黒猫は闇に泣く

ギイル

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第1章 黒猫の友人

夢の跡3

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国王直属の部隊であり全貌を露わにすることのない聖教会。
数ある部隊の内一軍の部隊長は三人の師匠レトロであること、そして聖教会の構成員はみな人間だということが三人の現時点で持ち合わせている情報だった。
目の前に座る二人の男は師匠と同じローブを羽織っている。
そのことからレトロと同様、部隊長であることが見受けられた。
「お前がレトロの弟子?」
優はソファに、燈と刻は後ろに立つ形で来訪者と対峙する。
開口一番のその言葉に優は静かに頷いた。
「中々面白そうな気がする」
赤毛の男は三人を一瞥するなりそう口にした。
そしてもう一人の赤毛の男はそれに同調するように頷き返した。
全く同じ顔をした彼らは品定めをするかのように三人を見た。
「・・・何か珍しいことでも?」
優は不愉快だと眉間にしわを寄せる。
若いとは言えないが青年のような容姿をした彼らは爽やかな笑顔を向けた。
「いや、気にしないで。俺たちを電話一本で呼び出した人物がまさか子供だとは思わなくて」
「子供・・・」
「ああ、気を悪くしないで。レトロが溺愛するのも無理ないなぁって思っただけだし」
その口ぶりからは呆れの色と共にどこか微笑ましそうな雰囲気が見て取れた。
軽い談笑を挟む一方、優は本題を切り出した。
「今回は聖教会と議会が協力するということでよろしいですか」
再度の確認に二人は同じように首を横に振った。
「国王の領地を守るのは俺たち聖教会の仕事。けれど反乱を起こさせたのは君たち議会の失態」
今回の騒動に国王はどうやら大層お怒りらしい。
どうやら聖教会側は議会への協力は無用と判断したようだった。
つまり彼らは聖教会の任務ではなくレトロの頼みで来たことになる。
「まあ、興味ついでに手伝ってもいいかなぁって。あと議会の武人ウォリアって呼ばれるレトロの弟子ってどのくらい強いのかなぁって思ってさ」
武人ウォリアという言葉に三人は顔を見合わせる。
「あれ、まだ知らなかった感じ?武人ウォリアっていったら黒猫団っていうくらい強いんでしょ?」
武人ウォリアは種族の名前です」
優、刻、燈、このような名前を持つ人間はこの世界では滅多に存在しないと言われている。
一つの文字でいくつもの読みと意味を持つ特殊な言語。
三人はその種族の出だった。
「僕らは僕らの父により集められた。おそらくその愛称も父の影響でしょうね」
優の父も武人ウォリアであり、身寄りの無かった同じ種族の子供を養子とした。
それが黒猫団の上層部に三人が集まった理由だった。
「なるほど・・・まあ黒猫団の上三人は珍しい能力持ちって聞くし期待は裏切らないでね」
「師匠の弟子だからってそんなに強いわけではないですよ」
「大丈夫大丈夫」
根拠なく宥める二人は困惑の色を見せる三人を尻目に席を立つ。
揃って黒い目が優を見た。
口を開けては閉じを繰り返す同じ顔。
赤髪の双子は声を潜め、怪しげな笑みを浮かべた。
「一つ言い忘れてたんだけどレトロからの伝言があるんだ」
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