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62話 婚約発表
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「僕は僕でイリニさんにお近づきになりたかったのもありましたが、結果的にうまくいったみたいですね」
「え?」
「パノキカトの、イリニさんの元婚約者がずっとこちらを見ていますので」
「うっわ」
むしろ睨み付けてるでしょ、あれ。というか、そこまでする?
隣のピラズモス男爵令嬢が話しかければ途端だらしなく顔を崩す。そのままうまくコントロールしてて、お嬢さん。もう関係ないし、睨まれたくもない。
「はあ」
「どうした、何があった」
「!」
兄様、と嬉しそうにするアネシス。
背後から現れたエフィは不機嫌だった。
「アネシス」
「違いますよ。僕は楽しくイリニさんとお話ししてました」
名前、と聞こえるか聞こえないかの声でエフィが囁く。
「本当だよ。アネシスと話してただけで、他の人に話しかけられることもなかったから」
名前、と再び囁くエフィ。なんなの。
「機嫌悪いな」
「エフィ、彼女も困ってるぞ」
エフィの背後からさらに聞こえた声に視線をずらすと、二人の男性が前に出てきた。
「え、」
「ああ、イリニ。紹介が遅れたな。上の兄達だ。姉は父上と一緒だから、ここにはいないが」
「ご、ご挨拶が遅れました」
「ああ、必要ないよ」
「君の事はよく知ってるし、君がパノキカトにいた頃は顔を合わせることも多かったしな」
第一王太子殿下に第二王太子殿下。まさか連れてくるなんて。
兄弟の会話をしてくるだけじゃなかったの。
「んー、本当だ」
「アネシスの言った通りだな」
「でしょう?」
「?」
私を見てにこにこしてる男三人。
見かねてか、エフィが私と王太子殿下たちの間に入ってきた。
「兄上、アネシス」
「エフィ、私は大丈夫だから」
「駄目だ。近すぎるし不躾にも程がある」
「ぶふ」
「うけるな」
「兄様良かったです」
三者三様の反応。
間に入ったことで、今度はエフィが三人からじろじろ見られている。
「父様が嬉しそうなわけです」
「ああ、私達としても一安心だな」
「ふむ、随分変わったとは思っていたが、ここまでとは」
「もういいでしょう? 父上が来ますので早く戻って下さい」
挨拶すらしてないのにこれで終わるの? いくらなんでもよくないんじゃ?
「なんだ? 途端器量が乏しくなったな」
「兄上!」
「恋は盲目かあ」
「兄上!」
「僕は兄様のことを応援してますよ!」
「あー……」
エフィに言われて大人しく去ろうとする殿下たち。
「あの、」
「父上の挨拶があるから、その後にでも」
「駄目だ」
「うわ」
「はは、笑える」
愉快そうに笑って去っていく。その先はそれぞれの王太子妃の元だった。アネシスは別の場所へ行ったのか見えなくなってしまう。さすがに兄弟揃ってるところに挨拶なしはよくないのではと思い、エフィの名を呼んだところに王陛下の入場が重なった。
王陛下、王妃殿下、第一王女殿下を伴って現れる。
三国恒例のダンスパーティー、いつも通りの挨拶が降りてきて、いつも通りの言葉で締めくくられる。
そして最後に私の住民票移動についての話がきた。
「パノキカトの聖女だった女性がシコフォーナクセーの民になった事は周知の事実かと思う。我が国としてもパノキカトとエクセロスレヴォ、三国間の交流をより深める為に民の居住の意志を尊重していきたいと考えている」
さすが。三国間の関わりの為に必要な移動だったと思わせる言い方だった。さらに言葉を続ける。
「我が息子もこんなに美しい女性と婚約出来、大変喜ばしい限りだ。こちらは後々正式に皆に披露目することが出来るだろう」
ざわつく場とこちらに集まる視線。
エフィ、パリピにどういう話の持っていき方したの。
元婚約者に話した手前、引くことはできないのはわかるけど、婚約したってなった。住民票移動の話だけでよかったはず。
「しかし今日はまた一つ慶び事がある。我が娘とエクセロスレヴォの王太子との婚約が正式に決まった」
王陛下の側にいた王女殿下が前に出て、そしてエクセロスレヴォの王太子殿下と並んだ。
おかげで私とエフィの婚約話が霞む。うっかりエフィが元婚約者に言っちゃった内容だって分かってて話し方考えたの?
「イリニ、姉の所へ行っても?」
「うん大丈夫。お祝いしたいし」
王陛下が去って王女殿下にご挨拶だ。
幸い上の王太子殿下二人とアネシスが既に二人を囲んでいたので、私とエフィもするりとご挨拶の中に入れた。
「エフィ」
「姉上、此度はおめでとうございます」
形式的な挨拶を済ませ、祝辞を述べる。
にっこり微笑むお姉さま眩しいわ。美女。間違いなく美女。
王妃殿下に似た華やかさをもっていて、目を細めて笑う表情がエフィによく似ていた。
「ふふ、ありがと。貴方にもおめでとうと言うべき?」
「今日は姉上の為にあるものなので」
「遠慮しなくてもいいのに。皆の憧れの聖女様がフリーになった途端ゲットしちゃって。抜け目ないわよねえ?」
と、なぜか私に話を振る王女殿下。こたえづらいのですが。
「イリニを困らせないで下さい」
「え? 周囲は貴方達に話を聞きたくて仕方ないのよ? 山の城に籠って中々御目にかかれない聖女様がシコフォーナクセーの民になって、貴方と婚約したって」
「それを事実だと周知すれば済む話じゃないですか」
「やあねえ、当人から話を聞いて盛り上がりたいの」
恋ばな的な意味で。
そういうことなんだろうなあ。二人の王太子妃も頷いてるし。
いつの時代も女性の好きなものは恋ばなで間違いない。
「え?」
「パノキカトの、イリニさんの元婚約者がずっとこちらを見ていますので」
「うっわ」
むしろ睨み付けてるでしょ、あれ。というか、そこまでする?
隣のピラズモス男爵令嬢が話しかければ途端だらしなく顔を崩す。そのままうまくコントロールしてて、お嬢さん。もう関係ないし、睨まれたくもない。
「はあ」
「どうした、何があった」
「!」
兄様、と嬉しそうにするアネシス。
背後から現れたエフィは不機嫌だった。
「アネシス」
「違いますよ。僕は楽しくイリニさんとお話ししてました」
名前、と聞こえるか聞こえないかの声でエフィが囁く。
「本当だよ。アネシスと話してただけで、他の人に話しかけられることもなかったから」
名前、と再び囁くエフィ。なんなの。
「機嫌悪いな」
「エフィ、彼女も困ってるぞ」
エフィの背後からさらに聞こえた声に視線をずらすと、二人の男性が前に出てきた。
「え、」
「ああ、イリニ。紹介が遅れたな。上の兄達だ。姉は父上と一緒だから、ここにはいないが」
「ご、ご挨拶が遅れました」
「ああ、必要ないよ」
「君の事はよく知ってるし、君がパノキカトにいた頃は顔を合わせることも多かったしな」
第一王太子殿下に第二王太子殿下。まさか連れてくるなんて。
兄弟の会話をしてくるだけじゃなかったの。
「んー、本当だ」
「アネシスの言った通りだな」
「でしょう?」
「?」
私を見てにこにこしてる男三人。
見かねてか、エフィが私と王太子殿下たちの間に入ってきた。
「兄上、アネシス」
「エフィ、私は大丈夫だから」
「駄目だ。近すぎるし不躾にも程がある」
「ぶふ」
「うけるな」
「兄様良かったです」
三者三様の反応。
間に入ったことで、今度はエフィが三人からじろじろ見られている。
「父様が嬉しそうなわけです」
「ああ、私達としても一安心だな」
「ふむ、随分変わったとは思っていたが、ここまでとは」
「もういいでしょう? 父上が来ますので早く戻って下さい」
挨拶すらしてないのにこれで終わるの? いくらなんでもよくないんじゃ?
「なんだ? 途端器量が乏しくなったな」
「兄上!」
「恋は盲目かあ」
「兄上!」
「僕は兄様のことを応援してますよ!」
「あー……」
エフィに言われて大人しく去ろうとする殿下たち。
「あの、」
「父上の挨拶があるから、その後にでも」
「駄目だ」
「うわ」
「はは、笑える」
愉快そうに笑って去っていく。その先はそれぞれの王太子妃の元だった。アネシスは別の場所へ行ったのか見えなくなってしまう。さすがに兄弟揃ってるところに挨拶なしはよくないのではと思い、エフィの名を呼んだところに王陛下の入場が重なった。
王陛下、王妃殿下、第一王女殿下を伴って現れる。
三国恒例のダンスパーティー、いつも通りの挨拶が降りてきて、いつも通りの言葉で締めくくられる。
そして最後に私の住民票移動についての話がきた。
「パノキカトの聖女だった女性がシコフォーナクセーの民になった事は周知の事実かと思う。我が国としてもパノキカトとエクセロスレヴォ、三国間の交流をより深める為に民の居住の意志を尊重していきたいと考えている」
さすが。三国間の関わりの為に必要な移動だったと思わせる言い方だった。さらに言葉を続ける。
「我が息子もこんなに美しい女性と婚約出来、大変喜ばしい限りだ。こちらは後々正式に皆に披露目することが出来るだろう」
ざわつく場とこちらに集まる視線。
エフィ、パリピにどういう話の持っていき方したの。
元婚約者に話した手前、引くことはできないのはわかるけど、婚約したってなった。住民票移動の話だけでよかったはず。
「しかし今日はまた一つ慶び事がある。我が娘とエクセロスレヴォの王太子との婚約が正式に決まった」
王陛下の側にいた王女殿下が前に出て、そしてエクセロスレヴォの王太子殿下と並んだ。
おかげで私とエフィの婚約話が霞む。うっかりエフィが元婚約者に言っちゃった内容だって分かってて話し方考えたの?
「イリニ、姉の所へ行っても?」
「うん大丈夫。お祝いしたいし」
王陛下が去って王女殿下にご挨拶だ。
幸い上の王太子殿下二人とアネシスが既に二人を囲んでいたので、私とエフィもするりとご挨拶の中に入れた。
「エフィ」
「姉上、此度はおめでとうございます」
形式的な挨拶を済ませ、祝辞を述べる。
にっこり微笑むお姉さま眩しいわ。美女。間違いなく美女。
王妃殿下に似た華やかさをもっていて、目を細めて笑う表情がエフィによく似ていた。
「ふふ、ありがと。貴方にもおめでとうと言うべき?」
「今日は姉上の為にあるものなので」
「遠慮しなくてもいいのに。皆の憧れの聖女様がフリーになった途端ゲットしちゃって。抜け目ないわよねえ?」
と、なぜか私に話を振る王女殿下。こたえづらいのですが。
「イリニを困らせないで下さい」
「え? 周囲は貴方達に話を聞きたくて仕方ないのよ? 山の城に籠って中々御目にかかれない聖女様がシコフォーナクセーの民になって、貴方と婚約したって」
「それを事実だと周知すれば済む話じゃないですか」
「やあねえ、当人から話を聞いて盛り上がりたいの」
恋ばな的な意味で。
そういうことなんだろうなあ。二人の王太子妃も頷いてるし。
いつの時代も女性の好きなものは恋ばなで間違いない。
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