九十九神の世界線

時雨悟はち

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世界線の始まり

慈悲

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茶色がかった髪は赤い髪へと、制服だったはずが、いつの間にか私がいつもしている袴に変わっていた。

「う~ん、見た目の割には結構鍛えてたっぽいわね」

少なくとも日本刀程度は余裕そうね。

「グルルルルル…」


「待ってね。今、楽にしてあげるから。だからもう少しだけ、頑張って…」

そういい、私は結界陣を作る。

「行くよ…式神術・創造結界」

私の術とともに赤い結界か張られていくその中には私と私が許可したものしか入れないようになっている。

「慈悲の間」

慈悲。それは慈悲とは言いがたい結界ではあったけど、確かに私の慈悲が込もった結界だった。

「行くよ…」

先行したのは私だった。右斜めに一振り、そのまま膝を両断。痛々しくあるけど、彼を救うには仕方ないことだった。
グサッ。私の日本刀が突き刺さる。

「式神術・除神技」

彼の目には、きっと数々の思い出があった。それと同時に裏切られた時の憎悪も激しくあったのだろう。

「紅」

日本刀は、その思い出すら叩き切るように、ただひたすら彼の体を斬りつけていた。
カーンと何かに弾かれたような音がした。ここが、思い出の原点。彼の本体。


私はそれを、日本刀で斬った。それはまるで人々の思い出を壊す悪役のように…


んん…は!
こ、ここは?あの裏神とか言う化け物は…それに、刀華さんは…!?
辺りを見渡すと、そこには何かをもった刀華さんが立っていた。

「と、刀華…さん?」
「ん?何?」
「それ、何ですか?」
と訪ねる。すると刀華さんはこういった。

「これはね…あの裏神の本体である『物』よ」
「『物』?」
「そ、物に宿った思い出こそ、九十九神の原点。九十九神は言っちゃえば愛されてなんぼだから。そして、その過程で何か闇やトラウマを作っちゃうとああやって裏神が出来ちゃうのよ」

へ~。そうなんだ…

「じゃあ、可哀想…ですね」
「ええ、九十九神は…案外可哀想なのよ。裏神になるか、九十九神になるか。それは自分で決められないもの」
「うん…ねえ、刀華さん」
「な~に?」
「もし、もっと裏神ってのがいるならさ…僕も手伝いたい。だから、これからも、力を貸してくれるかな?」
「当たり前よ。だって、私たちは」

そして、刀華さんは珍しく恥ずかしそうに

「パートナー…ですもの」

と言った。その時、刀華さんは真っ赤な顔だったけど、僕の方はもっと真っ赤だったような気がした。
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