某有名大学探偵ゴッコサークル

叶 香音

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7.うちに泊めるってこと?

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「だんだん痛くなってきた」
駅へと向かう道すがら、口の周りの血液を濡れたハンカチで拭きながら
哲郎がつぶやいた。
「だから言ったじゃない!だんだん痛くなるよって」
綾香がちょっと叱りつけるような口調で言ってるけど、
だんだん痛くなるって言ったのは私。
「興奮が収まってくると痛くなるんだね」
哲郎は意気消沈と言った感じだ。
よく見ると口に回りが紫色がかってる?
歯や骨に異常がないといいけど。
「救急病院へ行く?」
私が問いかけると、
「いいよ、そんなにひどくないし、明日になれば腫れも収まりそうだし」
「それに保険証も今持ってないから」
「保険証がないと診てくれないの?」
「そんなことはないけど、預り金で1万円ぐらい取られる。
もう一度保険証持って行くのも面倒だしね」
「それに、、、」哲郎は言いかけてやめた。
「それに何よ」
綾香が話に加わってくる。
「この感じだと喧嘩したみたいで疑われるよね、警察とか呼ばれたら面倒だし」
哲郎は以前、救急病院の夜間受付バイトをしたことがあるらしく詳しい。
「確かにそうだよね、いろいろ状況とか聞かれたらもっと面倒だし」
「このまま、冷やしておけば大丈夫だから」
哲郎は頑張ってくれたのになぜか物悲しい。

「ところでさあ、もう12時だけど哲郎は終電はあるの?」
私が哲郎に問いかけると、
「いや、15分ぐらい前に最終電車が出たところかな」
「それでどうすんの?」
「友達の家に泊めてもらうのも、もう寝てたら悪いし、マンキツでも行くよ」
「その顔で!?」
本人はあまりわからないかもしれないけど、喧嘩してきましたって顔だ。
「下手するとマンキツの店員に、警察に通報されるよ」
「それもそうだよね」
「綾香のうちに泊めてもらえばいいじゃない」
「えっ、私のうち?」
「そう、綾香の家、私の家でもいいんだけど高校生の妹と二人暮らしだから、
ちょっとね、男の人連れ込んだって妹に告げ口されそうだし」
「綾香のうち広いし、駅からすぐだからちょうどいいでしょ、嫌?」
「えっ、ええと、嫌ではないけど」
「いやいやいや、それはまずいでしょう!一人暮らしの女性の家に押し掛けるのは」
「公園か新宿の地下街ででも仮眠取るから大丈夫だよ」
「綾香!哲郎君に浮浪者と一夜をともにしてもらう?」
「それはイヤだよ、哲郎君まじめだから大丈夫だよね、うちに来てもいいよ」
なんだかんだ押し問答をしてるうちに分岐点となる高田馬場に着いた。
「それじゃ、綾香、哲郎君をよろしくね、ちゃんと介抱するんだよ」
「うん、わかってる」
桜子の家は駒込なので、反対方向の山手線に乗り込んだ。
「本当に大丈夫だよ、趣味がキャンプだからさあ、野宿は慣れてるんだ」
哲郎はまだ決めかねているらしい。
「へえ~、キャンプが趣味だったんだ。今度一緒に連れてってよ」
「ええっ、うん、まあいいけど」
綾香は哲郎に断ろうとする隙を与えない。
新宿駅を降りるとそのまま綾香に手を引かれて、総武線に乗り込んでしまった。
「これでもううちに来るしかなくなったね、哲郎を泊めなかったら桜子に怒られるから」
「うん、まあそう言う事になるのか」
哲郎もそろそろ覚悟を決めた?ようだった。

綾香が哲郎の事を意識し始めてから、まだ2週間ぐらいしかたっていない。
元々、高校までは海外生活が長く、友達もろくにいなかった。
コミュ障とまでは行かないまでも人付き合いは苦手。
それでも哲郎とは気軽に話せていた。
ただ、意識し始めてからはどう接していいのかよくわからなくなって、
時々弟を叱りつけるような態度を取ってしまっていた。
「さっきのワゴン車に乗っていた男たちって誰だったんだろうね」
四谷の駅に着くと哲郎が話しかけてきた。
「・・・、ああそうね、誰だったんだろう」
綾香はうわのそら、これからの事を考え出すと頭の中がパニックになっていた。
【男の人を家に泊める!?】
【しかも相手は哲郎!】
【どうなるんだろう、どうなってしまうんだろう?】
経験が全くない綾香は、友達の話とラノベからの知識を総動員していた。
泊まる=Hな展開
ラノベからの知識だとこの式しか思いつかない。
この展開が嫌なのかと聞かれればそうでもない。
【一気に哲郎との距離を縮めるチャンスなんじゃない】
自分の家に帰る事がこんなに緊張することになるとは思わなかった。
「あっ、ちょっとそこの薬局寄っていい?湿布とか買ってくるから」
「待って、うちにもあるから」
と言い終わらないうちに哲郎は薬局へ入って行った。
しばらくして手提げ袋を抱えて戻ってきた。
「歯ブラシとかもそろえたし、アイスも買っちゃった、あとで一緒に食べよう」
哲郎は特に意識している感じはない様子。
「うん、ありがと」
二人は綾香が住むマンションに入って行った。
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