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1章 推しがデレを見せるまで。もしくは、推しが生きようと思えるまで。
66話 成果報告
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この世界にスパやジムというものは存在しない。
なので学園の生徒に広めてもらう事にした。
すでにジャージが学生の間で噂になっていた実績もあったから、若者の発信力と速さを頼りに計画。
爵位のある者たちへの浸透はだいぶ進んでいたのも功を奏し、ネウトラーレ侯爵夫人のネームバリューも非常に良質な広告だったといえる。
にしても人伝えでこの速さ、いつの時代もどの世界も口コミは大事だ。
「オリアーナ」
「エドアルド」
「今月だけど、トレーナー3人合格だよ」
「優秀! いいですね」
エドアルドにトレーナー育成を頼んでいる。
完成した一号店のスタジオを使って時間を見ては彼自ら育成をしてくれている。
おかげさまで貴族界隈は補えた。
今は庶民の方々に対するトレーナー育成も兼ねている。
メイド長執事長さんからメイド業関係のトレーナー、私が声をかけた者の中から育成関係に適した人材の引き抜き、エドアルドの人脈もフルに使って彼自身も庶民の方々向けに教えをやり始めている。
「トレーナー人材はどうにかなりそうだね」
「流通は」
「旧ならず者と件の海賊さんが大活躍だよ」
オリアーナに成果報告書をみせる。
やっぱり経験者は強い。
沿岸部は海賊を、山沿いの集落へは山賊をしていた旧ならず者達に任せた。
どちらもかつて叔父が仕向けた人々。
なので叔父に管理を一任した。
国内で一通り流通が回れば、海と陸両方から国外流通も望める素晴らしい人脈。
雇用した人たちは最初叔父にいい顔をしなかったけど、今ではだいぶまともになったか。
「生産についてはガラッシア家で新しい製作所を持ったしね」
「はい、商店通りの人々も協力的ですし」
「オリアーナの父親本当いいことしてたね。アル中前にあそこの自治を改善してくれててよかったよ」
そんな父親は自ら張り切って講演会もどきみたいなことをしている。
自身が長い病気から快方に向かっているのは、間違いなく運動が大きい要因であると。
元々信頼を築いていた商店通りの自治丸ごと巻き込んで、貴族界隈に捕らわれず国の民に満遍なく広めていこうとする姿勢は素晴らしいものだ。
ま、本来の彼自身を取り戻したってところかな。
「運動、食事、仕事、講演、最近は王陛下と面会してお友達の交遊もあるし、酒に対する代替がだいぶ増えたな」
良かった、これなら同じ轍を踏む確率が下がるぞ。
一生ものだと思うけど、周りの支援も重厚になってきた。
叔父もまだまだ怯え他人行儀な付き合いだけど、そこは父の力もあるだろうし心配はしていない。
エスタジとも和解、エドアルドも見たところ憔悴はしていないし、トレーナー育成に入ってからは生き生きとしている。
ハニーフェイスはやはり笑顔に限る。
「チアキ」
「ん? …ああ」
「オリアーナ」
「男爵」
スタジオを後にし、スパ施設に入るとお隣さんご夫婦と鉢合わせした。
最近はほぼ毎日ここに来ている。
二人でヨガをしたり、その後はお風呂入って一緒に帰って、もうこの人たちお互い好きすぎでしょ感が半端ない。
いいねえ、この世に携帯端末あったら、奥さんの写真を待受画面にするタイプだたぶん。
「最近はいかがです?」
「ああだいぶ調子が良いな」
「なによりです」
顔色もいい。
喘息はまだ残っているけど、事業を本格的に再開できるとまで言ってるぐらいだから、結構な回復をしたのだろう。
クラーレの計らいで男爵専属のメディコも戻り、きちんと定期的に診察してるからそこも心配ない。
「あ、そうだ。男爵お話が」
「何かな?」
「一号店の管理をお任せしたいのですが」
「管理?」
「チアキ、場所と時間を考えた方が」
オリアーナの言う通りか。
商談する場所が現地、しかもプライベートタイムを満喫中だもんな。
きちんとアポイントとって、計画書持参するのがいいだろう。
いけない、つい思いついてそのまま動いてしまうからね。
「この施設の?」
「そうです、今度時間とりましょう」
男爵はここでもかまわないと言ってくれたので軽く話を通し、後日商談という事で相なった。
もうほぼほぼ承諾されると思うけど。
すると、いつぞやと同じように奥様だけが一人私の元へやって来た。
「あの」
「はい」
「ずっと……気になっていたのだけど」
「?」
もう随分前になるからと夫人は言い淀んでいるが先を促してみた。
すると驚きの発言が飛び出す。
「10年前の、奥様と貴方の姉君の事故のこと」
「何か知ってるんですか?」
てか、やたらこの事件絡んでる人多くない?
証言有り難いけど、オリアーナやエドアルドみたく自分のせいなんですって来られても、判断材料ないから困る。
「あの日、いつもの道が使えないからと、こちらの家の前を通って行ったのを見たのだけど」
「ええ」
「回り道する方を選ばず山沿いへ向かう道へ入って行ったのよ」
「それは違う道ということですか?」
「ええ…だからおかしいなとは思ったのだけど、事情があるのかと思って……そしたらあの事故が起きたものだから」
夫人はあれは本当に事故なの?と心配しているようだった。
ここまで関係が改善されたことにも感動するが、それよりも新たな問題出てきた。
エドアルドはいつもの道を使えないとだけしか伝えていない。
回り道を選ばず、新しく違う道を選択すると言う事は何を意味するのか。
「ありがとうございます、参考にさせて頂きます」
「ええ、何かあれば言って。私で出来る事があれば」
「はい、ありがとうございます」
「私なんかに言われてもお嫌かと思うけれど」
「いいえ、お気持ち大変うれしいです」
夫人をにこやかに帰す。
内容はまったくにこやかじゃない。
そして私は翌日、更なる事実を知る。
さすがにもうオルネッラの事件を見過ごすのは難しいと思えてきた。
なので学園の生徒に広めてもらう事にした。
すでにジャージが学生の間で噂になっていた実績もあったから、若者の発信力と速さを頼りに計画。
爵位のある者たちへの浸透はだいぶ進んでいたのも功を奏し、ネウトラーレ侯爵夫人のネームバリューも非常に良質な広告だったといえる。
にしても人伝えでこの速さ、いつの時代もどの世界も口コミは大事だ。
「オリアーナ」
「エドアルド」
「今月だけど、トレーナー3人合格だよ」
「優秀! いいですね」
エドアルドにトレーナー育成を頼んでいる。
完成した一号店のスタジオを使って時間を見ては彼自ら育成をしてくれている。
おかげさまで貴族界隈は補えた。
今は庶民の方々に対するトレーナー育成も兼ねている。
メイド長執事長さんからメイド業関係のトレーナー、私が声をかけた者の中から育成関係に適した人材の引き抜き、エドアルドの人脈もフルに使って彼自身も庶民の方々向けに教えをやり始めている。
「トレーナー人材はどうにかなりそうだね」
「流通は」
「旧ならず者と件の海賊さんが大活躍だよ」
オリアーナに成果報告書をみせる。
やっぱり経験者は強い。
沿岸部は海賊を、山沿いの集落へは山賊をしていた旧ならず者達に任せた。
どちらもかつて叔父が仕向けた人々。
なので叔父に管理を一任した。
国内で一通り流通が回れば、海と陸両方から国外流通も望める素晴らしい人脈。
雇用した人たちは最初叔父にいい顔をしなかったけど、今ではだいぶまともになったか。
「生産についてはガラッシア家で新しい製作所を持ったしね」
「はい、商店通りの人々も協力的ですし」
「オリアーナの父親本当いいことしてたね。アル中前にあそこの自治を改善してくれててよかったよ」
そんな父親は自ら張り切って講演会もどきみたいなことをしている。
自身が長い病気から快方に向かっているのは、間違いなく運動が大きい要因であると。
元々信頼を築いていた商店通りの自治丸ごと巻き込んで、貴族界隈に捕らわれず国の民に満遍なく広めていこうとする姿勢は素晴らしいものだ。
ま、本来の彼自身を取り戻したってところかな。
「運動、食事、仕事、講演、最近は王陛下と面会してお友達の交遊もあるし、酒に対する代替がだいぶ増えたな」
良かった、これなら同じ轍を踏む確率が下がるぞ。
一生ものだと思うけど、周りの支援も重厚になってきた。
叔父もまだまだ怯え他人行儀な付き合いだけど、そこは父の力もあるだろうし心配はしていない。
エスタジとも和解、エドアルドも見たところ憔悴はしていないし、トレーナー育成に入ってからは生き生きとしている。
ハニーフェイスはやはり笑顔に限る。
「チアキ」
「ん? …ああ」
「オリアーナ」
「男爵」
スタジオを後にし、スパ施設に入るとお隣さんご夫婦と鉢合わせした。
最近はほぼ毎日ここに来ている。
二人でヨガをしたり、その後はお風呂入って一緒に帰って、もうこの人たちお互い好きすぎでしょ感が半端ない。
いいねえ、この世に携帯端末あったら、奥さんの写真を待受画面にするタイプだたぶん。
「最近はいかがです?」
「ああだいぶ調子が良いな」
「なによりです」
顔色もいい。
喘息はまだ残っているけど、事業を本格的に再開できるとまで言ってるぐらいだから、結構な回復をしたのだろう。
クラーレの計らいで男爵専属のメディコも戻り、きちんと定期的に診察してるからそこも心配ない。
「あ、そうだ。男爵お話が」
「何かな?」
「一号店の管理をお任せしたいのですが」
「管理?」
「チアキ、場所と時間を考えた方が」
オリアーナの言う通りか。
商談する場所が現地、しかもプライベートタイムを満喫中だもんな。
きちんとアポイントとって、計画書持参するのがいいだろう。
いけない、つい思いついてそのまま動いてしまうからね。
「この施設の?」
「そうです、今度時間とりましょう」
男爵はここでもかまわないと言ってくれたので軽く話を通し、後日商談という事で相なった。
もうほぼほぼ承諾されると思うけど。
すると、いつぞやと同じように奥様だけが一人私の元へやって来た。
「あの」
「はい」
「ずっと……気になっていたのだけど」
「?」
もう随分前になるからと夫人は言い淀んでいるが先を促してみた。
すると驚きの発言が飛び出す。
「10年前の、奥様と貴方の姉君の事故のこと」
「何か知ってるんですか?」
てか、やたらこの事件絡んでる人多くない?
証言有り難いけど、オリアーナやエドアルドみたく自分のせいなんですって来られても、判断材料ないから困る。
「あの日、いつもの道が使えないからと、こちらの家の前を通って行ったのを見たのだけど」
「ええ」
「回り道する方を選ばず山沿いへ向かう道へ入って行ったのよ」
「それは違う道ということですか?」
「ええ…だからおかしいなとは思ったのだけど、事情があるのかと思って……そしたらあの事故が起きたものだから」
夫人はあれは本当に事故なの?と心配しているようだった。
ここまで関係が改善されたことにも感動するが、それよりも新たな問題出てきた。
エドアルドはいつもの道を使えないとだけしか伝えていない。
回り道を選ばず、新しく違う道を選択すると言う事は何を意味するのか。
「ありがとうございます、参考にさせて頂きます」
「ええ、何かあれば言って。私で出来る事があれば」
「はい、ありがとうございます」
「私なんかに言われてもお嫌かと思うけれど」
「いいえ、お気持ち大変うれしいです」
夫人をにこやかに帰す。
内容はまったくにこやかじゃない。
そして私は翌日、更なる事実を知る。
さすがにもうオルネッラの事件を見過ごすのは難しいと思えてきた。
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