クールキャラなんて演じられない!

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2章 神よ、感謝します。けど、ちょっと違う叶ったけどちょっと違うんです。

151話 欲しい情報ないから、猫かぶり(クールキャラ)もうやめ

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「……」

 馬車の扉が開かれ、帽子を目深に被ったディエゴが私の手をとって馬車からおろしてくれる。ちょっとだいぶテンションあがるじゃん。いや、この場合手をとっておりるのは御者の行動として正しいの?
 あちら側が見てるわけじゃないならいいか。いやでもやっぱりお嬢様呼びが欲しかった。一緒に行く為だけにコスするって言っただけなんじゃないの。弄ばれた感がする。解せぬ。

「お連れしました」
「お、なんだ一人か。もう片方は」
「逃げられました」

 見たところ賊は十三人。山間の登山用の小屋を使っている。ここ以外にも仲間はいるかな。外は騎馬隊の方々がいて、私達がここにいる間に調べてくれてるから問題はないだろうけど。

「何故、このようなことを」

 私、グッジョブいい演技。肩に少し力を入れて緊張感出しつつ、声ふるわせて怯え方を表現。俯き気味に言えば顔が崩れてもばれない。案の定、相手方は私が完全に怖じけづいたか弱いお嬢さんに見えたようだ。薄く笑っている。

「さあな。俺達はただ雇われただけだ」
「私を殺すつもりですか」
「そうだな」
「何故このような多勢で」
「抵抗した場合、この人数が必要だと」

 と、笑う。なるほど、大元は私がスーパーマンだと知っているのか。そしたら少なくとも社交界や学園での私の行動を知っている人間になる。にしても正直に話してくれるな、助かるけど。

「雇い主はだれですか」
「しらねえな。会ったこともない」

 声を聞いても変えていたとか。用心深い。どうしても表舞台にでたくないということ?
 これだけ匂わせておいて、出てくる気ないの?

「どう殺しますか」
「別になんでもいいが、殺した後は谷底へ落とす」

 事故でも装うつもり?
 でもまあ好都合か。この小屋の中、会話で解決出来ずに一悶着ある場合、外に出た方がこちら側の人間が多く控えていてやりやすい。

「では外に」
「いやだめだ」
「え?」
「逃げられるかもしれねえだろ」
「そんなことは」

 この賊も随分用心深いな。逃げられる可能性を考慮にいれるなんて。足が早いという情報はなかったはずなんだけど……いやディエゴと追いかけっこしたのを見られてたら、それはそれで可能性あり?
 生徒から情報が回ってここまで来てるなら、私が異様な身体能力を得ている事を知ってておかしくはないけど、そもそもオリアーナと私で区別ついてるかもわからないのに。

「別にはぐらかすのもなんだから言うが、俺、あんたのこと一度見てるんだよ。山ん中苦もなく登っていたあんたをな。そんな体力ある人間が、早々に諦めた様子で俺たちの前に現れるわけがないだろ」
「おや」
「ちなみにその隣にいるのは一緒に山登っていた奴だろ」
「へえ」

 魔法使いの祖一族を求めて登山してたときのを見られていたのか。けど、あの時は元山賊の方々に入念にチェックしてもらっていたんだけどな。それをすり抜けられる技術を持っているか、あるいは別の何かで知り得てカマをかけているのか。

「それは本当に私だったのでしょうか」
「ああ、目がいい方なんでな」
「根拠は」
「はあ?」

 少しだけ時間を稼ごう。騎馬隊の面々にはあらかじめ伝えてある。ディエゴと御者さんは知らないけど、まあ怪我はしないだろうしよしとしよう。

「私達貴族が山に徒歩で入り歩く等、通常は考えられません。人違いでは?」

 この人達は私を殺すためだけに存在している。なら私がどんな人物かなんてどうでもいいはずだし、聞き入れてる情報も学園の生徒が知るところが精々。詳しく知ってるとしたら、こうもちぐはぐな会話にはならないはずだ。

「あんた、自分が思ってるよりも有名だぞ? 妙な服と走り方を広めただろ」
「妙な服……」

 失礼なことを言う。同時に懐かしいな。最初こそ、この世界の人ドン引きだったもの。父親あたりがいい例だったな。おっとこれは余談か。
 まあジョギングについては貴族から庶民まで広まり流行ったから、この人たちが知っていておかしくない。

「路地裏に連れ込んでも返り討ちに遭うってな」
「へえ」

 あの時の残党のわけがない。実行犯すべてに声をかけて、もれなく全員雇っている。その話が裏通りで広まった?それと登山がつながるのもおかしな話だしな。

「いや、ま、いっか。終わったし」
「ん?」
「チアキ」

 小声でディエゴが窘める。いやもういいでしょ。準備は出来たし、これ以上は情報得られなさそうだし。
 顔をあげて目の前の人物を見れば、一瞬驚いた後、心底楽しそうに目を細めた。

「猫被ってたのか」
「あなた方を雇った人に会う予定は」
「ない」
「そうですか。では大人しく捕まってくれますか」

 今なら傷つくことなく王都へ引き渡しが可能、と伝えてもそんな気は毛頭ないようだった。笑うだけで、特段動こうとしない彼らは余程余裕があるとみた。

「そうですか、残念です」

 途端足元が光る。小屋の床が目一杯埋まるぐらいの魔法陣。
 前も同じことやったなと感慨深い思いに浸っちゃう。あの時よりも全開かな。多少力を抑えて配慮している私を褒めてほしい。

「そうそう、私、結構ドジなんですよ」
「は?」
「調整下手で、魔法暴走しちゃうんですよね」
「え」
「なのでこれは事故です。恐怖による魔法の暴走ってことですねえ」
「! まずい、お前達、」
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