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プロローグ
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「――シグネ・リバックを聖女付きの侍女とする」
ついにこの時がやってきた!
「……かしこまりました」
表面上はあくまでも聖女様付きの侍女に就任した為お淑やかに。だが心の中では待ちに待ったこの瞬間にガッツポーズをキメていた。
◆◇◆◇◆
コツコツと大理石の床をブーツの足音を響かせ、道行く王城勤めの人々の視線を感じながら私は歩いていた。
そりゃあ戦闘メイドである証の、防具が縫い付けられたメイド服を着ているとはいえ、シニヨンでまとめられた限りなく灰色に近い銀髪と碧瞳を隠す瓶底メガネによってどうしてこんな見目が悪く不器用でどんくさそうな奴が聖女付きの侍女なんだ、とか思われていることくらい容易に想像できる。
というか私は最初からそれを狙っていたのだが。
油断を誘うのはかなりこちらにとって有利な事。いくらなんでも全員は騙す事はできないだろうけれど、ほとんどの者にあいつは賄賂で王に取り入った侍女だとでも思ってもらえているはずだ。
あと転生してからこのかた裏側の世界に属していたのを隠す為でもある。私自身驚いたのだが私の生まれた家系こそが王家お抱えの裏側の者たちだったのだ。というかぶっちゃけた裏の世界を牛耳っていると言ってもいいくらいのものの。
まぁ、私は表舞台で何も知らずに生きて行くはずだったのだが――いろいろと予想外のアクシデントに見舞われ晴れて裏デビューしたわけだ。
長くなる為割愛。
そんなこんなでチートを発揮しテンプレよろしい乙ゲー展開を見守る為に私は聖女付きの侍女となったのである。
ちなみにこの髪色は偽装の魔法で色を変えているだけであり、実際は違う色だったりする。目はさすがにそこまでやると魔力の消費を増やしてしまうだけだからそのままだけど。
「ひーめーさーんー!」
王城で人が訪れる事など滅多にない場所までたどり着けば、天井裏からひょっこりと黒装束に身を包んだ1人の男が顔をだした。
ちなみに姫さんというのは一部の者たちからの私の呼び方である。なぜそう呼ばれているのか私は知らないけれど。
「どうしたの?ジャック」
立ち止まり上を見上げてそう聞けば、なんでも私にとって重要な情報を掴んできたらしい。
「もったいぶらないで教えなさいよ」
「いやぁ、それがさ~なんでも聖女付きの護衛がアルフレッド様に決まったようだよ」
私はため息をついた。実力は確かに折紙付だろう、でも私にとっては一番会いたくない人物だった。
ここでなぜそう思っているのかをかいつまんで説明すると、私がまだ表舞台にいた頃の名前がシグネ・クロス。今は私たち家系の裏用家名を名乗っているのだが、そのクロスであった頃の婚約者だったのだ。
裏に移動する際私は7歳で死んだ事になっている。そしてその移動する事が決定してしまった事件現場にアルフレッド様はいた。
その時3歳差……10歳であったアルフレッド様にとっては目の前で幼い婚約者が死んだのだ――実際は生きていて偽装したものだが――当時のアルフレッド様にはそれを見破るすべなどなく、かなりのトラウマものだろう。
それが今では王城一の腕前を誇る聖騎士様。
大丈夫だろう。いや、そう思いたい。……まぁ、成長したとはいえ昔の面影をまだ残している私を見て、どんな反応をするかによって今後の行動を決めれば良い。
「教えてくれてありがとう。ジャック」
「どういたしまして。姫さんの役に立ててよかったよ」
ふにゃりと笑顔を浮かべてジャックが返してきた。
「やっぱりジャックって裏が似合わない顔するわね。いっその事違う職にでもついたら? あと、私の護衛なんてしなくていいのよ」
「オレは姫さんの近くにいるのが幸せだからそれは却下。あとさっき言ったのと万が一って事があるから護衛の件も却下って事で許してね」
それだけ言うと私に反論させない為かさっと天井裏に戻ってしまった。
「シグネ様! あと少しで召喚の儀が始まりますので聖域に移動してください」
「わかりました」
どうやらもうすぐ始まるらしい。神官がそう伝えにきた。
◆◇◆◇◆
「シグネ・リバック、到着いたしました」
侍女の礼をして聖域に入った瞬間、バッとその場にいた人達の視線が私に向いたがすぐに霧散した。国のお偉いさん達が王様を今か今かと待ち構えているのだろう。
ふと、そんな視線の中で今だに私を見つめている者がいた。そう、聖騎士――アルフレッド様である。
視線が合わないように移動しながらもう一度確認したが、その時にはもう目線は外れていた。
どうやら私が危惧した通りにはならなかったようで、よかった。
そうして私がこの中では一番地位が低い為最後列に並んだ時、王様が到着した。
「――召喚の儀を行う」
私が待ちに待ったこの瞬間が、ついにやってきた。
ついにこの時がやってきた!
「……かしこまりました」
表面上はあくまでも聖女様付きの侍女に就任した為お淑やかに。だが心の中では待ちに待ったこの瞬間にガッツポーズをキメていた。
◆◇◆◇◆
コツコツと大理石の床をブーツの足音を響かせ、道行く王城勤めの人々の視線を感じながら私は歩いていた。
そりゃあ戦闘メイドである証の、防具が縫い付けられたメイド服を着ているとはいえ、シニヨンでまとめられた限りなく灰色に近い銀髪と碧瞳を隠す瓶底メガネによってどうしてこんな見目が悪く不器用でどんくさそうな奴が聖女付きの侍女なんだ、とか思われていることくらい容易に想像できる。
というか私は最初からそれを狙っていたのだが。
油断を誘うのはかなりこちらにとって有利な事。いくらなんでも全員は騙す事はできないだろうけれど、ほとんどの者にあいつは賄賂で王に取り入った侍女だとでも思ってもらえているはずだ。
あと転生してからこのかた裏側の世界に属していたのを隠す為でもある。私自身驚いたのだが私の生まれた家系こそが王家お抱えの裏側の者たちだったのだ。というかぶっちゃけた裏の世界を牛耳っていると言ってもいいくらいのものの。
まぁ、私は表舞台で何も知らずに生きて行くはずだったのだが――いろいろと予想外のアクシデントに見舞われ晴れて裏デビューしたわけだ。
長くなる為割愛。
そんなこんなでチートを発揮しテンプレよろしい乙ゲー展開を見守る為に私は聖女付きの侍女となったのである。
ちなみにこの髪色は偽装の魔法で色を変えているだけであり、実際は違う色だったりする。目はさすがにそこまでやると魔力の消費を増やしてしまうだけだからそのままだけど。
「ひーめーさーんー!」
王城で人が訪れる事など滅多にない場所までたどり着けば、天井裏からひょっこりと黒装束に身を包んだ1人の男が顔をだした。
ちなみに姫さんというのは一部の者たちからの私の呼び方である。なぜそう呼ばれているのか私は知らないけれど。
「どうしたの?ジャック」
立ち止まり上を見上げてそう聞けば、なんでも私にとって重要な情報を掴んできたらしい。
「もったいぶらないで教えなさいよ」
「いやぁ、それがさ~なんでも聖女付きの護衛がアルフレッド様に決まったようだよ」
私はため息をついた。実力は確かに折紙付だろう、でも私にとっては一番会いたくない人物だった。
ここでなぜそう思っているのかをかいつまんで説明すると、私がまだ表舞台にいた頃の名前がシグネ・クロス。今は私たち家系の裏用家名を名乗っているのだが、そのクロスであった頃の婚約者だったのだ。
裏に移動する際私は7歳で死んだ事になっている。そしてその移動する事が決定してしまった事件現場にアルフレッド様はいた。
その時3歳差……10歳であったアルフレッド様にとっては目の前で幼い婚約者が死んだのだ――実際は生きていて偽装したものだが――当時のアルフレッド様にはそれを見破るすべなどなく、かなりのトラウマものだろう。
それが今では王城一の腕前を誇る聖騎士様。
大丈夫だろう。いや、そう思いたい。……まぁ、成長したとはいえ昔の面影をまだ残している私を見て、どんな反応をするかによって今後の行動を決めれば良い。
「教えてくれてありがとう。ジャック」
「どういたしまして。姫さんの役に立ててよかったよ」
ふにゃりと笑顔を浮かべてジャックが返してきた。
「やっぱりジャックって裏が似合わない顔するわね。いっその事違う職にでもついたら? あと、私の護衛なんてしなくていいのよ」
「オレは姫さんの近くにいるのが幸せだからそれは却下。あとさっき言ったのと万が一って事があるから護衛の件も却下って事で許してね」
それだけ言うと私に反論させない為かさっと天井裏に戻ってしまった。
「シグネ様! あと少しで召喚の儀が始まりますので聖域に移動してください」
「わかりました」
どうやらもうすぐ始まるらしい。神官がそう伝えにきた。
◆◇◆◇◆
「シグネ・リバック、到着いたしました」
侍女の礼をして聖域に入った瞬間、バッとその場にいた人達の視線が私に向いたがすぐに霧散した。国のお偉いさん達が王様を今か今かと待ち構えているのだろう。
ふと、そんな視線の中で今だに私を見つめている者がいた。そう、聖騎士――アルフレッド様である。
視線が合わないように移動しながらもう一度確認したが、その時にはもう目線は外れていた。
どうやら私が危惧した通りにはならなかったようで、よかった。
そうして私がこの中では一番地位が低い為最後列に並んだ時、王様が到着した。
「――召喚の儀を行う」
私が待ちに待ったこの瞬間が、ついにやってきた。
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