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第3話 絶望の前兆
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今日は、休日。
それも予定なしの日曜日。
私は、大人しく家で過ごしていた。
“とあるニュース”を見ながら。
『速報です。速報が入りました。池袋駅西口にて、ナイフを持った男が人質を捕り、「俺はアイツらに、こんな風に脅されたんだ」「同じように早く金を出せ」などと__』
いつもの物騒な画面越しの映像に呆れていた。
そして、くだらないニュースを消そうとした。
その時、私は一瞬目を疑った。
信じられない光景。
否、信じたくない光景だった。
その男が人質にしていたのは、私の目的。
彼女、矢島香織だった。
無意識に私は、家を出ていた。
今日の予定だ。
“助けにいかなきゃ……!!”
池袋駅は、私が住むマンションの近く。
だから、見つけるのは早かった。
香織は、恐怖で震えている。
男は、映像で目にした通りナイフを手にしている。
野次馬は、男を囲むようにしてスマホをかざしている。
これでは、香織がまるで見世物だ。
「すみません。通してください。すみません」
そう言いながら、前へ前へと進む。
しかし、前に来ても警察官が邪魔で見えなかった。
後ろから誰かに押されて、警察官の一人に当たった。
ふと顔を上げると、そこには兄貴の姿。
「タツ兄……?」
そういえば、そうだ。
私の兄貴は、警察官だった。
倉嶋篤宏。
通称、タツ兄。
「凛花?なんでお前がここに……あぁ、もしかして」
そういうと、可哀想な目で香織を見た。
友達と察してくれたのだ。
はぁ、とため息を吐いた途端、タツ兄が警察官側に引き寄せた。
「なんだね君は、危ないから下がりなさい」
タツ兄が私を庇った。
こう見えても、兄の地位はそこそこ高い。
警察官の父が上げたのだ。
「あの子は、俺の妹の友達らしい。だから、関係者だ。立ち入っても構わないはずだろう」
そう言って、私の肩を押した。
救ってやれ。そういう雰囲気を漂わせて。
「あっ!ちょっと君!行ってはだめだ!」
「待て。アイツは、普通の奴とは違うさ。信じよう」
私は、見届けられた。
すぐに、目の前に来た。
香織を人質に捕った男の目の前に。
「なんだよ、なんなんだよ!?お前もその目をして俺を責めるのかよ!!なぁ、この世に神様ってもんはいないのかよ!?」
大声で怒鳴り、必死になっている男。
奴の言い訳などに耳を貸す理由なんてない。
今はただ、香織を返してもらいたい。
「お前は、人に脅されたから他人を脅すのか。随分と自分勝手なんだな……」
頭に血がのぼり、口調も変わっている。
そんな自分には、気付くはずもなかった。
ただ、彼女を、香織を返してほしい。
「香織を、返して……」
香織が何か言ってる。
……なんだろう?あぁ、そうか。
怖いんだ。きっと、この男が怖いんだ。
こんな思いをさせた男が、憎い。
一歩ずつ、私は男に近づく。
「く、来るなっ!殺すぞ、餓鬼!!」
香織に向けていたナイフが私に向く。
そんなものに動じない。
こんな奴に、私は殺されない。
こんな愚か者になんて。
「ぁ……そんな、りんちゃ、ん……」
ズサッ、と不吉な音がした。
左胸の服から赤い血が滲んでくる。
男は凛花を刺し、殺ってやったと笑みを浮かべる。
が、凛花は叫ぶどころか動じることすらしない。
「なんだ、よ?煙……?」
刺したナイフが形を失っていく。
刺された左胸から、煙が出たのだ。
異様なほど熱い、得たいの知れぬ煙が。
「やっぱり、あの時も……同じだったんだ」
男は、凛花の訳の分からぬ発言に思わず後退りをした。
この発言は、凛花が無意識に発したのだ。
それもそのはず。
彼女には、とうに理性など消えている。
ただ、香織を護るという目的だけに縛られたのた。
「よくも香織に恥をかかせたな。どうしたい?」
異変を察した香織は、直ぐ様声をかけた。
「りんちゃん!私は、もう大丈夫だから!!だから、元に戻って、お願い!!」
……その声でハッとする。
我に返った瞬間、軽く目眩がした。
(あれ……?私、なんで倒れて__)
意識は、その一瞬で途切れた。
男は無事に逮捕され、香織にも命に別状はないとのことだった。
この三日後に凛花は、生き返るように起きた。
その三日間。彼女は、また彼処に行っていた。
誰も行けるはずのない場所。
自分が開いた理想の世界。
目的が在る、未知の世。
__永遠の居場所。
それも予定なしの日曜日。
私は、大人しく家で過ごしていた。
“とあるニュース”を見ながら。
『速報です。速報が入りました。池袋駅西口にて、ナイフを持った男が人質を捕り、「俺はアイツらに、こんな風に脅されたんだ」「同じように早く金を出せ」などと__』
いつもの物騒な画面越しの映像に呆れていた。
そして、くだらないニュースを消そうとした。
その時、私は一瞬目を疑った。
信じられない光景。
否、信じたくない光景だった。
その男が人質にしていたのは、私の目的。
彼女、矢島香織だった。
無意識に私は、家を出ていた。
今日の予定だ。
“助けにいかなきゃ……!!”
池袋駅は、私が住むマンションの近く。
だから、見つけるのは早かった。
香織は、恐怖で震えている。
男は、映像で目にした通りナイフを手にしている。
野次馬は、男を囲むようにしてスマホをかざしている。
これでは、香織がまるで見世物だ。
「すみません。通してください。すみません」
そう言いながら、前へ前へと進む。
しかし、前に来ても警察官が邪魔で見えなかった。
後ろから誰かに押されて、警察官の一人に当たった。
ふと顔を上げると、そこには兄貴の姿。
「タツ兄……?」
そういえば、そうだ。
私の兄貴は、警察官だった。
倉嶋篤宏。
通称、タツ兄。
「凛花?なんでお前がここに……あぁ、もしかして」
そういうと、可哀想な目で香織を見た。
友達と察してくれたのだ。
はぁ、とため息を吐いた途端、タツ兄が警察官側に引き寄せた。
「なんだね君は、危ないから下がりなさい」
タツ兄が私を庇った。
こう見えても、兄の地位はそこそこ高い。
警察官の父が上げたのだ。
「あの子は、俺の妹の友達らしい。だから、関係者だ。立ち入っても構わないはずだろう」
そう言って、私の肩を押した。
救ってやれ。そういう雰囲気を漂わせて。
「あっ!ちょっと君!行ってはだめだ!」
「待て。アイツは、普通の奴とは違うさ。信じよう」
私は、見届けられた。
すぐに、目の前に来た。
香織を人質に捕った男の目の前に。
「なんだよ、なんなんだよ!?お前もその目をして俺を責めるのかよ!!なぁ、この世に神様ってもんはいないのかよ!?」
大声で怒鳴り、必死になっている男。
奴の言い訳などに耳を貸す理由なんてない。
今はただ、香織を返してもらいたい。
「お前は、人に脅されたから他人を脅すのか。随分と自分勝手なんだな……」
頭に血がのぼり、口調も変わっている。
そんな自分には、気付くはずもなかった。
ただ、彼女を、香織を返してほしい。
「香織を、返して……」
香織が何か言ってる。
……なんだろう?あぁ、そうか。
怖いんだ。きっと、この男が怖いんだ。
こんな思いをさせた男が、憎い。
一歩ずつ、私は男に近づく。
「く、来るなっ!殺すぞ、餓鬼!!」
香織に向けていたナイフが私に向く。
そんなものに動じない。
こんな奴に、私は殺されない。
こんな愚か者になんて。
「ぁ……そんな、りんちゃ、ん……」
ズサッ、と不吉な音がした。
左胸の服から赤い血が滲んでくる。
男は凛花を刺し、殺ってやったと笑みを浮かべる。
が、凛花は叫ぶどころか動じることすらしない。
「なんだ、よ?煙……?」
刺したナイフが形を失っていく。
刺された左胸から、煙が出たのだ。
異様なほど熱い、得たいの知れぬ煙が。
「やっぱり、あの時も……同じだったんだ」
男は、凛花の訳の分からぬ発言に思わず後退りをした。
この発言は、凛花が無意識に発したのだ。
それもそのはず。
彼女には、とうに理性など消えている。
ただ、香織を護るという目的だけに縛られたのた。
「よくも香織に恥をかかせたな。どうしたい?」
異変を察した香織は、直ぐ様声をかけた。
「りんちゃん!私は、もう大丈夫だから!!だから、元に戻って、お願い!!」
……その声でハッとする。
我に返った瞬間、軽く目眩がした。
(あれ……?私、なんで倒れて__)
意識は、その一瞬で途切れた。
男は無事に逮捕され、香織にも命に別状はないとのことだった。
この三日後に凛花は、生き返るように起きた。
その三日間。彼女は、また彼処に行っていた。
誰も行けるはずのない場所。
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目的が在る、未知の世。
__永遠の居場所。
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