最強の聖女は恋を知らない

三ツ矢

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大陸放浪編

旅立ち~噂話~

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 私はルークに言われた通り、街道を走り続けた。



(どんな状況でもつい受け入れて従っちゃう癖、治ってないなぁ)



丘を越えた先に最初の町が見えた。色とりどりレンガで造られた建物と煙突から煙がたなびいている。懐中時計を見ると既に昼に差し掛かっていた。



「ルークさん、町ですよ。お昼どうしますか?」

「んあ?」



ルークが空色の髪を掻きながらむくりと起きた。



「ああ、飯ね。それじゃあ、おれ先に飯食ってくるわ」

「え?」

「え?じゃねぇよ。荷物と馬車に何かあったら困るだろ。御者も従者もいない旅なんだから。それくらい頭使って、自覚してくれ」



そういうとルークは自分の荷物袋からごそごそと毛玉を取り出した。



「ルークさん、それは?」

「あ?見てわかんねぇのか。かつらだよ。おれの頭目立つからな」

「そういえば、この国では珍しい色ですよね。ルークさんってどこ出身なんですか?」

「……知らねぇ。そんじゃ、またあとで」



茶髪のかつらをかぶったルークが軽やかに荷馬車を降りて町の雑踏の中へ消えていった。

待っている間、私は四人に手紙を書くことにした。



「えっと、『前略、お元気ですか……』」



手紙に世界樹が原因で眠り病という病が各地で発病していること、世界樹を治すために管理者である妖精王の加護を取り戻す必要があること、そのためにこれから青嵐の騎士ルークと旅をすることを簡潔に書いた。私は書き終わると、基礎魔法陣に詳細を記入していく。



「何処より参ぜよ、来訪者。我が血を代償に我が呼び声に応えたまえ。我が名はマヤ・クラキ。いざ現れん」



ポンっと現れたのはタンポポのようなふかふかとした鮮やかな黄色の羽根に翡翠色の尾羽を持った愛らしい鳥型の魔獣だった。



「エリス、これを四人に届けて。覚えてるわね?」

「オマカセクダサイ」



エリスはいつも四人と連絡するために使っている魔獣だった。バラバラの場所にいる四人を探し当て、一定以上の魔力と知性、機動力を持つ魔獣は存外に少ない。この役割を果たせる魔獣はエリスしかいなかった。エリスを解き放つと入れ違いにルークが帰って来た。



「よぉー。今、飛んでったのはあんたの魔獣か?」

「お帰りなさい。そうですけど」

「あんた、召喚士なんだな」

「ええ。一応召喚能力も持ってますが、それがどうしました?」



別にとルークが焼き串を食べながら答えた。



「それより、さっさと飯食って来いよ。早く出ないと次の町着くのが夜中になっちまう。ほらほら、行けよ」



ルークは犬でも追い払うように私を荷馬車から降ろした。

 追い出された私は小さな町を当ても無く歩く。学校帰りの十歳ほどの子供たちが賑やかに声を上げて駆けていく。その表情には活気があり、衣服も簡素だがきちんとしている。聖フローレンス王国の治世を象徴しているようだった。その時、道の先から食欲を誘う香りが漂ってきた。私はその香りを頼りに小道を進んでいくと、食堂がやっていた。



「いらっしゃい。好きな席に座りな」



ぶっきらぼうに恰幅の良い店主が店内を示した。店内には常連とみられる男たちが数人いて、私に好奇の視線をちらりと寄越した。私はテーブル席に座ると髪の毛を二つに縛ったちょっと化粧の濃いウェイトレスが注文を取りに来た。



「水とパンとここのおすすめってなんですか?」

「あー、ポトフかな。こーんな分厚いベーコンが出てくるんだ」

「じゃあ、それを。あとこれ」



私がウェイトレスにチップを渡すときゃっと声を上げて喜んだ。



「なによぅ、あんた。良い子じゃない。どこの子?」



ウェイトレスは大声で注文を店主に伝えると、私の対面の席に座りこんだ。



「都から来ました。これから南の港町まで行くところです」

「へぇ。なんか面白い服着てるし。それ、どこの服? でも、南の町に行くのは止めた方が良いよぅ」

「どうしてです?」

「ここからだとねぇ、小さいけど一つ山を越さなきゃいけないの。道が細くなってて。そこに盗賊が出るんだよねぇ」



盗賊と私が驚いてそのまま繰り返した。治安の良いフローレンス王国でもまだ野盗がでるなんて知らなかった。



「そう。だから……」



ウェイトレスが話を続けようとしたその時、店主の怒号が店内に響いた。



「出来たぞ!さっさと仕事しねぇと給金減らすからな!」



ウェイトレスが飛び上がってカウンターから食事と水を取りに行った。



「それじゃ、ごゆっくりぃ」



ウェイトレスは食事ののったトレイを私の前に置くといそいそと奥に戻っていった。テーブルの上には丸いライ麦パンとキャベツに人参、玉ねぎと五センチはありそうな分厚いベーコンが湯気を立てて盛られていた。火傷しないように小さく切りながら、ゆっくりと口に入れた。シンプルだがブイヨンと野菜、ベーコンのうま味を感じる一皿だった。



「店主、美味しかったです」



私が会計の後、そう伝えると店主がふんと言って満足そうに腹を揺らした。



食事を終え、馬車に戻るとモップの頭を乗せたようなルークがぼんやりと日向ぼっこをしていた。



「来たか。それじゃ、次の町まで頼む」



ルークは私の気配に明敏に悟るとそそくさと馬車に乗り込んだ。



「ルークさん、今町で盗賊が出るって話を聞いたんですけど。このまま次の町に向かうと日も落ちますし、ここで宿をとるか野宿の準備をしていきませんか?」

「盗賊ぅ?そんなの怖いのか、あんた」



ルークがせせら笑った。



「無用なトラブルは避けるべきかと」

「まぁ、そりゃあそうだが、なんせおれたちには時間が無い。残念だがその意見は却下だ。さぁ、出発だ。世間知らずのお嬢ちゃん」

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