最強の聖女は恋を知らない

三ツ矢

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大陸放浪編

美しい島国~宿酔~

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 朝はすぐに訪れた。昨夜のメイドがうきうきとドアをノックし、カーテンを開けると真っ青な空と海が目に飛び込んできた。



「おはようございます、マヤ・クラキ様」

「おはよう。素敵な景色ね。お部屋、本当にありがとう」

「そんな、勿体ないお言葉です!」

「ところで私の名前誰かに言った?」

「あ、はい。同室のメイドに。いけませんでしたか?」



きょとんとするメイドに私は軽く頭を振った。自分がそんな有名だとは思っていなかったが、知られていると思うとちょっと気恥ずかしかった。メイドに着替えを手伝ってもらうと、私は朝食のために食堂にやって来た。そこにはちょっと青い顔をしたデヴィンが頭を抱えて座っていた。



「おはよう、デヴィン。どうしたの?」

「ああ、マヤさん……お恥ずかしながら二日酔いです。マヤさんが酒豪だということをすっかり忘れていました」

「イスラのワインはとても美味しかったからつい限度を越しちゃうわよね。あ、ちょっと待ってて」

すみませんとメイドを呼んだ。



「塩と沸騰させた水を持ってきてください」

「塩でございますか?朝食にお使いになるので?」

「いいえ。お願いします」



メイドは不思議そうな顔をしながら塩の入った小瓶を持って来た。私は紅茶用に付いていた砂糖とレモン、塩を水差しに入れた。その様子を見ていた部屋の全員がぎょっとした。私は少しずつ味を確かめながら、分量を調節した。それから、デヴィンに差し出した。



「はい。私の世界では二日酔いの時よく飲まれていたものよ。楽になるから飲んでみて」



デヴィンはそっとグラスを受け取った。



「甘くてどこか塩の味がする……不思議な味ですね」

「人間の身体に流れる水の塩分濃度に近づけてあるの。そうすると二日酔いで脱水症状になった身体に早く吸収されるから」

「ほほぅ、博識ですな、マヤ・クラキ様は。本当に異邦人でいらっしゃるんですな」



首相が面白がるようにその様子を見ていた。すでに私の素性も首相はご存知であるらしい。



「ええ。そういえばルークさんはどうしました?」



それを聞くと従僕の一人が首相に耳打ちした。



「どうやら体調不調で、起きてこれないようです。仕方ありません、我々だけでも先に食事にしましょう」



首相の言葉を合図に様々な果実のジャムにパン、野菜のスープ、ゆで卵と豪華な朝食が運ばれてきた。



 食事が終わると私は再び調合した水を持って、ルークの部屋を訪ねた。



「ルークさん、大丈夫ですか?」



ああと濁った声がベッドの中から聞こえた。



「大丈夫なわけあるか。ちっ、頭の中で太鼓が鳴り響いていやがる……」

「時間が無いから、今日出発するんじゃなかったんですか?」



私は精一杯嫌味に尋ねてみた。



「性格の悪い女だな……こんな状態で行けるかよ」

「そうですか。それじゃあ、これどうぞ」



私は水差しをベッドサイドに置いた。



「なんだこれ」

「二日酔いが早く治る魔法の水です。お大事に」

「待て、これ」



ベッドの中から妖怪のようにルークが腕を伸ばした。



「何ですか、これは?」

「次の旅で必要になるものだ。用意を頼む」



私はくしゃくしゃになった紙を受け取るとルークの部屋を後にした。

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