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72話 ラッキースケベを残すべき
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「暴走しないようなシステム作りができれば、それはいい案だな」
リーサも聖の意見に頷いた。
もっと言うなら、そこからさらに細分化して組織化して横広がりにすればいいじゃないですかと聖は続けた。
暴走は精霊王の感情の問題だから、そこはリーサがストッパーとして立ち回れば可能だ。一人で背負うより断然いい。
それに少し考えた精霊王は頷きやってみようと応えた。
「やる事が決まったな」
「そうだね、リーサ」
暴走したサラマンダーの弱体化だ。
精霊王とつながりが持てるまで力を弱める。
「え、待って下さい! そしたらリーサと精霊王でカップル誕生の大団円的な感じですか? 最高じゃないですか?!」
「落ち着け、聖」
「これが落ち着いてられますか!」
ん百年後の恋の成就とか神ってますよと身振り手振り大きく訴えるけど、当の二人にはいまいち伝わってないらしい。
「あ、ここで会えたので一緒に話しておきたいんですけど」
「どうした、イリニ」
「私の祝福なしにしてもらいたくて」
時間の流れも違うことだし、覚えている内にお願いしておこう。
「ああ、リーサと聖の意識が君から離れるとなくなるよ」
「え、そんなあっさり?」
「因果の強い繋がりがなくなるからね」
そしたらサラマンダーをどうにかしてから、二人と別れれば、今回の事も解決できて且つ私も望み通り聖女をやめて普通の令嬢に戻れる。
「聖女制度も廃止にするか?」
「リーサ?」
「今回の大本の原因が聖女なら聖女制度はやめた方がいいだろう」
これで次の聖女が決まれば同じことが起きる可能性がある。なら聖女をなくして新しい体制を築いた方がいいだろうと言った。精霊王も頷く。
「なら戻った時に神官長通してパノキカト王陛下に伝えればいっか」
「俺も手伝おう」
「ありがと」
王族であるエフィの言葉があれば安心だろう。
話がすんなり纏まっていいなあ。まあ現実戻ったらサラマンダーどうにかしなきゃだから大変なんだけど。
「あ、リーサはともかく聖はこれからどうするの?」
「あー、それですね~ちょっと決めかねてまして」
転生してやり直す人生もありだろうという思いもあり、この世界を見てみたい思いもあるという。けれど、この意識の世界にいるのは拒否した。
曰く、リーサと精霊王二人の世界を邪魔するわけにいかない。様子は見ていたいですがと最後は聖らしい言葉で締めくくられる。
「一時的に精霊と似た存在になって、この世界に残ることも出来るけど?」
「本当ですか?!」
さすが精霊王! 神ってる! と興奮して前のめりになる聖に対して、少し引きながら精霊王が応えた。
「そこで転生したいって思えば転生も可能だし、世界を見続けたいならそれも可能だよ」
「成程」
「存在が精霊よりだから、同じ精霊と話が出来るし魔物とも話せるよ」
「最高じゃないですか?」
ついでなんで落ち着くまで他の元素精霊の監視もしますよ~と聖は笑う。
「聖、いいの?」
「仕事しないでバカンスだけをどうぞっていうと落ち着かないので」
それなら喜んでと精霊王は聖に仕事を任せる。こうして少しずつ色んな人と助け合って一人で抱えることを手放していければいいと思う。
そうなると二人とはお別れになる。会おうと思えば会えるけど、意識を溶け合っていたからとても近い所にいた。だからこそ、自分の一部が剥がれて離れていくような感覚だ。
淋しさを感じて感傷に浸っていたら、エフィが肩を抱いて引き寄せた。
「エフィ?」
「淋しいだろ?」
んんんっと聖が声にならない叫びをあげた。手で口元をおさえているから大きく響くわけでもないし、今までのラッキースケベも知っている面子だからマシだけど、あまり人前でやらないでほしい。
「私との別れを惜しんでくれるのも嬉しいし、ラッキースケベなしにイリニの淋しさを理解するエフィさんも最高すぎますね!」
「落ち着け、聖」
リーサが呆れたように聖を見る。精霊王が聖に苦笑しつつ、こちらを見て続けた。
「与えた祝福の残りを考えると、確かに前よりは強いんだよね。以前のレベルまで落とす?」
「制御できるならいいかなとは思ってるけど」
じっと私を見つめた精霊王が自身の顎に手を添えた。
「んーまあ純粋に与えた分だけで考えるなら、今までの万分の一ぐらいになるかな? 恋のライバルモードとかラッキースケベは制御できないまま残っちゃう」
「そこは消そう」
「駄目だ」
「エフィ?!」
ここに来てエフィが主張するなんてどういうこと? しかもラッキースケベに対して?
「イリニはまだ素直に自分の気持ちを言わないだろう? 出来るようになるまではラッキースケベを残すべきだ」
「なんで?!」
ないほうがいいじゃん。無差別テロ起きるよ?
「まあ周囲に拡散するぐらい強いのは起きないし、いっか」
「だめだよ、精霊王!」
「既にラッキースケベは彼にしか起きないだろう? いいじゃないか」
「リーサまで?」
「恋のライバルモードなんて静電気程度ですしね! 暴力女子モードもエフィさんだけですし! ラッキースケベあると潤うんで私もあった方が俄然よきです~」
「聖……」
離れたらラッキースケベとか見ることも知ることも、そうできないのに?
「いいんです、今妄想できればそれで! 耐えられなくなったら、そちらに行くまで!」
「逞しい……」
「お任せ下さい! 自信があります!」
聖の強さは本当変わらない。尊いものがあれば生きていけると楽しそうに笑っていた。
「では王よ、残して頂けると?」
「いいよ」
私を置いてけぼりで話まとめないでってば。てかエフィの念の為がすぎる。
「ああ、よかった」
「感無量みたいな顔しないでよ」
私の意思を尊重してよ。
ラッキースケベに赤面してたくせに、それがないと困るなんておかしい。
「じゃあそろそろ戻ろうかな」
「サラマンダーなんてイリニの俺つえええモードで一発です! 安心して下さい!」
「国壊さないようにうまくやるよ」
「そうだね。まだリーサと聖と繋がっている以上、力加減はしないと」
ごめんね、任せきりで、と精霊王が申し訳なさそうに謝る。
「ううん。一人で悩まないで助けを求めていいんだよ」
「イリニ」
「私はそれをエフィに教えてもらった」
だからみんなで解決して大団円を迎えよう、とそれぞれを見れば、往々にして笑って頷いてくれる。
一人じゃなくても大丈夫。弱音を吐いても大丈夫だ。全部エフィが、戻った先の世界の皆が教えてくれた。
「行こう」
再び意識が溶け合って、エフィと一緒に意識の世界から離れた。
リーサも聖の意見に頷いた。
もっと言うなら、そこからさらに細分化して組織化して横広がりにすればいいじゃないですかと聖は続けた。
暴走は精霊王の感情の問題だから、そこはリーサがストッパーとして立ち回れば可能だ。一人で背負うより断然いい。
それに少し考えた精霊王は頷きやってみようと応えた。
「やる事が決まったな」
「そうだね、リーサ」
暴走したサラマンダーの弱体化だ。
精霊王とつながりが持てるまで力を弱める。
「え、待って下さい! そしたらリーサと精霊王でカップル誕生の大団円的な感じですか? 最高じゃないですか?!」
「落ち着け、聖」
「これが落ち着いてられますか!」
ん百年後の恋の成就とか神ってますよと身振り手振り大きく訴えるけど、当の二人にはいまいち伝わってないらしい。
「あ、ここで会えたので一緒に話しておきたいんですけど」
「どうした、イリニ」
「私の祝福なしにしてもらいたくて」
時間の流れも違うことだし、覚えている内にお願いしておこう。
「ああ、リーサと聖の意識が君から離れるとなくなるよ」
「え、そんなあっさり?」
「因果の強い繋がりがなくなるからね」
そしたらサラマンダーをどうにかしてから、二人と別れれば、今回の事も解決できて且つ私も望み通り聖女をやめて普通の令嬢に戻れる。
「聖女制度も廃止にするか?」
「リーサ?」
「今回の大本の原因が聖女なら聖女制度はやめた方がいいだろう」
これで次の聖女が決まれば同じことが起きる可能性がある。なら聖女をなくして新しい体制を築いた方がいいだろうと言った。精霊王も頷く。
「なら戻った時に神官長通してパノキカト王陛下に伝えればいっか」
「俺も手伝おう」
「ありがと」
王族であるエフィの言葉があれば安心だろう。
話がすんなり纏まっていいなあ。まあ現実戻ったらサラマンダーどうにかしなきゃだから大変なんだけど。
「あ、リーサはともかく聖はこれからどうするの?」
「あー、それですね~ちょっと決めかねてまして」
転生してやり直す人生もありだろうという思いもあり、この世界を見てみたい思いもあるという。けれど、この意識の世界にいるのは拒否した。
曰く、リーサと精霊王二人の世界を邪魔するわけにいかない。様子は見ていたいですがと最後は聖らしい言葉で締めくくられる。
「一時的に精霊と似た存在になって、この世界に残ることも出来るけど?」
「本当ですか?!」
さすが精霊王! 神ってる! と興奮して前のめりになる聖に対して、少し引きながら精霊王が応えた。
「そこで転生したいって思えば転生も可能だし、世界を見続けたいならそれも可能だよ」
「成程」
「存在が精霊よりだから、同じ精霊と話が出来るし魔物とも話せるよ」
「最高じゃないですか?」
ついでなんで落ち着くまで他の元素精霊の監視もしますよ~と聖は笑う。
「聖、いいの?」
「仕事しないでバカンスだけをどうぞっていうと落ち着かないので」
それなら喜んでと精霊王は聖に仕事を任せる。こうして少しずつ色んな人と助け合って一人で抱えることを手放していければいいと思う。
そうなると二人とはお別れになる。会おうと思えば会えるけど、意識を溶け合っていたからとても近い所にいた。だからこそ、自分の一部が剥がれて離れていくような感覚だ。
淋しさを感じて感傷に浸っていたら、エフィが肩を抱いて引き寄せた。
「エフィ?」
「淋しいだろ?」
んんんっと聖が声にならない叫びをあげた。手で口元をおさえているから大きく響くわけでもないし、今までのラッキースケベも知っている面子だからマシだけど、あまり人前でやらないでほしい。
「私との別れを惜しんでくれるのも嬉しいし、ラッキースケベなしにイリニの淋しさを理解するエフィさんも最高すぎますね!」
「落ち着け、聖」
リーサが呆れたように聖を見る。精霊王が聖に苦笑しつつ、こちらを見て続けた。
「与えた祝福の残りを考えると、確かに前よりは強いんだよね。以前のレベルまで落とす?」
「制御できるならいいかなとは思ってるけど」
じっと私を見つめた精霊王が自身の顎に手を添えた。
「んーまあ純粋に与えた分だけで考えるなら、今までの万分の一ぐらいになるかな? 恋のライバルモードとかラッキースケベは制御できないまま残っちゃう」
「そこは消そう」
「駄目だ」
「エフィ?!」
ここに来てエフィが主張するなんてどういうこと? しかもラッキースケベに対して?
「イリニはまだ素直に自分の気持ちを言わないだろう? 出来るようになるまではラッキースケベを残すべきだ」
「なんで?!」
ないほうがいいじゃん。無差別テロ起きるよ?
「まあ周囲に拡散するぐらい強いのは起きないし、いっか」
「だめだよ、精霊王!」
「既にラッキースケベは彼にしか起きないだろう? いいじゃないか」
「リーサまで?」
「恋のライバルモードなんて静電気程度ですしね! 暴力女子モードもエフィさんだけですし! ラッキースケベあると潤うんで私もあった方が俄然よきです~」
「聖……」
離れたらラッキースケベとか見ることも知ることも、そうできないのに?
「いいんです、今妄想できればそれで! 耐えられなくなったら、そちらに行くまで!」
「逞しい……」
「お任せ下さい! 自信があります!」
聖の強さは本当変わらない。尊いものがあれば生きていけると楽しそうに笑っていた。
「では王よ、残して頂けると?」
「いいよ」
私を置いてけぼりで話まとめないでってば。てかエフィの念の為がすぎる。
「ああ、よかった」
「感無量みたいな顔しないでよ」
私の意思を尊重してよ。
ラッキースケベに赤面してたくせに、それがないと困るなんておかしい。
「じゃあそろそろ戻ろうかな」
「サラマンダーなんてイリニの俺つえええモードで一発です! 安心して下さい!」
「国壊さないようにうまくやるよ」
「そうだね。まだリーサと聖と繋がっている以上、力加減はしないと」
ごめんね、任せきりで、と精霊王が申し訳なさそうに謝る。
「ううん。一人で悩まないで助けを求めていいんだよ」
「イリニ」
「私はそれをエフィに教えてもらった」
だからみんなで解決して大団円を迎えよう、とそれぞれを見れば、往々にして笑って頷いてくれる。
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