クールキャラなんて演じられない!

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1章 推しがデレを見せるまで。もしくは、推しが生きようと思えるまで。

53話 エドアルドをジョギングに誘う(もれなく皆ついてくる)

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「エドアルドは、どこかなー…あ、」
「ガラッシア公爵令嬢!」
「はい、なんですか?」

エドアルドを見つけるも名を呼ばれる。
なんだ、今日はそういう日なの?
ここ最近はよく話し掛けられるとは思ってたけど。
神はエドアルドと話させてくれないというのか。

「あ、あのずっと貴方が朝方走る姿を見てて、その」
「ああ、貴方も運動したい系?」
「え?え、あ、素敵だなと思って、」
「そう!いいことだね、君にはジャージをあげよう」
「え?」

予備を持っててよかった。
最近やたら欲しがる人が多いし、父親が量産したのをよこすから、ジャージは割と常備している。
健康を意識することが、この世界に浸透していくなら、それはとてもいいことだね。

「それを着て走ろう。そして健康に生きよう」
「あ、ありがとう、ございます、わ」

戸惑いながら去っていくご令嬢。
慣れれば当たり前になるから大丈夫…最初は辛い部分もあるかもしれないけど大丈夫。

「チアキ、たぶんそういう事ではないわ」
「んん?ジャージ欲しいんじゃなくて?」
「オリアーナ嬢と親交を深めたいのかと」
「あ、そうなの」

てっきりジャージがほしいのかと思ってた。
そっかー仲良くしたいのか。

「来るもの基本拒まず」
「そうね、知っているわ」
「しかし今はエドアルドだ」
「ええ、頑張って」

改めてエドアルドを探す。
まあ最近はどこにいるか知ってたりする。
そう、中庭だ。
そこにはわんこなオリアーナがいる。
最近一緒にいることが多いみたいだからと中庭に出れば、すぐにエドアルドは見つかった。
エステルとトットに一言伝えて、単身エドアルドに近づく。

「エドアルド」
「オリアーナ」

傍にはオリアーナ。
疲れているエドアルド。
変わらない、けどここはもう変わる時だ。
動かせてもらおう。

「元気ない?」
「いや、大丈夫だよ」

そんな顔には見えないし、それよくオリアーナも言ってたやつだよね。
前にエドアルドが話していた。
長く一緒にいると幼馴染って性格似てくるの?
最初は真逆だと思ってたけど。

「大丈夫には見えませんが」
「…本当だよ」
「寝てる?」
「う、うん、まあ」
「食べてる?」
「そう、だね、たぶん」

駄目だ、この子、どっちもクリアしていない。
このままだともっと悪化して、それこそオリアーナみたいなことをしでかす可能性も出てくるぞ。
しかもこの様子、自覚も薄そうだ。

「食事は自室で食べてたりします?」
「え!そうだよ…よくわかったね」
「…オリアーナもつい最近まで自室で食べてましたが、ついには食べなくなりました」
「…え、ええと」

目を泳がせて焦るエドアルドを見て、私脳内に警鐘が響く…完全に迎える先がオリアーナじゃん。
どうするか。
強引にでも動かす時が来たと直感が告げている。
このままでは平行線、オリアーナはエドアルドの傍にいて支えている様子は見られても、会話は出来ないし限度がある。
なら、エドアルド自身に多少なりとも変化を求めないと難しいと言う事だ。
それなら。

「よし、エドアルド。私決めたわ」
「はい?」
「走ろう」
「え?」
「走ればどうにかなる」

健全な精神は健全な肉体からだ。
つまり、走りきったところでエドアルドのじめじめは吹き飛ぶ、そうだ、これだ。
と、後ろから小さく溜息が聞こえた。

「チアキ…」
「どうにかなるとは思えませんが」

遠く、話を聴いていたエステルが近づいてきてそう言うのに続いてオリアーナまで。
何故みんな運動をそこまで軽んじている。
なんかどこかの偉い研究者に大きな講演してもらって運動の良さを伝えてほしいよ。

「ではエステル、トット、君達も走ろう」
「え?!」
「訓練か何かか?」
「トット、もっとライトなものだよ。爽やかに気持ち良さを感じるだけさ」
「そうか」

素直ですね、その実直さ故に王道ルートを歩むのだから貴重な人材だ。
君のトゥルーエンドは最高なんだよ、本当。

「お、オリアーナ、僕は」
「これからお時間ありますよね?」
「え」
「たいした時間とりませんので…ぜひね、ぜひ」
「あ、う、うん」
「何をしている」

咎めるような声に振り向けばディエゴがいた。
おや、若干引いている。

「なんだ、ディエゴか」
「人に向かって、なんだとはなんだ」

ド定番の返しをありがとう、ディエゴ。
だいぶ話してくれるようになって、私は嬉しいよ。

「ごめんごめん、これから皆で走ろうと思って」
「は?」
「調度いい、ディエゴも一緒に走ろう」
「え?」
「経験者だから余裕だね」

グッドポーズをしてみせれば、眉を顰めて嫌そうな顔をしている。
父親じゃないけど走ることで心が開くとかそういう展開があるはずだ。
スポーツ漫画の典型じだし、よしいけるな。

「よし、じゃあいこう」

かくして、皆を連れていつものコースを走ることになった。
神妙な顔をしつつも付き合ってくれるあたり優しい子たちが揃ってる。
私は人に恵まれているなあ。
そして、ここは若者で元々健康な者達、息切れがないし途中コース内容を変える必要もなかった。
実に素晴らしい。

「…チアキはいつもこの距離を走っているの?」
「うん、お隣りさん家基準で折り返しだね」
「中々良いものだな」
「でしょうでしょう、さすがトット」

お隣りさんはこちらが集団だと見て驚いたのか、いそいそしながら屋敷の中へ入ってしまったけど、そんな奇怪な様子だったろうか。
グループで走るって部活動ではよく見る光景だけど。

「着替えて来るわ」
「いってらっしゃーい」

心なしかエドアルドの顔色も少しは改善された気もする。
最初に着替え終わったのはディエゴだった。
いるよね、なんだか無駄に着替え早い人。
運動後と顔が変わりないあたり、あれから走り続けてたのかな…まさかね。
そんなディエゴはやや呆れた調子で戻って来た。

「…強引だな」
「そう?おかげで皆爽やかに走れたよ」
「走ることが目的ではないだろう」
「そういえばそうだね」

忘れてた、と言うとディエゴは僅かに微笑んだ。
微、笑、ん、だ…だと。

「不思議だな」
「おお…デレよ」
「?」
「いや、こちらの話です」

そこに着替えを終えたエステル達がおりてきた。
こう思うとディエゴの着替えの速さすごいな。

「普段チアキのしていることがわかってよかったわ」
「こちらこそ現代学園イベントが見られてファンディスクを堪能した気分だったよ」
「ふふ、相変わらずね」
「任せて」

そして肝心のエドアルドの様子を見やる。
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