97 / 121
番外編③
10
しおりを挟む
「俺が高一になったばかりの春。兄さんが彼女を家に連れてきたんだ。親に紹介するためにね。あの人を知ったのはそれが最初」
ベッドに並んで座る二人。俯きながら話す優斗の横顔を見ながら、璃空は黙って耳を傾けている。
「道や家の中で会っても、挨拶を交わすぐらいだった。でも、半年ぐらい経ったころだったかな。親が旅行で家にいないときに、兄さんがあの人を家に泊めたんだけど……その日の夜中。自室で違和感に目を覚ますと、手を縛られていて」
唐突な展開に、璃空は「縛られ?」と眉を潜めた。
「そう。驚いて声を上げようとしたらお腹の上に乗ったあの人に口を塞がれて。気持ちいいことしたくないかって尋ねられたかと思ったら、ズボンと下着を下げられて」
璃空はぞっとした。優斗は淡々と話してはいるが。それは、どう考えても。
「……犯罪じゃん」
「そうだね。まあ足は自由に動かせたから蹴飛ばせば良かったのかもしれないけど……セックスに対する好奇心と、兄さんに対するあてつけみたいな感覚でずるずると流されるままという流れ……かな」
後半にいくにつれ、気まずさから優斗の声が段々小さくなっていく。
「好奇心ですか」と、何故か敬語の璃空。優斗は「いや……うん」と曖昧な返答しか出来ない。
「お兄さんに対するあてつけって?」
優斗は束の間黙った。璃空は弟と仲が良い。だからこそ知られたくなかったが、こうなってしまった以上、全てを話すのが賢明だろう。
「……兄さんには、昔から嫌われていて。小さい頃は好かれようと努力したこともあったんだけど、馬鹿らしくなってやめたんだ。その反動というか」
「そう、なんだ」
しん。
沈黙が部屋を満たす。
優斗は俯く璃空に手を伸ばしかけたが、璃空が「優斗が」と呟いたので止めた。
「ほぼ犯罪の流れから、優斗がどこらへんで佳菜子さんを好きになったのか、謎なんだけど」
優斗は肩を落とした。
──まだそこを疑われていたとは。
「……好きになったことなんてないよ。何度も言うけど、俺の初恋は璃空で、璃空しか好きになったことはない」
じと。
璃空が疑いの眼差しを向ける。
他のことならこちらが心配になるぐらい素直に信じるのに、女性のことになると璃空は疑い深くなる。
ベッドに並んで座る二人。俯きながら話す優斗の横顔を見ながら、璃空は黙って耳を傾けている。
「道や家の中で会っても、挨拶を交わすぐらいだった。でも、半年ぐらい経ったころだったかな。親が旅行で家にいないときに、兄さんがあの人を家に泊めたんだけど……その日の夜中。自室で違和感に目を覚ますと、手を縛られていて」
唐突な展開に、璃空は「縛られ?」と眉を潜めた。
「そう。驚いて声を上げようとしたらお腹の上に乗ったあの人に口を塞がれて。気持ちいいことしたくないかって尋ねられたかと思ったら、ズボンと下着を下げられて」
璃空はぞっとした。優斗は淡々と話してはいるが。それは、どう考えても。
「……犯罪じゃん」
「そうだね。まあ足は自由に動かせたから蹴飛ばせば良かったのかもしれないけど……セックスに対する好奇心と、兄さんに対するあてつけみたいな感覚でずるずると流されるままという流れ……かな」
後半にいくにつれ、気まずさから優斗の声が段々小さくなっていく。
「好奇心ですか」と、何故か敬語の璃空。優斗は「いや……うん」と曖昧な返答しか出来ない。
「お兄さんに対するあてつけって?」
優斗は束の間黙った。璃空は弟と仲が良い。だからこそ知られたくなかったが、こうなってしまった以上、全てを話すのが賢明だろう。
「……兄さんには、昔から嫌われていて。小さい頃は好かれようと努力したこともあったんだけど、馬鹿らしくなってやめたんだ。その反動というか」
「そう、なんだ」
しん。
沈黙が部屋を満たす。
優斗は俯く璃空に手を伸ばしかけたが、璃空が「優斗が」と呟いたので止めた。
「ほぼ犯罪の流れから、優斗がどこらへんで佳菜子さんを好きになったのか、謎なんだけど」
優斗は肩を落とした。
──まだそこを疑われていたとは。
「……好きになったことなんてないよ。何度も言うけど、俺の初恋は璃空で、璃空しか好きになったことはない」
じと。
璃空が疑いの眼差しを向ける。
他のことならこちらが心配になるぐらい素直に信じるのに、女性のことになると璃空は疑い深くなる。
15
あなたにおすすめの小説
幸せの温度
本郷アキ
BL
※ラブ度高めです。直接的な表現もありますので、苦手な方はご注意ください。
まだ産まれたばかりの葉月を置いて、両親は天国の門を叩いた。
俺がしっかりしなきゃ──そう思っていた兄、睦月《むつき》17歳の前に表れたのは、両親の親友だという浅黄陽《あさぎよう》33歳。
陽は本当の家族のように接してくれるけれど、血の繋がりのない偽物の家族は終わりにしなければならない、だってずっと家族じゃいられないでしょ? そんなのただの言い訳。
俺にあんまり触らないで。
俺の気持ちに気付かないで。
……陽の手で触れられるとおかしくなってしまうから。
俺のこと好きでもないのに、どうしてあんなことをしたの? 少しずつ育っていった恋心は、告白前に失恋決定。
家事に育児に翻弄されながら、少しずつ家族の形が出来上がっていく。
そんな中、睦月をストーキングする男が現れて──!?
【完結】幼馴染に告白されたけれど、実は俺の方がずっと前から好きだったんです 〜初恋のあわい~
上杉
BL
ずっとお前のことが好きだったんだ。
ある日、突然告白された西脇新汰(にしわきあらた)は驚いた。何故ならその相手は幼馴染の清宮理久(きよみやりく)だったから。思わずパニックになり新汰が返答できずにいると、理久はこう続ける。
「驚いていると思う。だけど少しずつ意識してほしい」
そう言って普段から次々とアプローチを繰り返してくるようになったが、実は新汰の方が昔から理久のことが好きで、それは今も続いている初恋だった。
完全に返答のタイミングを失ってしまった新汰が、気持ちを伝え完全な両想いになる日はやって来るのか?
初めから好き同士の高校生が送る青春小説です!お楽しみ下さい。
うまく笑えない君へと捧ぐ
西友
BL
本編+おまけ話、完結です。
ありがとうございました!
中学二年の夏、彰太(しょうた)は恋愛を諦めた。でも、一人でも恋は出来るから。そんな想いを秘めたまま、彰太は一翔(かずと)に片想いをする。やがて、ハグから始まった二人の恋愛は、三年で幕を閉じることになる。
一翔の左手の薬指には、微かに光る指輪がある。綺麗な奥さんと、一歳になる娘がいるという一翔。あの三年間は、幻だった。一翔はそんな風に思っているかもしれない。
──でも。おれにとっては、確かに現実だったよ。
もう二度と交差することのない想いを秘め、彰太は遠い場所で笑う一翔に背を向けた。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
【完結】「奥さまは旦那さまに恋をしました」〜紫瞠柳(♂)。学生と奥さまやってます
天白
BL
誰もが想像できるような典型的な日本庭園。
広大なそれを見渡せるどこか古めかしいお座敷内で、僕は誰もが想像できないような命令を、ある日突然下された。
「は?」
「嫁に行って来い」
そうして嫁いだ先は高級マンションの最上階だった。
現役高校生の僕と旦那さまとの、ちょっぴり不思議で、ちょっぴり甘く、時々はちゃめちゃな新婚生活が今始まる!
……って、言ったら大袈裟かな?
※他サイト(フジョッシーさん、ムーンライトノベルズさん他)にて公開中。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる