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48話 バーツ様は私の婚約者です!
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「そんな金にならない名誉にもならないもの持っててどうすんだよ! いらねえだろ!」
「っ!」
蹴られると思って目を瞑る。避けようにもしゃがみこんだ状態からだと間に合わない。
「……?」
くると思った痛みはどこにもない。
恐る恐る目を開け見上げると元婚約者の足が止まっていた。いいえ、止められていた。
「なっ……」
「これ以上は許せない」
「……バーツ様」
バーツ様が私を覆うように膝をつき、片手で元婚約者の足首を掴んでいた。
力をいれるとミシミシとろくでなしの足首が音を立てる。
「ぐっ!」
足を引っ込めたヒャールタ・グングの顔が痛みに歪んでいる。
バーツ様のおかげか、少し距離をとれた。
優しい声が頭上から降りてくる。
「エーヴァ、怪我は?」
「……ありません」
バーツ様は? と掠れた声できくと「僕は全然」と笑った。次に鋭い視線でヒャールタ・グングを刺した。
「この銀細工は十五年前のものだから、多少の荒さはあるかもしれない」
けど、と力強く続ける。
「持ち主からすると思い入れのある大事なものだ。それを他人がどうこうしていいものではない」
あまりにも昔に作ったからと遠慮していた過去の銀細工を私の気持ちを優先し認めてくれた。バーツ様の優しさに泣きそうになる。いつだってバーツ様は私をないがしろにすることはなかった。
「そんなものの代わりはいくらでもあるだろうが。それに女は宝石の方が喜ぶだろ。見たところエーヴァに宝石のひとつも与えてないな?」
大したことない男だと笑う。
バーツ様を悪く言うなんて許せない。
「バーツ様の銀細工は宝石よりも価値があるわ!」
「なんだと?!」
「今、求められている銀細工に宝石以上の価値を見出だし大金を払ってでも手にしたいという貴族の方が多いもの。宝石と組み合わせても劣ることのない魅力があるわ」
実際、宝石を引き立てるための銀細工を求める人もいた。けど細工を作ってみると宝石が引き立てる側にまわることも度々あって難しい。
それを見て逆に銀細工をメインでと言われることもあった。銀細工はそれだけで価値がある。
「元々おかしな奴だと思ってたが……家を出てさらにおかしくなったか?」
おかしいのはそっちだ。
両親ですら流行りの情報を耳にして銀細工の急速な広がりを知っていた。この男はまだシャーリー様が失脚したあの瞬間で生きている。
「……ああ、医療院にぶちこむのも手だな? おかしくなって放浪してしまうなら仕方ないって線でいける」
「は?」
「ひとまずさっさと結婚だ。こっちは大変なんだよ」
第二王子がいなくなってから大変だったと言う。
新しくやろうとした事業に失敗し、ひどい目に遭ったと。
「こっちは金がねえんだよ。当面お前んとこの金で生活すんだから、こんなとこで揉めてる場合じゃないわけ」
公爵姓や領地・事業に加えて元々持っていた資産を使う気だったの?
こんなに強引に進めようとするの理由が分かった。
「どうせお前、俺のことまだ好きなんだろ? 意地張らなくていいんだぜ」
「は?」
さすがに勘違いがすぎて引くわ。
「私はあんたなんか好きじゃない。私が好きなのはバーツ様よ」
美しい銀細工と同じで美しい心を持っている方。
傷つきやすいけど、何度も立ち上がる強さがある人。
優しく、相手を慮れる。この人だから一緒にこれからもいたい。
「一時の過ちなら許してやる。だから」
「過ちですって?」
バーツ様を好きになることの何が過ちだというのよ。
「どうせこの男に身体売って稼いでたんだろう」
「は?」
バーツ様は賓客として私を迎えてくれた。
周囲も私を丁寧に大事に扱ってくれて、私は何も返せてないと思えるほどだ。
このろくでなしは無償でバーツ様の屋敷に居候していたことが考えられないらしい。身体で支払うという発想は自分の物差しでしかはかれないからね。
「いいよな、女は。身体を使えば簡単に稼げる」
御父様が震えていた。さすがに公爵家の名誉に関わるからだ。
「まあ今後は俺が可愛がってやる。安心しろ」
気持ち悪い。
舐めるような視線に吐き気だけが募った。
「な? いい加減にしろ。素直になれ」
「……」
「いい加減にするのは君の方だろう」
「バーツ様」
バーツ様が射貫くほど鋭い視線をヒャールタ・グングに向けている。
「エーヴァ嬢は魅力的な女性ではあるが、賓客として迎えた以上、貴殿の言うような扱いは断じてしてしない。それに清廉潔白なエーヴァ嬢がそのようなことをするとも考えない。これ以上、彼女の名誉を傷つけるようなら私が相手になる」
「なんだと!」
バーツ様が私のことを魅力的な女性だと言って、相手になると元婚約者に向き合うなんて。
やっぱりバーツ様しかいない。
銀細工のことは当然だけど、バーツ様とならリッケリの諸島管理であっても、フィーラ家の領地管理であっても一緒にやっていける。一緒に、隣に立てる。
「パッとしない男に言われる筋合いなんだよ!」
これ以上、ヒャールタ・グングがバーツ様を侮辱するのが許せない。
ぐいっとバーツ様の腕をとった。
驚いたバーツ様が私の名を呼ぶ。
「エーヴァ?」
「バーツ様は私の婚約者です!」
「えっ!?」
「え?」
「え?」
「まあ!! やっぱり!!」
「っ!」
蹴られると思って目を瞑る。避けようにもしゃがみこんだ状態からだと間に合わない。
「……?」
くると思った痛みはどこにもない。
恐る恐る目を開け見上げると元婚約者の足が止まっていた。いいえ、止められていた。
「なっ……」
「これ以上は許せない」
「……バーツ様」
バーツ様が私を覆うように膝をつき、片手で元婚約者の足首を掴んでいた。
力をいれるとミシミシとろくでなしの足首が音を立てる。
「ぐっ!」
足を引っ込めたヒャールタ・グングの顔が痛みに歪んでいる。
バーツ様のおかげか、少し距離をとれた。
優しい声が頭上から降りてくる。
「エーヴァ、怪我は?」
「……ありません」
バーツ様は? と掠れた声できくと「僕は全然」と笑った。次に鋭い視線でヒャールタ・グングを刺した。
「この銀細工は十五年前のものだから、多少の荒さはあるかもしれない」
けど、と力強く続ける。
「持ち主からすると思い入れのある大事なものだ。それを他人がどうこうしていいものではない」
あまりにも昔に作ったからと遠慮していた過去の銀細工を私の気持ちを優先し認めてくれた。バーツ様の優しさに泣きそうになる。いつだってバーツ様は私をないがしろにすることはなかった。
「そんなものの代わりはいくらでもあるだろうが。それに女は宝石の方が喜ぶだろ。見たところエーヴァに宝石のひとつも与えてないな?」
大したことない男だと笑う。
バーツ様を悪く言うなんて許せない。
「バーツ様の銀細工は宝石よりも価値があるわ!」
「なんだと?!」
「今、求められている銀細工に宝石以上の価値を見出だし大金を払ってでも手にしたいという貴族の方が多いもの。宝石と組み合わせても劣ることのない魅力があるわ」
実際、宝石を引き立てるための銀細工を求める人もいた。けど細工を作ってみると宝石が引き立てる側にまわることも度々あって難しい。
それを見て逆に銀細工をメインでと言われることもあった。銀細工はそれだけで価値がある。
「元々おかしな奴だと思ってたが……家を出てさらにおかしくなったか?」
おかしいのはそっちだ。
両親ですら流行りの情報を耳にして銀細工の急速な広がりを知っていた。この男はまだシャーリー様が失脚したあの瞬間で生きている。
「……ああ、医療院にぶちこむのも手だな? おかしくなって放浪してしまうなら仕方ないって線でいける」
「は?」
「ひとまずさっさと結婚だ。こっちは大変なんだよ」
第二王子がいなくなってから大変だったと言う。
新しくやろうとした事業に失敗し、ひどい目に遭ったと。
「こっちは金がねえんだよ。当面お前んとこの金で生活すんだから、こんなとこで揉めてる場合じゃないわけ」
公爵姓や領地・事業に加えて元々持っていた資産を使う気だったの?
こんなに強引に進めようとするの理由が分かった。
「どうせお前、俺のことまだ好きなんだろ? 意地張らなくていいんだぜ」
「は?」
さすがに勘違いがすぎて引くわ。
「私はあんたなんか好きじゃない。私が好きなのはバーツ様よ」
美しい銀細工と同じで美しい心を持っている方。
傷つきやすいけど、何度も立ち上がる強さがある人。
優しく、相手を慮れる。この人だから一緒にこれからもいたい。
「一時の過ちなら許してやる。だから」
「過ちですって?」
バーツ様を好きになることの何が過ちだというのよ。
「どうせこの男に身体売って稼いでたんだろう」
「は?」
バーツ様は賓客として私を迎えてくれた。
周囲も私を丁寧に大事に扱ってくれて、私は何も返せてないと思えるほどだ。
このろくでなしは無償でバーツ様の屋敷に居候していたことが考えられないらしい。身体で支払うという発想は自分の物差しでしかはかれないからね。
「いいよな、女は。身体を使えば簡単に稼げる」
御父様が震えていた。さすがに公爵家の名誉に関わるからだ。
「まあ今後は俺が可愛がってやる。安心しろ」
気持ち悪い。
舐めるような視線に吐き気だけが募った。
「な? いい加減にしろ。素直になれ」
「……」
「いい加減にするのは君の方だろう」
「バーツ様」
バーツ様が射貫くほど鋭い視線をヒャールタ・グングに向けている。
「エーヴァ嬢は魅力的な女性ではあるが、賓客として迎えた以上、貴殿の言うような扱いは断じてしてしない。それに清廉潔白なエーヴァ嬢がそのようなことをするとも考えない。これ以上、彼女の名誉を傷つけるようなら私が相手になる」
「なんだと!」
バーツ様が私のことを魅力的な女性だと言って、相手になると元婚約者に向き合うなんて。
やっぱりバーツ様しかいない。
銀細工のことは当然だけど、バーツ様とならリッケリの諸島管理であっても、フィーラ家の領地管理であっても一緒にやっていける。一緒に、隣に立てる。
「パッとしない男に言われる筋合いなんだよ!」
これ以上、ヒャールタ・グングがバーツ様を侮辱するのが許せない。
ぐいっとバーツ様の腕をとった。
驚いたバーツ様が私の名を呼ぶ。
「エーヴァ?」
「バーツ様は私の婚約者です!」
「えっ!?」
「え?」
「え?」
「まあ!! やっぱり!!」
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