魔王と呼ばれる元聖女の祝福はラッキースケベ(旧題:婚約破棄と処刑コンボを越えた先は魔王でした)

文字の大きさ
40 / 82

40話 パリピからパーティのお誘い

しおりを挟む
「アガるわー! 今日オールでパーティーしようぜ!」
「え?」
「すまない、イリニ」
「エフィ?」
「父上と母上は事故で一時異世界に行ったことがある。僅かな時間だったが、そこで世話になったのがぱりぴという人種らしくてな」

 話し方が少し変なんだ。とエフィ。

「パリピなの……」

 えぐいだの天アゲだのやたらテンション高い現代用語が飛び交う王と王妃を見て少し引いた。ひじりはオタクなのでパリピと真逆だよ。
 でも今の言葉を使ってる時点で時代が同じだ。
 よりにもよって、同じ時代同じ国日本のパリピとオタクが巡り合うとかなんなの。

「俺には未だ父上と母上の言う事が分からない時がある」
「ははは、だよねー」

 ギャル語はネットスラングからきてるものも多いから、オタクの聖の知識からでも十分両陛下の仰ることは分かるけど、ノリがやっぱり無理ねー。

「エフィ、このままだと徹夜でパーティされるみたいなんだけど?」
「なん、」
「今日だけでいいから! いっちゃんとパーティしたい!」
「その呼び方をどこで……」

 いっちゃんは湖の麓の村と王都の一部技術屋さんたちにしか使われない私の呼び名。
 ウェイウェイしてた王陛下の目がすっと細められ、冷淡な色合いが滲み出て背筋に緊張が走った。

「何も調べないまま謁見許すわけないでしょ?」
「それは、」

 つまり、私が関わっている全ての人間を洗ったのか。パリピだけど、一国の王としては冷静に物事を判断してる。
 というか落差。落差ありすぎて怖いよ。

「イリニ、断っても大丈夫だ」
「エフィ」
「いいじゃん」
「父上、いくら異世界の話が出来るからといって、砕けすぎでは」
「んー、てかこれだけお膳立てしたのに何も進んでない? ワンチャンあるんじゃなかったの?」
「父上!」

 こんな感じで聖女を囲えと言われていたの? それをエフィは真面目に捉えてやってきたの?
 そしたらすごすぎだよ、エフィの真面目さが。

「確かに手段問わず的な事言ったけどーそれなしってなったし? しゅきぴだって言」
「父上!」
「もー、ガンダしてったからなんだってずっと考えてたら、これなわけ?」
「もう! それ以上は!」

 親子の会話が不可思議になってる。
 ギャル語の語彙力がすごすぎるよ、王陛下ってば。

「あ、陛下」
「ん?」
「エフィと私との結婚は強制されないんですか?」

 ブフっとエフィが吹いた。
 王陛下はなぜかパチパチと目を瞬かせて、次にエフィを見て肩に手を置く。

「ぴえんヶ丘どすこい之助」
「話し方を戻して下さい!」
「エフィ、意味分かってるの?」

 どうやらエフィは察しているだけらしい。
 陛下は何がそんなに悲しいのかな? そんなきっついこときいてないのにな?

「まー最近知ったけどさ? 最初からしゅきぴだって言っ」
「父上!」
「えー?」

 んー、親子の会話はさておき、私のことはきちんと話しておいた方がいいかな?

「私、いずれ聖女ではなくなります。だからシコフォーナクセー国の王族との結婚は後々利にならないと考えていて」
「いやいーからー!」
「ええ……住民票移動と納税だけ済めばよろしいんで?」
「おけまる」
「分かりました……オールは出来かねますが、お酒は少量であれば飲んでも構いません」
「イリニ?!」

 両陛下が両手を上げて喜んでいる。
 エフィはいいのかと慌てていた。

「話を聞くだけよ。エフィも同席してくれるでしょ?」
「それは、もちろん、なんだが」

 嫌そうにパリピってる両陛下を見て小さく溜息を吐いた。

「ぱりぴのままの両親とはあまり酒を飲みたくない」
「私もパリピは苦手だけど仕様がないよ」

 アステリに連絡するか、と囁くと、どこからかアステリの声がした。
 きょろきょろする私に、エフィがこれだと自身の手首に巻いた組紐みたいなものを指さした。

「紐?」
「全部きいってからなー」
「へえ便利」
「ま、保険ってやつだな」

 もちろんいい雰囲気になったら通信切断すっからと笑う。
 それにエフィがアステリに怒ってたけど、そういうのが当たり前に出来てるって二人とも相当な魔法の使い手になる。すごいな主席。

「いっちゃん、用意できてたら呼ぶから」
「はい、陛下」
「かたっくるしいのなし」
「善処します」

 そしてあっさりと謁見が終了した。
 大きな扉をくぐれば、とっくに王と私の会話が非常によいもので終わったことが知れていて、周囲の雰囲気は格段に変化した。
 けど、奇異の目は変わらない。パリピがあまりにも濃ゆくて忘れてたわ。

「場所を変えよう」
「うん」

 というか、急なお泊りになるわけか。
 大丈夫なのだろうかとエフィに問えば、問題ないと即答だった。

「俺とカロが見張りもする」
「それはいいよ」
「駄目だ。この城の人間は俺とカロ以外は信用できないと思って」

 やっぱりオールだな、と思った。
 同じ徹夜でもエフィに見張りをお願いするぐらいなら、一緒にお酒飲んで徹夜する方が気兼ねない。

「そうだ、エフィ」
「どうした?」
「ここに一泊できるなら、明日寄りたいとこがあるんだけど」
「構わない」

 時間をとってくれると約束してくれた。
 どこだという問いに、王都の技術屋さんたちのことを伝える。
 正直、あのパリピの皮を被った王陛下に納得のいく嘆願書を提出した技術屋さんと村の皆には感謝しても足りない。きちんと顔を合わせたかった。

「ちょうどいい。俺も会いたいと思っていた。一緒に行く」
「うん、よろしく」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

【完結】真の聖女だった私は死にました。あなたたちのせいですよ?

恋愛
聖女として国のために尽くしてきたフローラ。 しかしその力を妬むカリアによって聖女の座を奪われ、顔に傷をつけられたあげく、さらには聖女を騙った罪で追放、彼女を称えていたはずの王太子からは婚約破棄を突きつけられてしまう。 追放が正式に決まった日、絶望した彼女はふたりの目の前で死ぬことを選んだ。 フローラの亡骸は水葬されるが、奇跡的に一命を取り留めていた彼女は船に乗っていた他国の騎士団長に拾われる。 ラピスと名乗った青年はフローラを気に入って自分の屋敷に居候させる。 記憶喪失と顔の傷を抱えながらも前向きに生きるフローラを周りは愛し、やがてその愛情に応えるように彼女のほんとうの力が目覚めて……。 一方、真の聖女がいなくなった国は滅びへと向かっていた── ※小説家になろうにも投稿しています いいねやエール嬉しいです!ありがとうございます!

追放聖女の再就職 〜長年仕えた王家からニセモノと追い出されたわたしですが頑張りますね、魔王さま!〜

三崎ちさ
恋愛
メリアは王宮に勤める聖女、だった。 「真なる聖女はこの世に一人、エミリーのみ! お前はニセモノだ!」 ある日突然いきりたった王子から国外追放、そして婚約破棄もオマケのように言い渡される。 「困ったわ、追放されても生きてはいけるけど、どうやってお金を稼ごうかしら」 メリアには病気の両親がいる。王宮で聖女として働いていたのも両親の治療費のためだった。国の外には魔物がウロウロ、しかし聖女として活躍してきたメリアには魔物は大した脅威ではない。ただ心配なことは『お金の稼ぎ方』だけである。 そんな中、メリアはひょんなことから封印されていたはずの魔族と出会い、魔王のもとで働くことになる。 「頑張りますね、魔王さま!」 「……」(かわいい……) 一方、メリアを独断で追放した王子は父の激昂を招いていた。 「メリアを魔族と引き合わせるわけにはいかん!」 国王はメリアと魔族について、何か秘密があるようで……? 即オチ真面目魔王さまと両親のためにお金を稼ぎたい!ニセモノ疑惑聖女のラブコメです。 ※小説家になろうさんにも掲載

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります

cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。 聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。 そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。 村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。 かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。 そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。 やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき—— リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。 理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、 「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、 自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...