最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ

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ハンカチに込められた意味

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 そんなこんなで迎えた翌日の朝。

「良いわね! 今日はくれぐれも大人しくしてなさいよ! また騒ぎが起こしたらただじゃおかないんだから!」

 出掛けにアリンからお叱りを受けた俺は、逃げるよう学園に向けて出発。
 途中、実家暮らしのダスティや寮住まいのフィオとも合流し、道中お喋りに花を咲かせつつ、選定会の結果が張り出されている掲示板へと足を運んだ。

「リュートは何組になりましたか? ちなみにわたしは三組で、ダスティは……」

「一組だったぜ!」

 なんだ、皆違うクラスなのか。
 残念だな、どうせなら一緒のクラスになりたかったのに。

「俺は二組みたい」

「なーんだ、皆バラバラかよ。 ついてねえな」

「折角お友達になれたのに、残念です」

 運がないというより、これは恐らく学園側の操作。
 実力者が一ヶ所に集まらないよう、分散させた結果なのだと思う。

「ねえ聞いた? ヴェルエスタ君、二組なんだって。 ラッキー!」

「えー、羨ましい! あんなお高く止まったお貴族様より、ヴェルエスタ君みたいな人当たりの良さそうな人が断然良い~! うちのクラスなんて、オルガの奴が来るのよ? 冗談じゃないっての」

「それは御愁傷様~。 うちらは我らが首席様に楽させて貰っちゃおっと、にひひっ!」

 首席……?
 なんの話だ?

「なあ、二人とも。 俺が首席ってどういう事だ? そんな話、初めて聞いたんだけど」

「ん? なんだよリュート、お前まだ成績表見てねえの?」

 ああ、そういえばまだ見てないな。
 クラス表の隣に張り出されてるんだっけ。
 
「ほら、あそこの一番上見てください。 リュートの名前が載ってますよ」

「……なっ! ななな……!」

 なんじゃこりゃあ!
 フィオの指先を追うと、確かに俺の名前などが記されていた。
 しかも大々的に。
 
「予想はしてたけど、やっぱり首席はヴェルエスタで決まりか。 まあそりゃそうだよな、あんな魔法を使えるやつが首席じゃない方がおかしな話だ」

「おい、見ろよ。 実技だけじゃなくて筆記も満点通過らしいぜ、我らが首席様は。 いやー、流石だね。 こんだけ凄いと嫉妬も起きないわ」

 そうだよ、それだよ!
 むしろなんであんな簡単な筆記試験で、誰も満点取れないんだよ!
 義務教育問題レベルだったじゃん!

「て言うかさ、オルガ家のおぼっちゃま、あんだけイキってたのに首席取れなかったどころか四位落ちしてんじゃん。 ウケるんだけど」

「そもそも今年は凄い奴多すぎって話じゃない? ヴェルエスタは勿論だけど、二位のフィオ=ノートも三位のダスティ=ストレングスもかなりヤバかったよね。 この三人には追い付ける気しないわ」

 これ見よがしにどや顔をするんじゃない、二人とも。
 今それどころじゃないから突っ込まんぞ。

「にしても、オルガの野郎が首席じゃなくて良かったよな」

「それな。 あいつが首席だったらと思うと、身の毛がよだつぜ。 なんせあの野郎は……噂をしたらなんとやらだ」

 視線を追って振り返ると、嫌われ者の大貴族の子息、マーク=オルガが子分を引き連れ、肩で風を切って歩いていた。

「道を開けろよ、愚民ども! マーク様のお通りだ!」

「どけどけどけぇっ!」

 なんという小物臭。
 昭和の漫画にでも出てきそうな、ガキ大将とその子分を思い起こさせる光景である。
 だが腐っても大貴族の跡取り。
 
「何様だよ、あいつ」

「やめとけって、目つけられるぞ」

 一般生徒は素直に場所を開けるしかなかった。

「ささっ、マーク様! こちらへどうぞ!」

「ああ」

 マークは俺とフィオをキッと睨み付けると、掲示板の前に立って、自分の順位を探し始める。  

「おい、どこだ俺の名前は。 どこにもねえじゃねえか」

 残念ながら、お前の順位はそんな上じゃない。
 もう少し下だよ、お坊ちゃま。

「あっ! ありました、マーク様! こちらです!」

「お見事です、マーク様! 百二十人中四位だなんて、そうそう取れる順位じゃありませんよ! 流石はオルガ侯爵家の次期当主様! 我々とは格が違いますなぁ!」

「……黙れ」

「「え……?」」

「黙れって言ったんだ、このウジ虫どもが!」

 突然ぶちギレたマークに、子分二人は「ひいっ!」と恐れ戦く。
 
「この俺様が四位だと! ふざけやがって! なんで俺様があんなどこの馬の骨とも知れねえ女と、脳筋のストレングスに負けなきゃなんねえ! おかしいだろうが!」

「誰が脳筋だ」

「馬ではなく人間ですが」

「ちょっと黙ろうか、二人とも。 今そういう時間じゃないからね」

 と、突っ込んだのがいけなかった。
 ツッコミが聞こえてしまったのか、マークは俺を睨むと胸ぐらを掴んで、こう吠える。

「特にムカつくのはてめえだ、ヴェルエスタのガキ! 俺様が取る筈だった首席を奪いやがって! てめえだけは許せねえ! 辺境に追いやられた伯爵家風情が、舐めた真似してんじゃねえぞ!」    

「そんなに首席になりたかったのか。 悪いことしちゃったな。 ごめん、悪かったよ。 横取りしちゃって。 あっ、でも一応言っとくけど、俺は別に首席の座なんか微塵も興味無いからな? むしろこれ以上目立ちたくもないから、首席なんか願い下げっていうか、譲れるんならいつても譲ってやりたいっていうか……」

「「「「っ!?」」」」

 なに?
 どうしたのさ、皆。
 そんな固まっちゃって。
 俺、変な事言ったか?

「あのアホ、そりゃ逆効果ってもんだぜ……」

「リュートは煽りのセンスもピカイチなんですね。 勉強になります」

 煽ってないが。

「どこまでも……どこまでも舐め腐りやがって! この糞野郎が!」

「……!」

 マークが俺を突き飛ばした次の瞬間。
 顔に白い布が当たった。
 
「なんだこれ、ハンカチ?」

「リュート、待て! それを拾うな! それは……!」

「え? もう拾っちゃったけど」

「く……くくく……ははははははは!」

 ハンカチを拾うと、いきなりマークが笑い始めた。
 それに呆然としていると、ダスティがこんな事を……。

「このバカタレ! 叩きつけられたハンカチを拾う行為はな! 決闘を受けるって合図なんだよ! つまり……!」

 マジか。
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