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47話 元婚約者、現る
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「……ヒャールタ・グング……」
元婚約者の突然の訪問だった。
関係ないのにどうして? そもそも部外者なのにノックもなしに入るって何?
「文化と貿易を学ぶために家を空けていたそうじゃないか! 俺のために自分を磨きに出たのだろう? お前の殊勝な努力、認めてやらなくもない」
「貴方のために家を出たわけではありません」
両親が外へ出すよう言ってもヒャールタ・グングは抵抗を続ける。
婚約破棄は済んでいることを伝えても全く引かなかった。
シャーラがこそっと教えてくれる。
「お姉様が家を出てから一度来たんです」
妹のシャーラと結婚する旨で来て門前払いされた。私が戻るのではという噂を聞いて今日話を持ち掛けたようで、フィーラ公爵家に戻るなら破棄した婚約を元に戻してもいいと言い始めたらしい。
「迷惑ね」
「そうなんです!」
「グング伯爵家とは話がついている。帰りなさい」
「おとうさま、大丈夫です。一度破棄された話はまるでなかったことにします。そうすればお互いの家に何も影響がない」
あの男におとうさまと呼ばれる御父様が可哀想ね。
「エーヴァが戻ってきたということは公爵家を継ぐのだろう? 放蕩娘であるお前の面倒は俺がみてやろう。俺がいれば公爵家は安泰だな」
「貴方がほしいのは公爵姓でしょう」
「エーヴァ?」
「公爵姓に領地、事業によって得たお金、あとこの屋敷」
どれもグング伯爵家では手に入らない。
「なんだ? 俺が嫌なのか?」
「その通りね」
元々婚約当時から馬が合わなかった。
「一度家を出た未婚の令嬢が簡単に結婚できると思ってるのか?」
余計なお世話だ。
「俺のように理解のある若くてできる男が必要だろう? 世継ぎも必要なんだからな」
表舞台に出ないよう計らってやる。そうすれば家を出た公爵家の汚名を晒さずに済む、と笑った。
どこまでも私を見下したいわけね。
「俺としてはどちらでも構わなかったが、まあ長女のお前でも妥協してやるよ」
シャーリー様の追放のために広まった長女が災いであるという根も葉もない噂のことね。
第二王子とシャーリー様の義妹が南の大陸の刑務所に入ってからはぱったり謂れのない噂が終息した。ソッケ王国は第一王太子の元で是正され、かつての異様な空気はなくなりつつある。
なのにこの元婚約者は何も知らないの?
「どうせやっていけなくて戻ってきたんだろうから、公爵家だって継いでも大してなにもできないだろ。これからは俺が公爵家を盛り上げてやる」
どこまでも上から目線だ。
公爵家領地・事業の運営がどれだけ難しいものか分かっていない。
立ち上がり、目の前のろくでなしに向かってはっきり告げた。
「たとえ公爵家を継いだとしても、あんたと結婚することはないわ。それに私は銀細工師になると決めたの。もういいでしょ? 早く帰って」
「銀細工だ? お前がつけてるこれだったよな?」
私が胸元につけていた銀細工を引きちぎられる。
それは私が手にした最初のバーツ様の作品だ。当時は珍しかったアクセサリーとしての銀細工。私をいつも支えてくれた。
「大したことないじゃないか。こんなもの」
「やめて!」
大きく腕をあげて叩き落とそうとするのを止める。
身長ではとてもじゃないけど敵わない。けど邪魔はできたのか、油断した元婚約者がポロっと銀細工を落とした。
すぐに落ちた銀細工をしゃがんで拾う。細工に欠けや傷はなかった。
「……よかった」
「なん、だよっ」
それがそんなに大事かよ、と不機嫌な色合いで叫ぶ。
「そんな遊び、いつまでもしてる場合かよ」
「遊びじゃないわ」
私もバーツ様も本気で銀細工と向き合っている。
「まったく……結婚したら躾が必要だな。そんな遊び、さっさとやめさせてやる」
「私は作り続けるわ。どんなことがあっても、銀細工はやめない」
意志を曲げない私に業を煮やしたのか元婚約者ヒャールタ・グングの顔が醜悪に歪んだ。そのまま片足が上がる。
「ふざけんなよ!」
銀細工を守らないと。
咄嗟に両手で銀細工を包み、胸元に寄せ身体を丸め蹴られるだろう衝撃を覚悟した。
元婚約者の突然の訪問だった。
関係ないのにどうして? そもそも部外者なのにノックもなしに入るって何?
「文化と貿易を学ぶために家を空けていたそうじゃないか! 俺のために自分を磨きに出たのだろう? お前の殊勝な努力、認めてやらなくもない」
「貴方のために家を出たわけではありません」
両親が外へ出すよう言ってもヒャールタ・グングは抵抗を続ける。
婚約破棄は済んでいることを伝えても全く引かなかった。
シャーラがこそっと教えてくれる。
「お姉様が家を出てから一度来たんです」
妹のシャーラと結婚する旨で来て門前払いされた。私が戻るのではという噂を聞いて今日話を持ち掛けたようで、フィーラ公爵家に戻るなら破棄した婚約を元に戻してもいいと言い始めたらしい。
「迷惑ね」
「そうなんです!」
「グング伯爵家とは話がついている。帰りなさい」
「おとうさま、大丈夫です。一度破棄された話はまるでなかったことにします。そうすればお互いの家に何も影響がない」
あの男におとうさまと呼ばれる御父様が可哀想ね。
「エーヴァが戻ってきたということは公爵家を継ぐのだろう? 放蕩娘であるお前の面倒は俺がみてやろう。俺がいれば公爵家は安泰だな」
「貴方がほしいのは公爵姓でしょう」
「エーヴァ?」
「公爵姓に領地、事業によって得たお金、あとこの屋敷」
どれもグング伯爵家では手に入らない。
「なんだ? 俺が嫌なのか?」
「その通りね」
元々婚約当時から馬が合わなかった。
「一度家を出た未婚の令嬢が簡単に結婚できると思ってるのか?」
余計なお世話だ。
「俺のように理解のある若くてできる男が必要だろう? 世継ぎも必要なんだからな」
表舞台に出ないよう計らってやる。そうすれば家を出た公爵家の汚名を晒さずに済む、と笑った。
どこまでも私を見下したいわけね。
「俺としてはどちらでも構わなかったが、まあ長女のお前でも妥協してやるよ」
シャーリー様の追放のために広まった長女が災いであるという根も葉もない噂のことね。
第二王子とシャーリー様の義妹が南の大陸の刑務所に入ってからはぱったり謂れのない噂が終息した。ソッケ王国は第一王太子の元で是正され、かつての異様な空気はなくなりつつある。
なのにこの元婚約者は何も知らないの?
「どうせやっていけなくて戻ってきたんだろうから、公爵家だって継いでも大してなにもできないだろ。これからは俺が公爵家を盛り上げてやる」
どこまでも上から目線だ。
公爵家領地・事業の運営がどれだけ難しいものか分かっていない。
立ち上がり、目の前のろくでなしに向かってはっきり告げた。
「たとえ公爵家を継いだとしても、あんたと結婚することはないわ。それに私は銀細工師になると決めたの。もういいでしょ? 早く帰って」
「銀細工だ? お前がつけてるこれだったよな?」
私が胸元につけていた銀細工を引きちぎられる。
それは私が手にした最初のバーツ様の作品だ。当時は珍しかったアクセサリーとしての銀細工。私をいつも支えてくれた。
「大したことないじゃないか。こんなもの」
「やめて!」
大きく腕をあげて叩き落とそうとするのを止める。
身長ではとてもじゃないけど敵わない。けど邪魔はできたのか、油断した元婚約者がポロっと銀細工を落とした。
すぐに落ちた銀細工をしゃがんで拾う。細工に欠けや傷はなかった。
「……よかった」
「なん、だよっ」
それがそんなに大事かよ、と不機嫌な色合いで叫ぶ。
「そんな遊び、いつまでもしてる場合かよ」
「遊びじゃないわ」
私もバーツ様も本気で銀細工と向き合っている。
「まったく……結婚したら躾が必要だな。そんな遊び、さっさとやめさせてやる」
「私は作り続けるわ。どんなことがあっても、銀細工はやめない」
意志を曲げない私に業を煮やしたのか元婚約者ヒャールタ・グングの顔が醜悪に歪んだ。そのまま片足が上がる。
「ふざけんなよ!」
銀細工を守らないと。
咄嗟に両手で銀細工を包み、胸元に寄せ身体を丸め蹴られるだろう衝撃を覚悟した。
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