらない、
　あぁ、やっぱりだめだ…変われないよ

　罪なんだよこれは、
　
　そんな簡単に…許されていいものではないのだ。



　…またここでも自分を偽らなければならないんだ

　もういっそ、自分の中から私をけしてしまおうか

　そう、他人事のように思った、

　　　その時、

　　　　　　　　…抱きしめられた。

　ここにあなたはいるのだと、消えてはいないのだと思わせるほど強く、ぎゅっと…