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大陸放浪編
美しい島国~眠り病~
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私は酔いつぶれた英雄は放っておいて、この国を散策しようと出かける準備をした。そこにデヴィンがやってきた。
「マヤさん、どこか行かれるんですか?」
「あら、デヴィン。体調はどう?」
「ええ。ずいぶん楽になりました。あの水、不思議ですね」
「それなら良かった。私、眠り病にかかっているっていう理髪店の方に行ってみようと思ってたの。案内してくれる?」
「勿論です。行きましょう」
官邸は見晴らしのよい丘の上にあったので、馬車に乗って市街地へと下りてきた。白い石灰岩でできた建物が所狭しと立ち並び、人々もまったりと過ごしている。それでも、昨日戦場となった海岸線はまだその痕跡が色濃く残っていた。
「素敵な街ね、ここは」
「ここは中心街ですから。理髪店は僕がお世話になっている醸造所のそばですから、街外れです」
デヴィンの言った通り、町を抜けると坂道に入り、畑が増えてきた。
「デヴィンの働いている畑はどこ?」
「あちらの辺りですね。南向きの斜面が畑になっています。あっとマヤさん、着きますよ」
馬車は何軒か集まっている集落の前でぴたりと止まった。デヴィンがここで待っているようにと運賃とチップを渡し、二人で理髪店へと入っていった。
「すみません、ワイナリーで働いているデヴィンですが」
ドアをノックすると背中に乳児を背負った女が扉を開けた。
「はい……あら、デヴィンさん。今日はどうしたんですか?」
「おかみさん、店主の体調が心配でお見舞いに来ました。あれから店主に何か変化は?」
おかみの表情は曇り、一気に老け込んだように見えた。
「いいえ、眠ったままで。お医者様に見せてもなんとも……あの、そちらは?」
「旅の者です。すみませんが、少々旦那様の具合を見せてもらえませんか?」
「ええ……構いませんが。どうぞ、散らかっておりますが、こちらへ」
おかみは疲れた様子で二人を寝室に連れて行った。髭の生えた彫りの深い如何にもイスラ人という容貌をした男は静かに規則正しく寝息を立てながら眠っていた。
「オーベロン、これが眠り病?」
肩口でシュルリと音を立てて、金色の光線が現れた。
「そうだよ、マヤ。この人はもともと魔力が少なかったんだろうね」
「ということは魔力を供給してあげれば、目覚めるってこと?」
「ちょっと、マヤ?そんなことをしても、焼石に水だよ。いずれ世界樹の状態がより悪くなればそんなことしても無駄になるよ」
「それでもいいから、この人を治す方法を教えて」
オーベロンは数秒躊躇ってから答えた。
「手を胸に当てて、集中して体の中の魔力をそっと花に水をあげるように与えるんだ。一気に渡すと相手の器を壊すから、零れないようにゆっくりと」
「わかった……」
私は店主の胸に手を当てるとゆっくりと魔力を注ぎこんでいった。それは細い糸を紡ぐような繊細な作業だった。私の額に脂汗が滲む。息をつめながら、力を優しく注いでいったある瞬間、店主の瞼が痙攣した。
「あなた!?」
おかみが店主の手を取ると、店主はううっと苦しげな声を上げて目を開けた。
「どうしたんだ、お前?」
「あなた、もう一週間以上眠ったままだったよ!ありがとう、お嬢さん! 奇跡だわ! なんてこと!」
頬に生気の戻ったおかみは喜び勇んで、私の手を握って何度も何度も礼を述べた。
「いいえ、どういたしまして。私はただデヴィンから話を聞いて来ただけですので」
「あら、あなたはやっぱりデヴィンさんの恋人だったの? デヴィンさん、とても女性にもてるのに誰ともお付き合いされてなくて不思議だったんですよ。こんな素晴らしい女性がいたら、それはねぇ」
「ちょっと、おかみさん!そんなこと言わなくていいですから!」
「デヴィン、やっぱりモテるのね。学生時代からお姉さん方に人気だったもの」
「マヤさんまで!それは学生時代の話でしょう?!」
「いやー、何が何だかわからないが、ありがとう。心配かけたな、お前」
あなたとおかみは言葉を詰まらせた。幼子を抱え、原因不明の病で眠り続ける旦那を待つのは辛かっただろう。
「あの、奥様。旦那様が起きない間大変なご心労だったでしょう。悲しいお話ですが、この病は西大陸全体に広がっています。今回は偶然何とかなりましたが、これから奥さまもお子さんも罹る可能性があります。どうか気を強く持って対応してください」
「ありがとうございます、お優しいお嬢さん……デヴィンさん、この方絶対手放しちゃだめよ」
「だからおかみさんってば!」
デヴィンは真っ赤になっていそいそと理髪店を出た。
「どこに行きます?」
「ええっと、ルークさんからおつかい頼まれているんだよね。なんか乾パンとか、干し肉とかワインとチーズとか。保存食ばっかり」
「また船旅になるんですね。次はどこに行くんですか?」
「ペネロペ都市国家にリアン先輩に会いに行くわ」
そうですかとデヴィンは悩ましい表情になった。
「マヤさん、どこか行かれるんですか?」
「あら、デヴィン。体調はどう?」
「ええ。ずいぶん楽になりました。あの水、不思議ですね」
「それなら良かった。私、眠り病にかかっているっていう理髪店の方に行ってみようと思ってたの。案内してくれる?」
「勿論です。行きましょう」
官邸は見晴らしのよい丘の上にあったので、馬車に乗って市街地へと下りてきた。白い石灰岩でできた建物が所狭しと立ち並び、人々もまったりと過ごしている。それでも、昨日戦場となった海岸線はまだその痕跡が色濃く残っていた。
「素敵な街ね、ここは」
「ここは中心街ですから。理髪店は僕がお世話になっている醸造所のそばですから、街外れです」
デヴィンの言った通り、町を抜けると坂道に入り、畑が増えてきた。
「デヴィンの働いている畑はどこ?」
「あちらの辺りですね。南向きの斜面が畑になっています。あっとマヤさん、着きますよ」
馬車は何軒か集まっている集落の前でぴたりと止まった。デヴィンがここで待っているようにと運賃とチップを渡し、二人で理髪店へと入っていった。
「すみません、ワイナリーで働いているデヴィンですが」
ドアをノックすると背中に乳児を背負った女が扉を開けた。
「はい……あら、デヴィンさん。今日はどうしたんですか?」
「おかみさん、店主の体調が心配でお見舞いに来ました。あれから店主に何か変化は?」
おかみの表情は曇り、一気に老け込んだように見えた。
「いいえ、眠ったままで。お医者様に見せてもなんとも……あの、そちらは?」
「旅の者です。すみませんが、少々旦那様の具合を見せてもらえませんか?」
「ええ……構いませんが。どうぞ、散らかっておりますが、こちらへ」
おかみは疲れた様子で二人を寝室に連れて行った。髭の生えた彫りの深い如何にもイスラ人という容貌をした男は静かに規則正しく寝息を立てながら眠っていた。
「オーベロン、これが眠り病?」
肩口でシュルリと音を立てて、金色の光線が現れた。
「そうだよ、マヤ。この人はもともと魔力が少なかったんだろうね」
「ということは魔力を供給してあげれば、目覚めるってこと?」
「ちょっと、マヤ?そんなことをしても、焼石に水だよ。いずれ世界樹の状態がより悪くなればそんなことしても無駄になるよ」
「それでもいいから、この人を治す方法を教えて」
オーベロンは数秒躊躇ってから答えた。
「手を胸に当てて、集中して体の中の魔力をそっと花に水をあげるように与えるんだ。一気に渡すと相手の器を壊すから、零れないようにゆっくりと」
「わかった……」
私は店主の胸に手を当てるとゆっくりと魔力を注ぎこんでいった。それは細い糸を紡ぐような繊細な作業だった。私の額に脂汗が滲む。息をつめながら、力を優しく注いでいったある瞬間、店主の瞼が痙攣した。
「あなた!?」
おかみが店主の手を取ると、店主はううっと苦しげな声を上げて目を開けた。
「どうしたんだ、お前?」
「あなた、もう一週間以上眠ったままだったよ!ありがとう、お嬢さん! 奇跡だわ! なんてこと!」
頬に生気の戻ったおかみは喜び勇んで、私の手を握って何度も何度も礼を述べた。
「いいえ、どういたしまして。私はただデヴィンから話を聞いて来ただけですので」
「あら、あなたはやっぱりデヴィンさんの恋人だったの? デヴィンさん、とても女性にもてるのに誰ともお付き合いされてなくて不思議だったんですよ。こんな素晴らしい女性がいたら、それはねぇ」
「ちょっと、おかみさん!そんなこと言わなくていいですから!」
「デヴィン、やっぱりモテるのね。学生時代からお姉さん方に人気だったもの」
「マヤさんまで!それは学生時代の話でしょう?!」
「いやー、何が何だかわからないが、ありがとう。心配かけたな、お前」
あなたとおかみは言葉を詰まらせた。幼子を抱え、原因不明の病で眠り続ける旦那を待つのは辛かっただろう。
「あの、奥様。旦那様が起きない間大変なご心労だったでしょう。悲しいお話ですが、この病は西大陸全体に広がっています。今回は偶然何とかなりましたが、これから奥さまもお子さんも罹る可能性があります。どうか気を強く持って対応してください」
「ありがとうございます、お優しいお嬢さん……デヴィンさん、この方絶対手放しちゃだめよ」
「だからおかみさんってば!」
デヴィンは真っ赤になっていそいそと理髪店を出た。
「どこに行きます?」
「ええっと、ルークさんからおつかい頼まれているんだよね。なんか乾パンとか、干し肉とかワインとチーズとか。保存食ばっかり」
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