桜の木の下でイケメンとモブは何をするか。

本編

22.

　女の先輩は見せつけるかのように先輩に豊満な胸を押し付け、勝ち誇ったかのような顔をこちらに向けてきた。

　ああ、そうですか。先輩ぐらいの顔面偏差値高のイケメンは、女の先輩ほどの美女でなくては駄目だということですね。
　はい。わかっていますよ、もちろんです。

　だけどひとつ言わせてもらいたいのですけど、私その先輩に一目惚れもしていないし、アタックするきもさらさらないのですよ。ええ。

　しらけた目を向けてしまうのは許してほしい。勝手に、先輩のチョメチョメ仲間になりたい一人だと思われていたなんて心外だ。

　「あなた見たことのない顔ね。特待生か、どこぞの下級の家でしょ」

　あぁ、そっちか。
　そういえば、先輩いいとこのボンボンだったね。
　失念してた。

　あれは別に胸を押しつけていた訳ではなかったのか。でも、完全に当たっているからこの先輩もしかして天然なのかな。
　キツイ顔に似合わず、ギャップ萌えだね。

「そうですね。私は特待生ですが。それが何か」

「はっ、ただの庶民か」

　先輩は鼻で笑い、嘲るようにこちらを見てきた。

　あっ、全然そのまんまでしたね。ギャップ萌えとか微塵も感じないです。

　そういえば顔ばっかり注視していたけど、普通にこの人ここで先輩とチョメチョメしようとしてたんだった。
　いやぁ、うっかり。
　私が、テヘを先輩らにお見舞いすると絵面がどぎつくなるし、主に私の心が痛いのでここはカットします。

　ちなみに、この人思いっきり毒を吐きながら、先輩に胸をギュウギュウ押しつけています。

　好きな人の前でくらい、可愛いところ見せたらどうなのかね。
　それとも、それほどまでにこの学校では身分差が激しいのかな。この光景が普通に思えるほど、家格で全て成り立っているのか。
　予想はしていたけれど、今日の集会で一応理事長が家格に関係なく学校生活を送るように話していたのだから上辺くらい取り繕ったほうがいいと思うのだけど。

　「なら、さっさとここから出ていきなさい」

　この人、さっきから凄く偉そうだ。きっとこの人の家格高いんだろうね。
　家格を重視しているのならば、自分より家格が高い人の前でその態度はどうかと思うところだけど。

　「いやです。」

　「はぁ？貴方言っている意味分かっている？わたしがお父様に言えば貴方の家なんてすぐに路頭に迷うわよ」

　「脅しとは、物騒ですね」

　「脅しじゃないわよ。親切な忠告よ。これからからここで学園生活を送るのだったら覚えておくことね。自分の身の程をわきまえるということをね」