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61話 弟殿下のエスコート
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「汚れなくてよかった」
「必要なら新しい物を用意させるさ」
「いいよ」
もったいないし。
今回は王陛下から正式にダンスパーティー誘われたからきちんとしてきただけで、気軽に呼ばれるものならいつものパンツスタイルにするし、それこそこの前頂いたワンピースでもいいわけで。
「父上はまだみたいだな」
「もうすぐぽいけど」
会場に戻るとダンスは一旦中断されていた。陛下がいらっしゃるであろう場所を基点に人が集まり始めている。
「兄様」
「アネシス」
いつぞやの弟殿下がやってきた。
エフィに会えて嬉しそう。にっこにこだ。
「上の兄様達が」
「ああ、そうか」
ちらりと私を見る両者。このタイプは私が同伴しない方がいいやつかな?
「行ってきていいよ?」
「駄目だ。一人になるだろ」
せめてカロとアステリをとエフィは言うけど、二人の姿はぱっと見た感じない。カーリーも見えないし、マリッサはアステリの転移で山の城に戻った。
すると目の前にいた弟殿下が破顔した。
「なら僕がエスコートします!」
「……」
うっわ、エフィ顔がひどい。聖の記憶にあるなんとかスナギツネみたいだよ。嫌そうなのは分かるけど、そんなあからさまにしなくてもよくない?
「他の男が寄るよりマシじゃないですか?」
「……」
「大丈夫ですって、僕は手出しませんよ」
「……ぐぐ」
すごく唸ってる。そんなに悩むことなの。
「エフィ、行きなって」
「……」
「私が一緒じゃない方がいいんでしょ?」
唸ってる唸ってる。ここはアネシスにアシストをお願いしようかな。
「殿下も私のことはお気になさらず、お二人でどうぞ」
「えー? 聖女様、僕はお嫌ですか?」
「嫌ではありませんしもったいない程ですが、ご兄弟揃ってお話したいこともありましょう?」
「上の兄様達は僕に用ないんで」
きっぱり言い切る。二人で行った方がマシだと思ったのに。
「兄様も聖女様お一人だけにご挨拶回りさせたくないでしょ? 父様が来るまでに話を終わらせておきたいみたいなので、今しかないんです」
「……」
「エフィ」
「……分かった」
両手をとられ持ち上げられ、エフィが上半身屈んで額を寄せた。
「すぐ戻る」
「そんな今生の別れじゃないんだから」
「イリニ」
顔を上げて耳元に寄せれる。
待った。端から見たらキスをしてるように見えちゃうじゃない。
「嫌になったらすぐに外に出るんだ」
「分かってるって」
分かってない、と納得いかない顔して目を細める。何かあれば俺を呼べとも加えて、その場を後にした。離れるだけでこんなに時間と葛藤必要?
「ふふふ」
見送りながら愉快そうに笑う弟殿下。
「殿下、ご挨拶が遅れました」
「ん? 堅苦しいのはいいですよ。貴方の事はよく知ってますし」
「しかし」
「ではイリニさんと呼ばせて下さい」
「え、あ、構いませんが」
「僕の事はアネシスと」
にこにこしたままのアネシス。エフィとは全然違う。パネモルフィ家の持つ瞳の色だけが同じ。
「にしても、ふふふ、やっぱり兄様本気だったんだ」
あの兄様が~と笑みを深くするアネシス。
「あの」
「はい」
「もしかして、わざと離しました?」
少し目を開き、おやと小さく囁く。
次に冷静な色合いを含めつつ私を静かに見つめた。この人、王陛下似だな。
「上の兄様達が呼んでいたのは本当ですよ? まあチャンスだとは思ったんで、イリニさんのエスコートに立候補しましたけど」
「……なぜですか?」
ふふふと相変わらず笑っている。
エフィは真逆だったなあと山の城に来たばかりの頃を思いだした。笑うようになったの最近だし。
「兄様をここまで夢中にさせた女性ってどんな人なのかなって」
「む、夢中」
「一瞬でも離れたくないみたいな兄様見たこともなかったんで面白いです」
「そう、ですか」
エフィたら、駄々をこねる子供みたいだったなと思いつつも、こういう場を望まない私のことを考えてるんだろうなと思うとむず痒くなる。
けど聖女として来ないだけで気持ちは全然違った。エフィが守ってくれるのもあってか、とても楽に過ごせてる。まあさっきの女性に囲まれてるのは嫌な気持ちになったけど。
「兄様のこと、エフィって呼んでるんですね」
「……あ」
またしてもやってしまった。公的な場なのに、エフィの前だからって砕けすぎてた。ましてやエフィの弟、王太子殿下が目の前にいたのに。
「あ、いいですよ~。兄様もその方がいいでしょうし」
「私、そんなつもりは」
「ふふふ、イリニさん可愛いですね」
「はい?」
臆面もなく言ってのける。エフィんとこってもしかして、女性遊び系揃ってるの?
出会い頭くどくの当たり前なんじゃないの?
「聖女様の頃はそれはそれでお綺麗でした。あ、勿論今もお綺麗なんですが、今は隙があって可愛らしさが加わったと言いますか」
「ええと」
「兄様と一緒にいるとイリニさんの持つ空気が柔らかいんですよね~」
「……お、おう、」
意識してないところでそんなことになってたの。恥ずかしいわ。あからさますぎる。
「兄様も女性を連れて歩く中で、あんなに嬉しそうで浮足立ってるの初めてです。緊張もしてて兄様じゃない人見てるようでした」
ぱっと見、エフィはそんな変わったように見えなかったけど。
「必要なら新しい物を用意させるさ」
「いいよ」
もったいないし。
今回は王陛下から正式にダンスパーティー誘われたからきちんとしてきただけで、気軽に呼ばれるものならいつものパンツスタイルにするし、それこそこの前頂いたワンピースでもいいわけで。
「父上はまだみたいだな」
「もうすぐぽいけど」
会場に戻るとダンスは一旦中断されていた。陛下がいらっしゃるであろう場所を基点に人が集まり始めている。
「兄様」
「アネシス」
いつぞやの弟殿下がやってきた。
エフィに会えて嬉しそう。にっこにこだ。
「上の兄様達が」
「ああ、そうか」
ちらりと私を見る両者。このタイプは私が同伴しない方がいいやつかな?
「行ってきていいよ?」
「駄目だ。一人になるだろ」
せめてカロとアステリをとエフィは言うけど、二人の姿はぱっと見た感じない。カーリーも見えないし、マリッサはアステリの転移で山の城に戻った。
すると目の前にいた弟殿下が破顔した。
「なら僕がエスコートします!」
「……」
うっわ、エフィ顔がひどい。聖の記憶にあるなんとかスナギツネみたいだよ。嫌そうなのは分かるけど、そんなあからさまにしなくてもよくない?
「他の男が寄るよりマシじゃないですか?」
「……」
「大丈夫ですって、僕は手出しませんよ」
「……ぐぐ」
すごく唸ってる。そんなに悩むことなの。
「エフィ、行きなって」
「……」
「私が一緒じゃない方がいいんでしょ?」
唸ってる唸ってる。ここはアネシスにアシストをお願いしようかな。
「殿下も私のことはお気になさらず、お二人でどうぞ」
「えー? 聖女様、僕はお嫌ですか?」
「嫌ではありませんしもったいない程ですが、ご兄弟揃ってお話したいこともありましょう?」
「上の兄様達は僕に用ないんで」
きっぱり言い切る。二人で行った方がマシだと思ったのに。
「兄様も聖女様お一人だけにご挨拶回りさせたくないでしょ? 父様が来るまでに話を終わらせておきたいみたいなので、今しかないんです」
「……」
「エフィ」
「……分かった」
両手をとられ持ち上げられ、エフィが上半身屈んで額を寄せた。
「すぐ戻る」
「そんな今生の別れじゃないんだから」
「イリニ」
顔を上げて耳元に寄せれる。
待った。端から見たらキスをしてるように見えちゃうじゃない。
「嫌になったらすぐに外に出るんだ」
「分かってるって」
分かってない、と納得いかない顔して目を細める。何かあれば俺を呼べとも加えて、その場を後にした。離れるだけでこんなに時間と葛藤必要?
「ふふふ」
見送りながら愉快そうに笑う弟殿下。
「殿下、ご挨拶が遅れました」
「ん? 堅苦しいのはいいですよ。貴方の事はよく知ってますし」
「しかし」
「ではイリニさんと呼ばせて下さい」
「え、あ、構いませんが」
「僕の事はアネシスと」
にこにこしたままのアネシス。エフィとは全然違う。パネモルフィ家の持つ瞳の色だけが同じ。
「にしても、ふふふ、やっぱり兄様本気だったんだ」
あの兄様が~と笑みを深くするアネシス。
「あの」
「はい」
「もしかして、わざと離しました?」
少し目を開き、おやと小さく囁く。
次に冷静な色合いを含めつつ私を静かに見つめた。この人、王陛下似だな。
「上の兄様達が呼んでいたのは本当ですよ? まあチャンスだとは思ったんで、イリニさんのエスコートに立候補しましたけど」
「……なぜですか?」
ふふふと相変わらず笑っている。
エフィは真逆だったなあと山の城に来たばかりの頃を思いだした。笑うようになったの最近だし。
「兄様をここまで夢中にさせた女性ってどんな人なのかなって」
「む、夢中」
「一瞬でも離れたくないみたいな兄様見たこともなかったんで面白いです」
「そう、ですか」
エフィたら、駄々をこねる子供みたいだったなと思いつつも、こういう場を望まない私のことを考えてるんだろうなと思うとむず痒くなる。
けど聖女として来ないだけで気持ちは全然違った。エフィが守ってくれるのもあってか、とても楽に過ごせてる。まあさっきの女性に囲まれてるのは嫌な気持ちになったけど。
「兄様のこと、エフィって呼んでるんですね」
「……あ」
またしてもやってしまった。公的な場なのに、エフィの前だからって砕けすぎてた。ましてやエフィの弟、王太子殿下が目の前にいたのに。
「あ、いいですよ~。兄様もその方がいいでしょうし」
「私、そんなつもりは」
「ふふふ、イリニさん可愛いですね」
「はい?」
臆面もなく言ってのける。エフィんとこってもしかして、女性遊び系揃ってるの?
出会い頭くどくの当たり前なんじゃないの?
「聖女様の頃はそれはそれでお綺麗でした。あ、勿論今もお綺麗なんですが、今は隙があって可愛らしさが加わったと言いますか」
「ええと」
「兄様と一緒にいるとイリニさんの持つ空気が柔らかいんですよね~」
「……お、おう、」
意識してないところでそんなことになってたの。恥ずかしいわ。あからさますぎる。
「兄様も女性を連れて歩く中で、あんなに嬉しそうで浮足立ってるの初めてです。緊張もしてて兄様じゃない人見てるようでした」
ぱっと見、エフィはそんな変わったように見えなかったけど。
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