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大陸放浪編
旅立ち~野盗~
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ルークの言葉に従い、道中を急ぐことになった。
しかし、ウェイトレスの言う通り道がだんだんと狭くなり、坂が増えてきた。
道も石畳から舗装されていない土道へと変わった。
ガタゴトと音を立てながら馬車は山道を進んでいく。
頂きに到達すると目の前が開けた。新芽が出始めたばかりの山の斜面が薄く緑に染まり、草原を鹿や兎が待ちに待った春を満喫していた。柔らかな風がふわりと頬を撫ぜた。
やがて遠くに見える山の向こうにゆっくりと日が沈んでいく。
空は次第に鮮やかな茜色に染まっていった。同時に山に徐々に影を落としていった。
下り坂に入り、いよいよ暗くなってきた道を魔法で火をともしたカンテラで照らす。
道は少しずつなだらかになり、森の中へと入った。木々が空を覆い隠し、闇が一段と増した。
馬の蹄と車輪の音の中から気配を感じ取った私はぴたりと馬を止めた。
一瞬の間の後、指笛の甲高い音が森の静寂を切り裂き、怒号の中で数人の男たちが獲物に飛び掛かって来た。
「おりゃぁぁぁ、全員かかれ!」
私は取り出しておいたメイスを一振りした。荷馬車を中心に半径十メートル以内にいる者全てに光属性の魔法である雷魔法を発動させた。
昼間、話を聞いた後用心のために荷物の中に魔法陣を仕込んでおいたのであった。
男たちはその場に崩れ落ち、魔法が発動している馬車は明るく照らされている。
私はその光と音を頼りに遠くで様子を見ていた残党を的確に気絶させていく。
周囲が静まると、私は馬車に声をかけた。
「終わりましたよ、ルークさん」
「ああ?なんだ、もう終わったのか」
幌を跳ね上げて、ルークが降りてきた。
「やっぱり起きてたんですね」
「あんな殺気だらけのところで寝てられるかよ。で、こいつらどうするんだ?」
私はふうと一つ息をつくと、気絶している男の脈をとった。
「次の町で憲兵に引き渡します。捕縛するので手伝って下さい」
「ええー、面倒だな。それ、本気で言ってんの?」
「当然です。また被害が出たら困りますし。さっさと縛って積み込みますよ」
「おれの寝るところは?」
「重たいんで降りて馬車押してください」
嘘だろとルークがぼやいた。それから渋々、男たちを私が捕縛し、ルークが馬車に乗せた。
そして私は馬たちの負担を減らす様にささやかな風魔法をかけた。
「はっ、へぼい魔法」
「へぼくてすみません。行きますよ、ルークさん」
「へいへい」
私は馬たちの背をぽんぽんと叩くと、ゆっくりと町へと下りていった。
町までの道のりは思ったよりも短かった。私たちは通りすがりの人に駐在所の場所を尋ね、連行していった。駐在所には五人の憲兵がのんびりと夕食を摂っていた。
「すみません。途中の山で野盗を捕まえたのですが」
「何ですって?! また出たんですか? お怪我はありませんか?」
憲兵たちが慌てて立ち上がった。あたふたと外に出てくる。
「あれ? それより、お嬢さん今なんて言いました?」
「野盗を捕まえたんです」
「そーだ。さっさとこいつらをなんとか預かってくれ」
馬車を押していたルークがひょっこり顔を出した。
「はい! ご協力ありがとうございます! あれ、その髪の色、もしかしてあなた……青嵐の騎士、ルーク様じゃありませんか?!」
ルークは慌てて頭に手を当てた。
かつらを被るのをすっかり忘れていたルークは、その手を誤魔化す様に髪をかき上げて、ふっと笑った。
「知られたら仕方ないですね。私こそがルークです」
「わぁ! ルーク様がこの者たちを捕えて下さったんですね。流石です」
「えー。あー。まぁ、そうですね」
曖昧に斜め上を見ながら、ルークは虚ろな目で肯定した。私はちらりとその様子を見る。
「ありがとうございます! 握手してもらっても良いですか? あ、こちらの女性はルーク様の恋人の方ですか?」
「「違います」」
私とルークの答えが見事に重なった。
「そうでしたか! おい、お前ら町長呼んで来い!」
はいと威勢よく若い憲兵が走り出していった。
「すみません。あまり大事にされると旅に差し支えますので、内々で済ませて頂けると助かるのですが」
「そうでしたか。配慮が足りず申し訳ありません。ひとまず、そちらの野盗たちはこちらで預からせて頂きます」
残った三人の憲兵がまだ気絶している野盗を荷物のように運んでいった。野盗たちを降ろし終わると丁度、町長がやってきた。白髪交じりの髪を後ろ手に撫でつけた壮年の紳士だった。ゆっくりと馬車を降りるとルークに話しかけた。
「こんばんは、青嵐の騎士、ルーク様。私はこの町を統括しているものです。この度は野盗の捕縛誠にありがとうございました」
町長は物静かに丁寧な物腰で礼を述べた。
「いいえ、礼などには及びません。私は何もしていませんから」
これは真実だなと私は思った。
口には出さなかったが私の冷ややかな視線をルークは感じているらしく居心地悪そうに頬をかいた。
「そちらの女性は……?」
「マヤ・クラキです。ルークさんと共に旅をしています」
「マヤ・クラキというとこの聖フローレンス王国の救国の聖女様ではないですか! 何故、お二人が旅を?」
「それは大変な機密情報であり、王の勅命です。申し訳ありませんがお答えできません」
ルークがさらりと答えを拒否した。
「そうでしたか。詮索してしまい、申し訳ありません。もう夜も更けております。手狭ではありますが、今晩は我が屋敷に逗留していただけませんでしょうか?」
「それでは、お言葉に甘えさせて頂きます。しかしどうか私たちのことは内密に……」
「無論です。それでは参りましょう」
「あ、馬車を……」
私が乗って来た馬車に乗ろうとすると憲兵がそれを制した。
「自分が町長の屋敷まで送っていきますよ。クラキ様はどうぞ馬車にお乗りください」
私は促されるままルークと共に町長の馬車に乗り込んだ。
しかし、ウェイトレスの言う通り道がだんだんと狭くなり、坂が増えてきた。
道も石畳から舗装されていない土道へと変わった。
ガタゴトと音を立てながら馬車は山道を進んでいく。
頂きに到達すると目の前が開けた。新芽が出始めたばかりの山の斜面が薄く緑に染まり、草原を鹿や兎が待ちに待った春を満喫していた。柔らかな風がふわりと頬を撫ぜた。
やがて遠くに見える山の向こうにゆっくりと日が沈んでいく。
空は次第に鮮やかな茜色に染まっていった。同時に山に徐々に影を落としていった。
下り坂に入り、いよいよ暗くなってきた道を魔法で火をともしたカンテラで照らす。
道は少しずつなだらかになり、森の中へと入った。木々が空を覆い隠し、闇が一段と増した。
馬の蹄と車輪の音の中から気配を感じ取った私はぴたりと馬を止めた。
一瞬の間の後、指笛の甲高い音が森の静寂を切り裂き、怒号の中で数人の男たちが獲物に飛び掛かって来た。
「おりゃぁぁぁ、全員かかれ!」
私は取り出しておいたメイスを一振りした。荷馬車を中心に半径十メートル以内にいる者全てに光属性の魔法である雷魔法を発動させた。
昼間、話を聞いた後用心のために荷物の中に魔法陣を仕込んでおいたのであった。
男たちはその場に崩れ落ち、魔法が発動している馬車は明るく照らされている。
私はその光と音を頼りに遠くで様子を見ていた残党を的確に気絶させていく。
周囲が静まると、私は馬車に声をかけた。
「終わりましたよ、ルークさん」
「ああ?なんだ、もう終わったのか」
幌を跳ね上げて、ルークが降りてきた。
「やっぱり起きてたんですね」
「あんな殺気だらけのところで寝てられるかよ。で、こいつらどうするんだ?」
私はふうと一つ息をつくと、気絶している男の脈をとった。
「次の町で憲兵に引き渡します。捕縛するので手伝って下さい」
「ええー、面倒だな。それ、本気で言ってんの?」
「当然です。また被害が出たら困りますし。さっさと縛って積み込みますよ」
「おれの寝るところは?」
「重たいんで降りて馬車押してください」
嘘だろとルークがぼやいた。それから渋々、男たちを私が捕縛し、ルークが馬車に乗せた。
そして私は馬たちの負担を減らす様にささやかな風魔法をかけた。
「はっ、へぼい魔法」
「へぼくてすみません。行きますよ、ルークさん」
「へいへい」
私は馬たちの背をぽんぽんと叩くと、ゆっくりと町へと下りていった。
町までの道のりは思ったよりも短かった。私たちは通りすがりの人に駐在所の場所を尋ね、連行していった。駐在所には五人の憲兵がのんびりと夕食を摂っていた。
「すみません。途中の山で野盗を捕まえたのですが」
「何ですって?! また出たんですか? お怪我はありませんか?」
憲兵たちが慌てて立ち上がった。あたふたと外に出てくる。
「あれ? それより、お嬢さん今なんて言いました?」
「野盗を捕まえたんです」
「そーだ。さっさとこいつらをなんとか預かってくれ」
馬車を押していたルークがひょっこり顔を出した。
「はい! ご協力ありがとうございます! あれ、その髪の色、もしかしてあなた……青嵐の騎士、ルーク様じゃありませんか?!」
ルークは慌てて頭に手を当てた。
かつらを被るのをすっかり忘れていたルークは、その手を誤魔化す様に髪をかき上げて、ふっと笑った。
「知られたら仕方ないですね。私こそがルークです」
「わぁ! ルーク様がこの者たちを捕えて下さったんですね。流石です」
「えー。あー。まぁ、そうですね」
曖昧に斜め上を見ながら、ルークは虚ろな目で肯定した。私はちらりとその様子を見る。
「ありがとうございます! 握手してもらっても良いですか? あ、こちらの女性はルーク様の恋人の方ですか?」
「「違います」」
私とルークの答えが見事に重なった。
「そうでしたか! おい、お前ら町長呼んで来い!」
はいと威勢よく若い憲兵が走り出していった。
「すみません。あまり大事にされると旅に差し支えますので、内々で済ませて頂けると助かるのですが」
「そうでしたか。配慮が足りず申し訳ありません。ひとまず、そちらの野盗たちはこちらで預からせて頂きます」
残った三人の憲兵がまだ気絶している野盗を荷物のように運んでいった。野盗たちを降ろし終わると丁度、町長がやってきた。白髪交じりの髪を後ろ手に撫でつけた壮年の紳士だった。ゆっくりと馬車を降りるとルークに話しかけた。
「こんばんは、青嵐の騎士、ルーク様。私はこの町を統括しているものです。この度は野盗の捕縛誠にありがとうございました」
町長は物静かに丁寧な物腰で礼を述べた。
「いいえ、礼などには及びません。私は何もしていませんから」
これは真実だなと私は思った。
口には出さなかったが私の冷ややかな視線をルークは感じているらしく居心地悪そうに頬をかいた。
「そちらの女性は……?」
「マヤ・クラキです。ルークさんと共に旅をしています」
「マヤ・クラキというとこの聖フローレンス王国の救国の聖女様ではないですか! 何故、お二人が旅を?」
「それは大変な機密情報であり、王の勅命です。申し訳ありませんがお答えできません」
ルークがさらりと答えを拒否した。
「そうでしたか。詮索してしまい、申し訳ありません。もう夜も更けております。手狭ではありますが、今晩は我が屋敷に逗留していただけませんでしょうか?」
「それでは、お言葉に甘えさせて頂きます。しかしどうか私たちのことは内密に……」
「無論です。それでは参りましょう」
「あ、馬車を……」
私が乗って来た馬車に乗ろうとすると憲兵がそれを制した。
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