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46話 銀細工師を認める
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「銀細工師筆頭として、エーヴァ嬢を失うのは辛い。どんな形でも結構です。是非銀細工師としての活動をお許しいただきたい。私からもお願いいたします」
バーツ様が頭を下げる。
御父様が顔を上げるよう伝えてバーツ様はゆっくり顔を上げた。その時、私の方を見て目があって微笑まれる。どきりと心臓が跳ねた。
「伝統工芸は銀細工に問わず、保護するようにと三国間で決まっている」
「御父様?」
ディーナ様から聞いたらしい。
「文化を淘汰するのは我々ソッケ王国の歴史を淘汰するのと同じだ」
消えゆくものが後々大きく影響することもある。銀細工は特に銀の加工という点で文化に貢献できるはずだ。
「我々はずっと国に従事するのが最善で、家を守るために家業を継いでいくのが最終地点だと思っていた」
「御父様……」
「そこに当人の意志は関係ないと思っていたよ」
エーヴァは何度も銀細工のことを伝えてくれた。それに見向きもせず、聞く耳も持たず、ずっとフィーラ家にとっての慣習しか見てこないままだった。そう御父様は言う。
御父様は苦く笑い、続けて「すまない」と謝った。
「周囲に聞いてみれば銀細工を紹介され、その出来の良さに驚いたと言われたよ。全て二人を称賛するものだった」
銀細工ごときなんて言う人間はどこにもいなかった。
その時、御父様は自分の見識が狭いことを知り、己を恥じたらしい。
自分の中で納得していない部分もある。けど、自分で考え自分で動ける大人になったのであれば、選ぶのは私だと言う。
認めよう、と御父様が静かに告げた。
「銀細工師になることを認める。気が済むまでやってみなさい」
「御父様! ありがとうございます!」
銀細工を作ってもいい。
バーツ様の元で学び続けることができる。
なんて幸せだろう。私はまだ銀細工を作れる!
「お姉様!」
まだ話がありそうな御父様を遮って、妹のシャーラが部屋に飛び込んできた。
「シャーラ、ノックをして許しを得てから入りなさい」
話は終わってないんだぞと窘めるも、シャーラはどこ吹く風だ。
「お父様がお姉様のしたいことを認めれば終わりでしょう? ねえ、お姉様」
「確かに銀細工を認めてもらえればいいのだけど」
私も応援しますと喜ぶシャーラ。私がこの家を出ていく時に応援してくれた。
うまいことを家を出られたのはシャーラのおかげだ。
「お姉様、お願いがあるんです」
「ええ、どうかして?」
「一年だけでいいので、私に家業のことを教えてください」
だから、そのために一時的に銀細工師と家業を同時進行してもらえないか、ということだった。
御父様が苦々しく加える。
「それはこれから私が言おうと思っていたのだが……まあいい。私とメーペスは第一王太子殿下に随伴し、流通貿易の拠点を回る予定でな。家に全くいないわけではないが、教える時間があまりないのだよ。だからエーヴァから教えてやってほしい」
「私は構いませんが」
「嬉しいです! 私、やりたいと思ったこともあって、それもお姉様から話を聞きたくて」
「そうなの?」
「お姉様の御師匠様もよろしいでしょう?! お二人でこちらに来ればいいんです!」
「シャーラ、だめよ。バーツ様は元々諸島リッケリの領主だから長い間はこちらにいられないわ」
けど、お二人を引き離すなんてできない、とシャーラが強く主張した。
「それじゃあ、お姉様が銀細工を学べません!」
「そしたら通う形をとるのがいいかしら」
バーツ様は好きな方を選んでいいと微笑んでくれる。
「お姉様、私はお姉様から家業を学びたいんです。でもお姉様の夢の邪魔もしたくないんです。もちろん、お姉様の御師匠様の邪魔もしたくありません」
「そうなるといい落としどころが、ね……」
「エーヴァ、ループト公爵令嬢に頼んでみるかい?」
「え?」
「代理領主を続けてもらうってこと」
セモツ国との会談を何度も開催しようとする場合、諸島リッケリは非常に好都合らしい。トゥ島に会談用の大きな施設があるからだ。
それならしばらくディーナ様に諸島リッケリの代理領主をしていただく形でもいけそうな気がする。もっとも、普通に頼んでもディーナ様は笑顔で了承してくれると思うけど。
「なら、一度ディーナ様に頼んでみてもよろしいですか?」
「勿論。手紙を書くよ」
「わあ! 嬉しいです!」
「シャーラ、まだ本決まりではないのよ」
臨時で妹に家業を教えるのがうまくまとまりそうな時、再び応接間の扉が勢いよく開かれた。
「エーヴァ! 来ていると聞いたぞ!」
忘れかけていたし、正直もう二度と会うこともないと思っていたのに易々と現れる。
「え?」
「な……」
「……ヒャールタ・グング……」
バーツ様が頭を下げる。
御父様が顔を上げるよう伝えてバーツ様はゆっくり顔を上げた。その時、私の方を見て目があって微笑まれる。どきりと心臓が跳ねた。
「伝統工芸は銀細工に問わず、保護するようにと三国間で決まっている」
「御父様?」
ディーナ様から聞いたらしい。
「文化を淘汰するのは我々ソッケ王国の歴史を淘汰するのと同じだ」
消えゆくものが後々大きく影響することもある。銀細工は特に銀の加工という点で文化に貢献できるはずだ。
「我々はずっと国に従事するのが最善で、家を守るために家業を継いでいくのが最終地点だと思っていた」
「御父様……」
「そこに当人の意志は関係ないと思っていたよ」
エーヴァは何度も銀細工のことを伝えてくれた。それに見向きもせず、聞く耳も持たず、ずっとフィーラ家にとっての慣習しか見てこないままだった。そう御父様は言う。
御父様は苦く笑い、続けて「すまない」と謝った。
「周囲に聞いてみれば銀細工を紹介され、その出来の良さに驚いたと言われたよ。全て二人を称賛するものだった」
銀細工ごときなんて言う人間はどこにもいなかった。
その時、御父様は自分の見識が狭いことを知り、己を恥じたらしい。
自分の中で納得していない部分もある。けど、自分で考え自分で動ける大人になったのであれば、選ぶのは私だと言う。
認めよう、と御父様が静かに告げた。
「銀細工師になることを認める。気が済むまでやってみなさい」
「御父様! ありがとうございます!」
銀細工を作ってもいい。
バーツ様の元で学び続けることができる。
なんて幸せだろう。私はまだ銀細工を作れる!
「お姉様!」
まだ話がありそうな御父様を遮って、妹のシャーラが部屋に飛び込んできた。
「シャーラ、ノックをして許しを得てから入りなさい」
話は終わってないんだぞと窘めるも、シャーラはどこ吹く風だ。
「お父様がお姉様のしたいことを認めれば終わりでしょう? ねえ、お姉様」
「確かに銀細工を認めてもらえればいいのだけど」
私も応援しますと喜ぶシャーラ。私がこの家を出ていく時に応援してくれた。
うまいことを家を出られたのはシャーラのおかげだ。
「お姉様、お願いがあるんです」
「ええ、どうかして?」
「一年だけでいいので、私に家業のことを教えてください」
だから、そのために一時的に銀細工師と家業を同時進行してもらえないか、ということだった。
御父様が苦々しく加える。
「それはこれから私が言おうと思っていたのだが……まあいい。私とメーペスは第一王太子殿下に随伴し、流通貿易の拠点を回る予定でな。家に全くいないわけではないが、教える時間があまりないのだよ。だからエーヴァから教えてやってほしい」
「私は構いませんが」
「嬉しいです! 私、やりたいと思ったこともあって、それもお姉様から話を聞きたくて」
「そうなの?」
「お姉様の御師匠様もよろしいでしょう?! お二人でこちらに来ればいいんです!」
「シャーラ、だめよ。バーツ様は元々諸島リッケリの領主だから長い間はこちらにいられないわ」
けど、お二人を引き離すなんてできない、とシャーラが強く主張した。
「それじゃあ、お姉様が銀細工を学べません!」
「そしたら通う形をとるのがいいかしら」
バーツ様は好きな方を選んでいいと微笑んでくれる。
「お姉様、私はお姉様から家業を学びたいんです。でもお姉様の夢の邪魔もしたくないんです。もちろん、お姉様の御師匠様の邪魔もしたくありません」
「そうなるといい落としどころが、ね……」
「エーヴァ、ループト公爵令嬢に頼んでみるかい?」
「え?」
「代理領主を続けてもらうってこと」
セモツ国との会談を何度も開催しようとする場合、諸島リッケリは非常に好都合らしい。トゥ島に会談用の大きな施設があるからだ。
それならしばらくディーナ様に諸島リッケリの代理領主をしていただく形でもいけそうな気がする。もっとも、普通に頼んでもディーナ様は笑顔で了承してくれると思うけど。
「なら、一度ディーナ様に頼んでみてもよろしいですか?」
「勿論。手紙を書くよ」
「わあ! 嬉しいです!」
「シャーラ、まだ本決まりではないのよ」
臨時で妹に家業を教えるのがうまくまとまりそうな時、再び応接間の扉が勢いよく開かれた。
「エーヴァ! 来ていると聞いたぞ!」
忘れかけていたし、正直もう二度と会うこともないと思っていたのに易々と現れる。
「え?」
「な……」
「……ヒャールタ・グング……」
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