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38話 悪役令嬢と言われた大好きな人とお茶会
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「久しぶりね。エーヴァ、アリス」
「シャーリー様。いえ、シェルリヒェット王太子妃殿下」
シャーリー様の最速の婚姻が完了し、ソッケ王国内も落ち着きを見せた頃、お茶会の誘いを受けた。ドゥエツ王国内での立場も固まったからだろう。
「シャーリーでいいわ」
ソッケ国内では公でなければシャーリー様とお呼びしていた。あのろくでなしの関係者にしたくなかったからだ。
今、シャーリー様はドゥエツ王国の王太子妃。ソッケ王国にいた時と状況が違う。けど、周囲の侍女も了承しているし、なによりディーナ様が名前で呼んでもいい環境を作ってくれた。
アリスと目を合わせて頷き合う。
「分かりましたわ。シャーリー様」
「私もこれからはシャーリー様とお呼びします」
「ありがとう」
前例があったからやりやすかったことに加え、急に現れた婚約者に周囲が馴染みやすいよう配慮してくれた。
「さすがディーナ様だわ」
「エーヴァ?」
「あ、すみません。独り言です」
ディーナ様には敵わない。
まだそう思ってしまう癖は残っている。けど以前より気持ちはずっと楽だ。バーツ様のおかげね。
「エーヴァ、この前ドゥエツ王城の社交界に来ていたのでしょう?」
「はい」
「残念だわ。入れ違いだったみたいで、私が来た時にはエーヴァはいなかったの」
「そうでしたか」
二日目に至っては両陛下に呼ばれて最初と終わり際しかいなかったらしい。丁度私とバーツ様がいた時間と重ならなかった。
「残念です」
「ええ。でもすぐ手紙を出せば会えると思って。よかったわ」
「光栄です」
ドゥエツ王国滞在中に手紙が来てよかった。今日、バーツ様には銀細工の注文対応をしてもらっている。忙しいのに「いいよ」と快く送り出してくれた。
「シャーリー様、ご結婚おめでとうございます」
「おめでとうございます」
「ありがとう。ソッケはだいぶ落ち着いたと聞いたけれど、どうかしら?」
「はい。第一王子が戻り立太子されたのもあって落ち着きを取り戻しつつあります。長女が災いという妙な噂もなくなりました」
「そう。よかったわ」
ソッケは第一王太子が先頭に立って政務で改革を行っている。第二王子の件があったから婚姻はかなり慎重になっていて相手はまだいないという。
「今回の婚姻に際して外遊されるということであればご安心を。ソッケ王国は喜んでお迎えいたしますわ」
「ありがとう、アリス」
「はい……で、エーヴァは戻らないの?」
「え?」
政務から退いた。けど、今は環境が整って、一緒に仕事をしていた仲間やアリスの後押しもあり戻ることができる。
「不当なものだったから当然よ。王太子殿下も了承してくださったわ」
「戻る……」
「エーヴァが望むなら、よいのではないかしら?」
シャーリー様の言葉が響く。分かった上での流れなんだわ。
「……私は」
政務の仕事はやりがいがあった。第二王子派の人間に邪魔されることも多かったけど、学院からの付き合いがあるシャーリー様とアリスのおかげでやっていけた。
「私は、」
けど本当にやりたいことは何だったか。
この短い期間、色んな感情がある中で、バーツ様と銀細工に触れる時間が一番楽しい。
バーツ様との時間がとても鮮やかに甦った。
私の幸せは、バーツ様と共にある。
「私は……銀細工を作りたいんです」
ひどい心臓の音だった。息も浅くなって。
やりたいことを言うのにこんな緊張するなんて思わなかった。なのにすごくすっきりしている。
「今、師事を受けている途中ですが、学ぶことが多いですし、もっと知りたいんです」
独学では辿り着けない場所がある。バーツ様はいつだって新しい世界を見せてくれた。
「とても頼れる方の側で学ばせてもらってるんです。新しい細工も生み出してて……私ももっと作りたいと思えるんです」
バーツ様の銀細工は今も私を惹き付ける。私だけではない。この前の社交界で銀細工は知れ渡った。ディーナ様が保護し確立していたところからさらに躍進するだろう。
「エーヴァの決めたこと、応援するわ」
「シャーリー様……」
「私も当然応援する」
「アリス」
「勿論、片手間にこっちの仕事したくなったら言って? 紹介するから」
「……ありがとう」
それで、とシャーリー様が至極真面目にきいてきた。
「その御師匠様にあたる方と結婚するの?」
「っ、ごほっ」
紅茶を吹きかけた。危ない。シャーリー様の前でそんな失態晒すわけにはいかないもの。
「違っていたらごめんなさい」
「いいえ、その、結婚は、まだといいますか……」
濁す私に首を傾げるシャーリー様。アリスが助け船を出してくれた。
「婚約中ってこと?」
「それ以前の問題で……」
シャーリー様に促され、洗いざらい話した。
好きなのに未来が怖くて進めず返事のできない意気地無しの話だ。
「……エーヴァには申し訳ないことをしたわ」
「シャーリー様はなにも悪くありません!」
「いいえ。一端は間違いなく私よ。エーヴァの婚約破棄は私の婚約破棄からきているし、職を失ったのも私と共にいたから」
「いいえ! 違います!」
すべては不可抗力だった。
戦争を引き起こそうとしたセモツ国の悪意に飲まれたのだから仕方ない。
「……そうね。終わったことを話しても仕方ないわ」
「シャーリー様」
「エーヴァの御師匠様との関係も応援する」
だからこれからはたまに会ってくれる? と微笑まれる。喜んで受ける以外の返事はなかった。
「エーヴァはこの後、御師匠様の領地に戻るの?」
「いいえ。新しい銀採取について話をもう一度するのでソッケ王国に行くわ」
ディーナ様が動き、本格的な新しい銀の取引についてルール決めを行うことになった。だからドゥエツ王国からソッケ王国に行かないといけない。私とバーツ様が一番最初に領主である辺境伯と銀取引で契約を結んでいて、その銀を扱う最たる人間だからだ。
「なら、今度ソッケの社交界に出る?」
「え?」
「シャーリー様。いえ、シェルリヒェット王太子妃殿下」
シャーリー様の最速の婚姻が完了し、ソッケ王国内も落ち着きを見せた頃、お茶会の誘いを受けた。ドゥエツ王国内での立場も固まったからだろう。
「シャーリーでいいわ」
ソッケ国内では公でなければシャーリー様とお呼びしていた。あのろくでなしの関係者にしたくなかったからだ。
今、シャーリー様はドゥエツ王国の王太子妃。ソッケ王国にいた時と状況が違う。けど、周囲の侍女も了承しているし、なによりディーナ様が名前で呼んでもいい環境を作ってくれた。
アリスと目を合わせて頷き合う。
「分かりましたわ。シャーリー様」
「私もこれからはシャーリー様とお呼びします」
「ありがとう」
前例があったからやりやすかったことに加え、急に現れた婚約者に周囲が馴染みやすいよう配慮してくれた。
「さすがディーナ様だわ」
「エーヴァ?」
「あ、すみません。独り言です」
ディーナ様には敵わない。
まだそう思ってしまう癖は残っている。けど以前より気持ちはずっと楽だ。バーツ様のおかげね。
「エーヴァ、この前ドゥエツ王城の社交界に来ていたのでしょう?」
「はい」
「残念だわ。入れ違いだったみたいで、私が来た時にはエーヴァはいなかったの」
「そうでしたか」
二日目に至っては両陛下に呼ばれて最初と終わり際しかいなかったらしい。丁度私とバーツ様がいた時間と重ならなかった。
「残念です」
「ええ。でもすぐ手紙を出せば会えると思って。よかったわ」
「光栄です」
ドゥエツ王国滞在中に手紙が来てよかった。今日、バーツ様には銀細工の注文対応をしてもらっている。忙しいのに「いいよ」と快く送り出してくれた。
「シャーリー様、ご結婚おめでとうございます」
「おめでとうございます」
「ありがとう。ソッケはだいぶ落ち着いたと聞いたけれど、どうかしら?」
「はい。第一王子が戻り立太子されたのもあって落ち着きを取り戻しつつあります。長女が災いという妙な噂もなくなりました」
「そう。よかったわ」
ソッケは第一王太子が先頭に立って政務で改革を行っている。第二王子の件があったから婚姻はかなり慎重になっていて相手はまだいないという。
「今回の婚姻に際して外遊されるということであればご安心を。ソッケ王国は喜んでお迎えいたしますわ」
「ありがとう、アリス」
「はい……で、エーヴァは戻らないの?」
「え?」
政務から退いた。けど、今は環境が整って、一緒に仕事をしていた仲間やアリスの後押しもあり戻ることができる。
「不当なものだったから当然よ。王太子殿下も了承してくださったわ」
「戻る……」
「エーヴァが望むなら、よいのではないかしら?」
シャーリー様の言葉が響く。分かった上での流れなんだわ。
「……私は」
政務の仕事はやりがいがあった。第二王子派の人間に邪魔されることも多かったけど、学院からの付き合いがあるシャーリー様とアリスのおかげでやっていけた。
「私は、」
けど本当にやりたいことは何だったか。
この短い期間、色んな感情がある中で、バーツ様と銀細工に触れる時間が一番楽しい。
バーツ様との時間がとても鮮やかに甦った。
私の幸せは、バーツ様と共にある。
「私は……銀細工を作りたいんです」
ひどい心臓の音だった。息も浅くなって。
やりたいことを言うのにこんな緊張するなんて思わなかった。なのにすごくすっきりしている。
「今、師事を受けている途中ですが、学ぶことが多いですし、もっと知りたいんです」
独学では辿り着けない場所がある。バーツ様はいつだって新しい世界を見せてくれた。
「とても頼れる方の側で学ばせてもらってるんです。新しい細工も生み出してて……私ももっと作りたいと思えるんです」
バーツ様の銀細工は今も私を惹き付ける。私だけではない。この前の社交界で銀細工は知れ渡った。ディーナ様が保護し確立していたところからさらに躍進するだろう。
「エーヴァの決めたこと、応援するわ」
「シャーリー様……」
「私も当然応援する」
「アリス」
「勿論、片手間にこっちの仕事したくなったら言って? 紹介するから」
「……ありがとう」
それで、とシャーリー様が至極真面目にきいてきた。
「その御師匠様にあたる方と結婚するの?」
「っ、ごほっ」
紅茶を吹きかけた。危ない。シャーリー様の前でそんな失態晒すわけにはいかないもの。
「違っていたらごめんなさい」
「いいえ、その、結婚は、まだといいますか……」
濁す私に首を傾げるシャーリー様。アリスが助け船を出してくれた。
「婚約中ってこと?」
「それ以前の問題で……」
シャーリー様に促され、洗いざらい話した。
好きなのに未来が怖くて進めず返事のできない意気地無しの話だ。
「……エーヴァには申し訳ないことをしたわ」
「シャーリー様はなにも悪くありません!」
「いいえ。一端は間違いなく私よ。エーヴァの婚約破棄は私の婚約破棄からきているし、職を失ったのも私と共にいたから」
「いいえ! 違います!」
すべては不可抗力だった。
戦争を引き起こそうとしたセモツ国の悪意に飲まれたのだから仕方ない。
「……そうね。終わったことを話しても仕方ないわ」
「シャーリー様」
「エーヴァの御師匠様との関係も応援する」
だからこれからはたまに会ってくれる? と微笑まれる。喜んで受ける以外の返事はなかった。
「エーヴァはこの後、御師匠様の領地に戻るの?」
「いいえ。新しい銀採取について話をもう一度するのでソッケ王国に行くわ」
ディーナ様が動き、本格的な新しい銀の取引についてルール決めを行うことになった。だからドゥエツ王国からソッケ王国に行かないといけない。私とバーツ様が一番最初に領主である辺境伯と銀取引で契約を結んでいて、その銀を扱う最たる人間だからだ。
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